より遊びやすく、より難しい〜「もっとえいご漬け」レビュー

英語が苦手な大人のDSトレーニング もっとえいご漬け

英語が苦手な大人のDSトレーニング もっとえいご漬け

前作の「えいご漬け」がミリオンヒットとなり、今回続編である「もっとえいご漬け」が発売されました。一応、自分も発売日に買って1週間ほどプレイしているので、簡単にレビューしてみたいと思います。

細かな改善の見られる本編

ゲームを起動すると、まずは英語力判定から。今回はまず前回同様の普通のディクテーションが5問、そしてその後TOEICのリスニング形式の、会話を聞いてから質問に答えるというテストが1問あります。もっとも、質問への返答は結構シンプルなものですが。

その後、実際のトレーニングに移ります。前作はどのレベルでも自由に選べ、1日1回でも5問のセットを解けばハンコが押せましたが、1回が短くだらだらと続けられる分、単調さを感じる要因でもありました。今回は、まず英語力判定の結果に基づき、おすすめレベルが表示されるので、最初にどのレベルをやろうかと迷う手間が省けます。また、トレーニングも会話分を順にリスニングして書き取るという物で、それを2セットすると1日分になります。会話文なのでストーリーだっており、前作よりも単調さは減っていますし、2セットという量も適度なボリュームで好印象ですね。脳トレといい、常識力といい、そうした「適度に1日やりたい分さくっとやれる」ことが必要な要素だと思うので、これは言い改善だと思いますね。

1日のトレーニングを完了すれば、英語力判定がトライできます。ここでやっておくと、次回のおすすめレベルが変わるので、トレーニング→判定を1つのセットで考えた方がよさそうですね。

小刻みに追加される「お楽しみ」要素

前作でも、トレーニングを続けることで順次マイドリルにゲーム要素が追加されていきましたが、今回はゲーム部分は「お楽しみ」という項目に分けられています。ここに、トレーニングを続けていくと小刻みにゲームが追加されていきます。前作は1レベル全部埋めるとゲーム項目追加、という感じだったと思いますが、今回は単に1日分のセットをやるだけでもゲームが追加されます。ただ、まとめて追加されるのではなく、ある特定の問題だけとか、レベルだけという追加ですね。なので、1日分の2セットをこなした後、追加されたお楽しみ要素を1つ軽くプレイし、その日の英語力判定をして終了、というのがよい流れな感じです。

その他、1日の初回起動時に、ちょっとしたレッスンが入るのもお約束ですね。今日は電話の応対をするトレーニングがあってなかなか面白かったです。

自身の文字を登録できる機能

また、今作ではアルファベットに対して、自らの書き方を登録することもできます。これにより、なかなか認識してくれない文字の認識率を高めることができるようです。
ただ、個人的な感覚としては、それほど文字認識率が上がった印象はしません。文字登録する際も、通常の文字認識ソフトのように何回も書かせてその平均的な癖を読み取るタイプではなく、一度書くだけ。これでは、変なデータを登録してしまうとより一層認識率が悪くなってしまいそうな印象を受けます。実際、文字登録した後トレーニングをし、認識ミスが多発してしまうと、自分が登録した文字が悪影響を及ぼしているような印象を受けてしまうんですよね。
文字登録自体も、登録したときの文字を表示するようにしてくれればよかったと思います。現在の仕様では、単に登録してあるかしていないかしか分かりませんので。前の登録文字が見られれば、それが自分の通常書く文字と近いか遠いのか判断できるのに、とちょっと残念ですね。文字認識のパーソナライズ自体は非常にポピュラーな手法であり、好ましい機能であるだけに、もうちょっと頑張って欲しかったというのが自分の感想です。

えいご漬けの上位版」であることの意味

さて、上記のように細かい改良が加えられ、プレイしやすくなった本作ですが、初週の売り上げは約5万本と、前作の出足と比べてずいぶん少なかった模様です。

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今作は初回出荷が思ったよりも少なく、分納が前からアナウンスされていましたが、この分納について忍さんのところと、ゲームの裏話さんのところではっきりと見解が分かれているようですね。まあ、このあたりはなんだかんだ言って、どの立場に自分がいるかで意見が変わってくることはあるでしょうね。


ちなみに、この「もっとえいご漬け」に対する印象は以下のような物です。もともと自分は前作のえいご漬けがちょっと学習要素が強すぎて様子見をするつもりでしたが、なんだかんだ言って英語の勉強をしたかったこともあり、発売日に購入しました。

そもそも、前作えいご漬けが自分にはちょっとぬるかったんですよね。すでに知っている単語ばかりの単語帳をやっている感じで、その割にはトレーニングは単調、1日にどの程度やればいいのかの感覚もよくつかめず、途中で飽きてしまいましたので。

それに対して、この「もっとえいご漬け」は、とにかく難しそうなことをアピールしています。「ネイティブのなまり」などは、最近TOEICのリスニングに加わった要素であり、非常にタイムリーですよね。また、会話ベース、内容理解などが入っているのも、TOEICなどを意識した作りになっている印象です。逆に自分は、単語帳ライクな前作よりはこっちの方が勉強になりそうと思って購入した次第です。実際、自分はまだ低レベルしかプレイできていないのでそれほど難しくはないですが、会話の文章や発音のアドバイスなどは、なかなか実用的な印象です。試しに最上位レベル7をやってみましたがかなりの難易度で、これはやりがいがありそうな感じです。


ただ、逆にこうした「難しそう」な印象が、前作のえいご漬けでも苦戦した層には抵抗をうけたかもしれませんね。同じ「もっと」でも小学生レベルの学力があればできるもっと脳トレと違い、えいご漬けはそれなりの語学力が必要です。ですので、脳トレの感覚で前作のえいご漬けを買い、歯が立たなかった層ではこのソフトは購入しないでしょう。また、そもそもゲーム性はそこまで高くない「学習ソフト」だけに、対象は結構限られてくる気はします。

正直、それは任天堂もよく分かっていたんではないですかね。初回出荷がしぼられているのは実は読んでいたのでは。まあ、もちろん慢性的にDSカードの生産が間に合っていない状況もあるかとは思いますが、ソフトの性質と対象について、任天堂なりに分析はしていたように思います。

任天堂の生産状況が悪い件|ゲームの裏話

松嶋菜々子を使ったCMも、訳分からない英語という路線は前回同様ですが、より一層難しくなっている印象ですし。

TV/CM −もっとえいご漬け篇− - Touch-DS.jp - Media Gallery

そもそも、自分はこのソフトの仕様を聞いて、「前作のように売れたらやばい」とすら思っていました。言ってみれば、中学生が大学受験参考書を買ってしまうようなもので、この手の学習ソフトは自分のレベルにあった対象を選ばないと意味無いと思うんですよね。ですので、単に「任天堂の知育系にはずれ無し」とか軽い気持ちで手を出してしまうと、痛い目に遭ってしまいそうな気はします。もし前作以上に売れるようだと、その分ついていけなくて不満を口にする人が増えてしまう感じはします。

逆に、そうした「学習ソフト」としての側面が見えず、単なる脳トレ系の任天堂新作、としてしかとらえなかった小売りはミスをしてしまっているかもしれませんね。

改良が加わり遊びやすい本作、後は自身のレベルアップが鍵

以上、売れゆきが鈍い要素にも触れましたが、一応レベルが低いところのレッスンは英語も遅く、そこまで難しくありません。小刻みに追加されるお楽しみもありますし、前作よりはプレイしやすくなっている印象もします。一方で、高いレベルについてはネイティブ発音も混じってなかなかハイレベルなんで、ビジネスで英語を使っている人でもある程度満足できる内容ではないでしょうか。

正直、今回のもっとえいご漬けは、本人の英語力、そして学習意欲の問われるソフトだと思います。ただ、毎日続ける工夫、リズムの良さなど、チューニングは前作よりもされており、継続的にやるにはいい出来になっていると思います。あとは、本人の英語力がどの程度ついていけるか、ですね。大学生、社会人などで実際に海外旅行などで英語を使いたい、ビジネスで英語を使うといった意志・必要性がある方には、安価にトレーニングできる本作はなかなかおすすめだと思います。