またもや波紋を呼んだ久夛良木氏の発言

昨日の衝撃のPS3欧州延期発表について、その緊急記者会見で発した久夛良木氏の発言が、またも波紋を呼んでいるようです。

J-CAST ニュース : SCE久夛良木社長 波紋呼ぶ「ひとこと」

最近ちょくちょく目にする、J-CASTのニュース。よく存在を知らなかったのですが、J-CASTのページの説明によれば、ニュース内容に独自視点も交えて報じる「1.5時情報」を配信することを目的にしているメディアのようです。
J-CAST ニュース : J-CASTニュースについて

ネタがちょっと週刊誌ちっくなのが微妙な感じはしますが、一応裏を取りながら記事を作っているようで、ニュースよりな週刊誌っぽい位置づけでしょうか。


さて、この記事では、日経新聞朝刊に掲載された、久夛良木氏が発言した以下のコメントが波紋を呼んでいるとしています。

「(ソニーが部品の量産を)できると言ったからSCEは出荷計画を発表したが、できないということは何か能力が欠けているのだろう」「ソニーの物作りの力が落ちているのではと問われれば、きょうの時点ではそのとおりと言うしかない」

この発言自体は、J-CASTが裏を取ったところ、事実だそうです。この発言だけ見ると、たしかに久夛良木氏が親会社のソニーに対して文句を言っている、腹を立てているように見えますね。実際、ZAKZAKなんかは、そういったストーリーをいつものように大げさに作り上げて記事にしてます。

ソニー親子、不協和音…会見で怒り爆発 - ZAKZAK


しかし、SCE広報に言わせれば、こうした解釈のされ方は「曲解」だ、と言うことのようです。つまり、久夛良木氏的には、謝罪の意味を込めて、報道陣から出た批難の質問に対して、否定をしなかったのだと。いつもだったらムキになって「何言ってんだと思った」とか「安すぎたかも」とか言っちゃう人ですからね。これでも精一杯譲歩した「つもり」になっているんでしょう。


それでも、発言内容だけ見たら、結局ソニーへの責任転嫁なんですよね。ZAKZAKの記事だと、「本当は(発売延期の原因となった)ソニーの担当者が(記者会見に)来るべきだが来ていない」という発言もしちゃったようですし。そもそも、ZAKZAKに改訂ある以下のコメントも気になるところ。

 都合の悪いことはなるべく小さく発表したいということなのか、6日に行われた久多良木健SCE社長によるPS3の発売再延期の発表は、同社本社で一般紙記者や内外の通信社など約20人だけが集められた。同社の記者会見では、新聞、テレビ、ゲーム雑誌、ネット媒体など少なくとも200人は集まるのが通常となっている。

昨日の記事で、わざわざ親王誕生日にあわせて緊急記者会見を開いたことの偶然に触れましたが、こうした状況を見ると、やはりどさくさに紛れてこっそり発表したかった、というのが本音っぽいですよね。出だしからそんなだから、こうした発言にもなってしまうのでしょう。


こうして、J-CASTZAKZAKの記事を見てみると、昨日のITproにあった以下の記述はなんだったのかと、頭をひねりたくなります。

PS2を開発した際,ソニー白石工場は半導体レーザー技術で多大なる貢献をした。当初,1チップで2波長のレーザー出力を可能にする技術を開発し,その技術をPS2に応用したのである。1個の半導体部品で,CDとDVDへの両方に対応が可能になった。当初は他社のエンジニアも舌を巻いたほど,他社に先駆けた技術開発だった。こうした過去の功績を施したエンジニアを気遣ってか,記者会見の会場で久多良木氏からは現場を非難する発言が全く聞かれなかった。「私はPSの父。すべての責任は私にある。申し訳ないの一言につきる」と現場をかばった。

【詳報:PS3量産遅れ】「リスクを取らなければイノベーションはない」と久多良木氏:ITpro

J-CASTが確認する限りでは、少なくともソニーを非難しているように聞こえてしまう発言があったことは事実らしいのに、上記文章では「非難する発言は全く聞かれなかった」と書かれています。これは記事を書いた浅見直樹氏の記憶違いなんですかね?それとも、ちゃんと話の流れで聞いていれば、全く非難の言葉には聞こえなかったと言うことでしょうか。もっとも、浅見氏は元日経エレクトロニクスの編集長ということで、当然久夛良木氏とは既知の関係でしょう。無意識のうちに配慮が働いたとしても不思議ではありません。


しかし、事実は一つのはずなのに、複数のメディアを通してみると、全く別の解釈の仕方がされる、というのが、マスコミ報道の面白いところだなぁ、と思いますね。これらの報道がさらに口コミで伝わると、もっと極端になっていくわけですよね。つくづく、真実を知るというのは難しいな、と思います。

今回のような、失言を避ける、解釈の違いによる誤解を避ける、と言う意味では、任天堂が最近行っているような、プレゼン内容をそのまま自社で書き起こして公開する、というのもいい手だと思いますね。講演自体を動画で公開するのも、文章化しては伝わらない行間・ニュアンスを受け手が自分の目、耳で確認することができるわけですし。

任天堂株式会社 経営方針説明会 質疑応答
ニンテンドーDS Conference! 2005.秋
ニンテンドーDS Conference(カンファレンス)! 2006.春
任天堂株式会社 経営方針説明会 - IR動画


ともかく、久夛良木氏は以前に「それがPSPの仕様だ」発言を初めとして、聞いている方がかちんとくる言葉を多数発言してます。一応、SCE社長という立場なんですから、もうちょっと考えて発言して欲しいところですね。(まあ、ほかにもスクエニ和田社長やエンターブレイン浜村社長など、問題発言繰り返す人が多い業界ではあるようですが…)