PS3のゲーム画面公開にみる、高性能アピールの難しさ

発売までもうあと2ヶ月という段階なのですが、ロンチタイトルがはっきりしないPS3。先日のGC2006でもプレイアブルの展示はなかったわけですが、今回SCEからPS3ゲームの画面が多数公開されました。GAME WatchITmediaなどがいっせいにそれらの画像を紹介してますね。ファミ通は紙面とWeb両方で紹介しています。

以下に、高解像度な画像を多数公開している、impressのGAME Watchがの記事を紹介しておきます。

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○ジャギの目立つHD解像度画像

たしかに、どの画像もぱっと見た感じは非常に綺麗なのですが、元のHD解像度の画像を見ると、想像以上にジャギがめだちます。しかも、このHD解像度の方もFullHD(1920x1080)ではなく、720p(1280x720)なんですよね。

Wiiもジャギだらけで非常にげんなりしたのですが、頼みの綱であるPS3でもジャギありだと、正直がっかりです。据え置きゲームでアンチエイリアス(AA)掛け捲りのゲームは体験できないってことなんですかね?なんか、一昔前のPCゲームを見ている印象です。

それに、みんなのゴルフ5なんかは、自然物のペラペラ具合が気になります。特に顕著なのが、以下のスナップショットの左下の花。一番手前にあるから荒さが目立つとはいえ、ちょっと微妙ですよね。わざわざ正直ベースで微妙なスナップショットを公開してきたSCEはえらいとはいえますが。
スクリーンショット - PS3「みんなのGOLF 5 (仮)」 - GAME Watch

PCだったら、金さえかければドライバの設定で強制的にAAとかかけられますし、テクスチャもゲームによっては高解像度のもの、低解像度のものを選べたりして、対策はあるのですが、据え置きではそうもいかないでしょう。ですので、次世代機とはいってもせいぜいPC以下の、この程度の画質で我慢しなければならない、ということなんでしょうかね。もっとも、PS3の場合は型番が変わるとグラフィック性能が向上したりするのかもしれませんが。


なお、これらの画像は今週のファミ通の紙面でも同一のものが公開されてます。ただ、FF13の時は1ページに2,3枚の大きな絵を載せていたのと違って、今回は1ページに多数の画像を載せてます。そのため、結果的にどれも縮小されてしまい、ジャギなどを確認することはできなくなっています。もちろん、偶然ですよね。

またWeb上でも、他のGAMEWatchやITmediaは縮小した画像ごとに、元のHD解像度のスクリーンショットにリンクを張って載せているのですが、ファミ通は縮小した絵しか載せておらず、粗を確認することはできません。これも、HPの容量とか転送量を配慮したためで、まったくの偶然でしょう。

○伝えづらい「HD解像度であること」の売り

ただ、結局画像を縮小してしまうと、解像度の差があまり出なくなってしまい、WiiPS3との画質の差が縮まってしまうことにもなります。あとはシェーダーなどによる光源の効果の違いぐらいでしか画質差がなくなってしまうので、Wiiでもゼルダとかだとこって作ってある分、縮小すると結構綺麗に見えてしまいます。

こうして考えると、「高解像度で綺麗」ということを売りにしていくのって、後方戦略的にもいろいろ難しいところがあるのがわかりますね。Xbox360のときもそうでしたが、MSが設置したサムスンのHDディスプレイでならHD解像度のありがたみがわかるものの、せいぜいゲームショップに置かれているテレビでHDなのはそれ一台ぐらい。あとはSDのテレビばかりです。この状態でXbox360のデモなどが流れていましたが、正直PS2と大差を感じないんですよね。いくら理屈でこれからはHD解像度だと言われても、実際にその差を目の前に見せ付けられないと一般の消費者じゃ違いがわかりませんから。

PS3でも、おそらくサムスンのHDが使いまわされるとは思いますが、ゲームショップにあるHDTVの数は限られてます。MSみたく、ソニー自体がHDTVをゲームショップにばら撒くぐらいの努力が必要な気がしますね。あとは、ヨドバシのソニーTVブースなどでPS3の映像を流しまくるとかでしょうか。


また、上記で書いたように、紙面でもHD解像度の売りを伝えることは結構難しいものがあります。SDでも、紙面ではジャギなどはあんまり見えませんしね。ネットなどの広告能力が増えたとはいえ、まだ多くの人がファミ通などのゲーム雑誌でゲーム画面を確認することでしょう。そうなると、HDであることの売りがますます消費者に伝わりにくくなってしまうのですよね。
今週のファミ通の紙面では「通常のPCでは太刀打ちできない物理演算で、木々のゆれなどが極めてリアルに描写できるはず」みたいな、非常に苦しいコメントがありましたが、そんなの紙面だけ見てもわかるわけがないでしょw、って話です。それに、物理演算はすでにPCでも専用HWやGPUに組み込まれたりしていますから、別にPS3だけの専売特許でもないわけですし。光源効果は比較的静止画でも伝えやすいとは思いますが、物理演算とHD解像度を雑誌でアピールしていくのは、かなり骨が折れそうです。

Xbox360を反面教師にできるか

とにかく、SCEXbox360ハイデフを売りにし、それがうまくいかなかった失敗例をこれでもかというほど見てきたと思います。もし「あれはMSがやったから。SCEがやれば大丈夫」とでも思って無策に攻めてくるようでしたら愚の骨頂でしょう。
Wiiが直感的に違いがわかるインタフェースなのに対して、PS3はその高い処理能力と表現力で勝負するしかありません。値段もはるかに高いわけですが、いかにしてそれを消費者に納得させていけるのか。SCEの腕の見せ所ですね。