時間を忘れる熱中度〜「リズム天国」レビュー

忍之閻魔帳Rambling Manなどで発売前からプッシュされており、興味はありましたが本当にどの程度おもしろいのかよく分からなかったので予約購入はしなかった「リズム天国」。週末ヨドバシにあった体験版に触る機会があり、シンプルで手軽に楽しめそうな感じがしたので、遅ればせながらプレイしてみました(近場では売り切ればかりで、探すのに苦労しましたが)。
忍さんのところでレビューを募集されていることもあり、自分もプレイした感想などをコメントしてみたいと思います。

○時間を忘れてのめり込む「リズムゲーム」群

メイドインワリオを作ったチームだけに、ゲーム自体はワリオと同様、ミニゲームの繰り返しです。ただ、ワリオが1つ5秒という超ミニゲームの組み合わせなのに対して、こちらは1つずつ単独。本番前に、チュートリアル的な説明があるので、初めてのゲームでもすんなりとプレイに移れます。さらに、その一つ一つのゲームも、プレイ後の結果が「ハイレベル」「平凡」「やり直し」の3段階で判断され、「平凡」の判定さえ出れば次のゲームにすすめます。
この「平凡」の判定は、かなり緩い印象。ですので、結構失敗したなぁと思っても平凡が判定されて次に進むことができます。ですので、本当、やめどきが見つからないほど、次々にプレイしてしまいます。結局自分は5ステージのあとリバイバルをクリアーしてEDを見るまでぶっ続け、5時間も連続でプレイしてしまいました。「時間を忘れてのめりこむ」という感覚は久しぶりでしたね。応援団のようなアドレナリンでまくりの熱中度とはまた違った熱中度です。

○単純ながらも手応えのあるゲーム達

プレイしていて、序盤のミニゲームはだいたい一度でクリアできたのですが、中には苦手とするゲームもちらほら出てきました。ここでは、自分がクリアに手こずったゲームを中心に紹介してみます。

「ナイトウォーク」

最初にはまったのは、ステージ4の「ナイトウォーク」。プレイやんの中の人が主人公の、任天堂ファン垂涎のゲーム…なのですが、思ったよりも難しくてw。常に一定の調子でボタンを押せばいいだけなのですが、画面上でマリオのごとくジャンプしながら飛び飛びのブロックをわたっていく、その姿につられてか、終盤の飛び石のところでどうにも失敗してしまって。曲も、そのタイミングで若干遅くなるんで、よりいっそう紛らわしいんですよね。最終的にはその難所をピンポイントで慣れましたが。

「ボンダンス」

次にはまったのがリバイバル「ボンダンス」。これはステージ2「ザ★ぼんおどり」のアレンジ版となっており、画面中の台詞「ぱ〜んぱん」「ぱんぱ」という言葉にあわせて手拍子をうつのですが、そのボタンを押すタイミングがちょっと変則的で難しかったです。とくに「ぱんぱ」という奴が連発すると、どうしてもボタンを連打しすぎてしまい、リズムがとれず。こういったリズムが微妙に変化するのが全般的に苦手なのを実感しました。
ちなみにこのミニゲームでは、時東ぁみの歌が流れます。個人的にスクールランブル二学期でただでさえうざかったのに、歌詞もばかばかしく、ミニゲームにもつまって何度も繰り返し聞かされたため、かなり印象は悪いですねw。曲付きなだけに、1ゲームが長いのを繰り返させられるのもうっとおしかったです。

「ラップウイメン」

その次がリバイバル「ラップウイメン」。これもステージ4「ラップメン」のアレンジ版で、ラップのコメントを言う左の人の語尾に応じて3種類のリズムでボタンを押すのですが、この中の「かもネ」のリズムがどうにもつかめず。2回ボタンを押すのですが、2回目の押すタイミングがどうにもわかりにくかったんですよね。それ以外の2種類、「サイコー」と「ですか」のリズムを完璧にこなせていても、「かもね」をすべて失敗した状態だと「やり直し」と言われてしまいます。「ラップメン」の時はプレイ前のチュートリアルで何となく感覚をつかんでいたし、難易度も低かったのでよかったのですが、「ラップウイメン」
結局は、右の人物の肘が突き出されたタイミングでボタンを押せばいいことがわかったので、リズムよりもキャラの動きを見てボタンを押し、クリアしました。

ポリリズム2」

で、未だにはまったままクリアできていないのが、ラストテクニシャン「ポリリズム2」。ステージ4「ポリリズム」の高難易度版。上下2ラインに流れてくる赤い物体を、タイミングよくラインのブロックをボタンで跳ね上げて向こう側にはこぶゲームなのですが、上下の操作がAボタンと十字ボタンで別々に行う必要があります。上下のリズムがそろっているときはいいのですが、各々の動きがずれてくると、もう完全にパニック。これは、ピアノとかで左右の手別々に使える人ならなんてことないんでしょうけど、自分ではまだつらいですね。

P.S.
2chでコツが書かれており、それを見て簡単にクリアできました。以下に転載しておきます。

 Q.ポリリズム2が出来ません
 A.ドラムレッスンやりまくればクリアできるかも
  押すタイミングは下の黒い部分
  左:□□□■□□■□/□□□■□□■□/■□□■□□■□/■□□■□□■□
  右:■□■□■□■□/■□■□■□■□/■□■□■□■□/■□■□■□■□

 両手 右左右 両手 をタン タタタン タンのリズムで
 つんくの曲なら ラブ レ ボ リュー ション


これ以外にも、非常に多数のゲームが用意されており、リズム感があるもの、笑えるものなど、いろいろな種類があります。個人的には「スーパータップダンズ」がリズミカルで好きですね。プレイする人ごとに、お気に入りのゲームが生まれるのかもしれません。

○あえて「つんく♂プロデュース」を意識させないプロモーション

このゲーム、当初より「メイドインワリオチームが作ったゲーム」ということで知られていましたが、じつはこれ、あの「つんく♂」がプロデュースした作品なんですよね。ほぼ日の記事を見てびっくりしました。
つんく♂さんに教わるリズム論『リズム天国』でノリ感アップ! - ほぼ日刊イトイ新聞 - 樹の上の秘密基地。

こちらの記事を読むと、なんとつんく氏自らが企画書を書いて任天堂に持ち込んだ模様。ドンキーコンガ松浦亜弥の曲を入れる際にゲームをチェックしたとき、ミュージシャン側から見て不自然なマークの入れ方が気になった、というのが直接のきっかけのようです。そこで実際に企画書まで書いて任天堂に送っちゃうところが、つんく氏の行動力のすごさですよね。
自分はシャ乱Q時代からつんくを知っていますが、軽い風貌ながら結構理論派で、いろいろな知識が豊富な人です。それだけに、インタビューで語っている「ノリ感」というものについては、確かに理論的で説得力があるように感じます。実際、ゲームの内容についても十分に熟知していますし、かなりしっかりゲームに携わっていることが分かります。以下のオリコンの特別サイトの動画では、セッションを完璧にこなしているのもすごいですね。

リズム天国-ORICON STYLE


ただ、ここまで有名人であるつんく氏が絡んでいながら、そのことはリズム天国が発売されるまであまり公にされていませんでした。これが、実は任天堂のすごいところな気もしますね。よくある芸能人ゲームだと、単に名前を借りただけのくせに、CMや広告でそのタイトルの名前を大々的にうたい、ゲームはおまけみたいな扱いで売り込みをはかることがよくあります。そうしたことが繰り返してきたため、どうしても既存のユーザの中には「芸能人ゲーム」=「クソゲー」という先入観があったと思うんです。

しかし、この「リズム天国」は、ワリオチームが非常に丁寧に作っていますし、つんく氏も非常にゲームに深い形で関わってよい作品となっています。そして誰でも楽しめる内容。もしここで、従来のようにタレントの知名度に惹かれて、発売前から「つんくプロデュース」を大々的に表に出してしまっていたら、すごい偏見で見られてしまい、ただしくこのゲームが評価されなかったことでしょう。とくに、つんく氏は有名人ではありますがあまりに成功してしまっているためアンチも多い人物ですし。今回は、発売前までつんくの存在を伏せておき、後出しで「実はつんく氏が深く関わっていたのです」というやり方は、芸能人ゲームという変なバイアスをかけることなく、ゲームの中の主要要素「リズム感」について説得力を持たせるという意味でうまいことやっているように思われます。いわば「つんく♂監修 大人のGBAリズムレッスン」って感じですよね。ワリオファンで買っている人は発売日に買っている人も多そうですし、つんく監修で惹かれるライト層へのジワ売れも期待できますので。


かたや松嶋菜々子宇多田ヒカルなどゲームと関係ない有名人を使って、一般人の関心、親しみやすさを強調したかと思えば、今度はあえて関わっている芸能人を表に出さない戦略で一般人からゲーマーまで売り込む…。このあたりのさじ加減はたいしたもののように思いますね。消費者心理をよくマーケティングできている結果でしょう。他のメーカーも、バカみたいなオサレCMに大金を注ぎ込むぐらいなら、こうしたマーケティング戦略を見習うことにつとめた方がいいんじゃないですかね。

○できればDSで出してほしかったゲーム、続編にも期待

ここまでいろいろ述べてみましたが、このリズム天国の個人的に一番残念なところはGBAで出ていたことでしょうか。たしかに、ゲームボーイミクロとの相性はいいとは思いますが、DSがこれだけ普及してしまった状態では、GBAは古くさく感じます。また、今主流であるDSLiteではGBAカードリッジがはみ出してしまうため、非常に不格好。使用しているケースによってはうまく収納できないケースも存在するでしょう。任天堂的にはGBAのてこ入れをはかりたかったのかもしれませんが、すでにユーザはDSに移行しています。そうした意味では、DSカードの方がよりシンプルな形で楽しめたように思います。

また、GBAでネックなのは、体験版がDSステーションで配布できないこと。このリズム天国も、正直体験してみないとあんまり楽しさが分からないところが多いと思います。ヨドバシなどでは体験版を用意していましたが、もしDSステーションでダウンロード配信されていれば、もっと多くの人が楽しさを知ることができ、売り上げも伸びただろうと思うだけに、残念です。
あと、通信対戦ができないことも残念。リズム天国の内容なら、ミニゲームによっては多人数で一緒にプレイしても楽しめるゲームがいろいろあるように思います。DSで1本のソフトで多人数プレイが当たり前のようにできるようになっている昨今、そうした多人数プレイの可能性がGBAではなかなか生まれないのも残念です。

以上のように、このソフトはDS対応することでまだまだのびしろを持ったソフトだと思います。Wiiでも、また違った楽しみ方がありそうです。GBA版である本作ではあまり売り上げは劇的には伸びないかもしれませんが、複数人でのセッションプレイやバリエーションを変化させて、DSやWii版をぜひ作ってほしいな、と思ってやみません。