メルルのアトリエのCEROレーティングが取り消し〜次出荷分からCERO Bへ

PS3で発売され、スマッシュヒットとなっているアトリエシリーズ岸田メル氏によるかわいいイラストやお色気要素も人気の一つとなっています。

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その最新作メルルのアトリエなのですが、温泉シーンなどのお色気要素がある割にCEROのレーティングがAということがあり、前々から「なんで?」と物議を醸していました。そんな中、今回「レーティング取り消し」という大きな裁定が下ることになったようです。

「レーティング取り消し」のお知らせ - CERO (PDF)

現在のCERO Aについては出荷を停止。ガストには懲戒が出され、ガスト側で審査資料を再度作成、再審査を行うこととなりました。その結果、再審査後のレーティングはBに、セクシャルのコンテンツマークが不可されたものが次の出荷からラベリングされるようです。

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CERO Aの今まで市場に出ているものの回収指示までは出ていない模様で、経済的な影響はそれほど大きくなさそうです。

「自己申告」の穴をついてしまったガスト

今回の件は、CEROのレーティングの仕組みとガストの不誠実さによるものと言えるでしょう。CEROは、基本的にはゲーム業界の自主規制団体。国とかから法律で規制されるのを避けるために、問題が起こりそうな無秩序なコンテンツを生み出さないよう、自分たちで対処しておく団体です。

コンピュータエンターテインメントレーティング機構//年齢別レーティング制度とは?

上記がレーティングに関わる説明ですが、以前TGSでもらった冊子に審査方法などが書かれていました。それによると、まずゲーム会社の方からレーティングを受けるために判断が必要な箇所をピックアップ。それを映像などの資料にまとめてCEROに提出します。CERO側では幅広い年令の審査員を確保しており、その中からサンプル抽出のような形でピックアップして資料を審査、レーティング裁定を下すような形です。裁判員制度で言えば、メーカー側が検察のような立場、CERO審査員が裁判員といった感じですかね。

この制度では、基本的に「自己申告」となります。年齢制限が入りそう、注意マークが必要そうな情報をメーカー自らがピックアップして申請する必要があります。あくまで業界側の自主規制ですからね。CEROとしては、メーカー自らが気を付けていることに対してお墨付きを与える、という立場なわけです。

今回、ガストは年齢制限が掛かりそうなお色気シーンを、審査資料として含めず提出したようです。これが故意なのか、不注意なのかは真相は分かりません。ただ、CERO Aであることをガストが強調していたところもあるようなので、ちょっと怪しいところはあります。

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故意にしろ不注意にせよ、結果的には自己申告、性善説に基づく審査の穴をついてしまった形になります。

国などからの規制を避けるための「必要悪」でもあるCEROレーティング

こうした事態そのものはCEROも一応想定されていたようで、結果ガストには懲戒が出されています。具体的にどれほどの懲戒なのか、その罰則内容はよくわからないので何ですけど。いずれにせよ、CEROによるレーティング、というものの有効性に、それを使ってソフト販売しているメーカー側が泥を塗ってしまったような形。非常に恥ずかしい状態ですね。

こうした事態が続くと、本当にCEROの審査そのものに国などから目をつけられ、前の青少年保護育成条例みたく、法律で規制されたり、もっと厳しい審査機関が設けられてしまう可能性があります。そうなれば、ゲームで使える表現にもっと制約が加わったり、一般人からゲームをより害悪なものとみなされたり、審査に時間がさらにかかって発売までに時間を要するようになるなど、いろいろ弊害が想定されます。

以前、ファミ通の浜村氏がモンスターハンターCERO Cなのをブツブツ文句言っていましたが、そういった現実的なところを踏まえず業界側のえらい人間が公然と言う事に非常に不信感を持ったものです。今回のガストの件も、そりゃ業界側が意図的に破ろうと思えば破れますけど、そんなことを繰り返していて、最終的に被害を被るのは、ゲーム会社全体な訳です。例えてみれば、アダルトビデオでモザイクを薄くしすぎて発禁くらっているようなものですよね(しかも審査を抜けて発売後、後から発禁、みたいな)。出来る限りレーティングは広くしたい、でもお色気などの要素は売れ行き拡大のため入れたい、ということでギリギリのラインを攻めるんでしょうけど、失敗してしまってはだめですよね。CERO B程度なら、最初から素直に申請してレーティング貰っておいたほうが良かったと思います。

Fallout3なんかも、CERO Zと発禁との間のギリギリを攻めるようやっていたようですが、一歩間違えれば今回みたいな騒動になっていた可能性もあります。「隠して申請を通し、あとから判明して取り消し」という前例は、メーカー側の「ギリギリを攻める」戦略に一石を投じる事となったかもしれません。結果的に、低いレーティングで売るために、メーカー側がCEROに出す前に表現を自主規制するようになるでしょう。そうなれば、以前より非難されている「洋ゲーの表現が、CERO Zなのに海外より過剰に制限している」という状況の緩和は、なかなか見られなくなる気もします。

CERO自体への批判は、ユーザーからもメーカー側もよく聞かれます。問題がある項目については改善していくのは当然必要でしょう。ただ、現在の状況で単なる「めんどくさい規制団体」みたいな形で業界側が率先して回避に動くようでは、自主規制としての建前が失われしまいます。ある意味、社会的な体裁を保つための「必要悪」のような存在なわけですから、そういった問題を起こすのではなく、別のアプローチで改善に努めるべきだと思います。

とりあえず、ガストはゲーム業界全体に対して、非常に好ましくない好意をしてしまったと、反省してもらいたいですね。今後のソフトでは今回のような事態を起こすことのないよう、正直ベースで審査に臨んでもらいたいものです。