ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトル、初週42万本〜物議をかもしたファミ通満点→売価急落
先週発売され、いろいろな意味で話題となったタイトルに、「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」があります。
ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル (通常版) - PS3
- 出版社/メーカー: バンダイナムコゲームス
- 発売日: 2013/08/29
- メディア: Video Game
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ジョジョ自体は昔からコアな人気があるタイトルでしたが、TVアニメ化に合わせてゴリ押しのような形での持ち上げが加速。結果、知名度もあがり若い新規のファンも多数発生するような状態となっていました。
盛大なPR、受注50万本越え
そんな中、このPS3版のジョジョも長期かつ大々的なPRが行われていました。3Dでのモデリングやポーズなど、PVで伺えるものは「いかにもジョジョ」という感じで好印象だったこともあり、多数の受注を集め「50万本突破」という発表がなされていました。
『ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル』の受注本数が50万本を突破 - ファミ通.com
予約特典で人気キャラ吉良吉影がつくということで予約も好調だったようですね。さらに、直前のファミ通レビューではなんと40点満点。山手線でラッピング電車が走るなど、いろいろな角度から盛り上がり感を演出していたように思います。
発売後、レビュー炎上・売価暴落
ただ、発売すると様々なところで不満が続出することとなりました。
Amazon.co.jp: カスタマーレビュー: ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル (通常版) (初回封入特典 プレイアブルキャラとして「吉良吉影」が使用可能になるDLコードがついた「川尻早人メモ」! 同梱)
人気タイトルではネガキャンが行われることがよくあるのですが、どうもそれだけでない量の不満の出方。出荷数と販売数のバランス、そしてネット評価の影響か売価も急速に落ち、駿河屋では発売からわずか4日で半額に値下がりするという異常な事態にもなっていました。
(cache) ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル 通常版・新品・PS3ソフト・通販ショップの駿河屋
初週販売数42万本達成も…
そんなジョジョの初週発売が発表となりました。
「ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル」42万5000本。PS3版の「ファイナルファンタジーXIV」は18万4000本の「週間販売ランキング+」 - 4Gamer.net
メディクリで初週42万本。売上としては非常に立派な形ですね。ただ、その売上が逆に「レビュー炎上」という状況を産んでしまっているのかもしれません。この辺については、以下の記事がよくまとまっているようです。
炎上なう。「ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトル」は実際どうなのか検証してみた(エキサイトレビュー) - エキサイトニュース(1/5)
今回、主にレビューなどで批判されているのは「フルプライスなのに基本無料のアイテム課金」「格闘ゲームとしての出来・バランスが悪い」「ストーリーモードもシナリオやステージが不十分」というもの。自分はプレイしていないのでなんとも言えないのですが、共通しているのが「事前にしっかりアナウンスされていなかったところで不満が持たれている」ということですかね。
8年前の「ガンダム一年戦争」と同じ構図
こうした、コンテンツの人気をたよりにイメージ先行でマスコミを使って「売れる雰囲気」をつくり、受注を多数集めるのはバンナムの得意技でもあります。今回、高速値下がりを見て思い浮かぶのが、「ガンダム一年戦争」の事例。以下、当時の自分の記事でまとめた経緯です。
- バンダイ+ナムコということで、販売側が相当に強気になっていた(「ミリオン! ミリオン! ミリオン!」とか)
- 販売店、ゲーム屋もそのうたい文句で大量の発注をかけてしまった
- 一方、ユーザ側はガンダムに食傷気味
- その状態で発売されたソフト自体のできが今ひとつ(操作性が悪い、やり込み度合いが少ない。)
- ネットで一斉に悪評が出る(ユーザ、ゲーム屋)
- 即日売り払う人多数。予約していた人も買わない
- その状況に焦ったショップ・問屋が値段を加速度的に値下げ
- その状況におもしろがったブロガーが一斉に話題に
- 収拾がつかなくなる
もう8年以上前のものなんですが、ここで上げたような展開を、ジョジョASBがほぼなぞっているように感じます。違うのは、「消費者もPVでは期待していた」ということでしょうか。
バンナム鵜ノ澤氏的には「正道」な「売り逃げ」か
この時の「ミリオン!ミリオン!ミリオン!」の迷文句を発した鵜ノ澤氏は、現在のバンナム副社長であり、また日本のサードを束ねるCESAの会長でもあります。鵜ノ澤氏の元、全く同じやり方で全く同じような事態を引き起こす。メーカー的には出荷してしまえば売上に。損を被るのは発注しすぎて適正値で捌けない小売・問屋と、買って満足できなかった消費者。各種隠していた要素で結果「売り逃げ」をした形で、バンナムはこれを繰り返したわけです。ある意味、バンナム的にはこれが「正道」なのかもしれませんね。また、バンナムはサードの中でも売り上げ的に成功しているところですし、CESA会長の立場ということも考えれば、「日本のサードとしての成功ビジネスモデル」なのかもしれません。
もっとも、急速な売価ダウン、レビュー炎上などでイメージ低下は起きています。これがどういった影響を今後及ぼすのか。一年戦争の件が繰り返した歴史を見ても、結局「また作品が変われば同じように売り逃げされるんじゃない?」という感じもします。コンテンツを消耗材として。ただ、一消費者、ゲーマーという視点からすると、なんとも悲しいというか、虚しい状況ではあります。
もっと「健全」なゲーム業界を
中古市場の存在、返品制度がない、といった構造的なところも、こうしたメーカーの行為を助長しているのかもしれません。メーカー的には「いかに受注を集めるか」が勝負になってしまっているので。バンナム的、鵜ノ澤氏的には十二分に「成功」なやり方かもしれません。ただ、正直「誠実さ」は伝わってきませんし、日本ゲーム業界のブラックさを感じてしまいますし、萎えます。
あと、ファミ通も近年の高得点レビュー連発で元々信頼性は低下していたのですが、今回は特にギャップが大きいように思います。「メーカーへの受注を後押しすること」が、広告メディアとしてのファミ通の至上命題なのかもしれませんし、満点というのも「4人の評価が10点だっただけ」という建前もあるのかもですが、発売前に情報が限られる小売や消費者の指標となっているのは事実なわけです。
メーカー、ゲームメディア、共に「大人の事情」の塊。自分の言っているのは単なる綺麗事とも思うのですが、なんとかもうちょっと「誠実」で「健全」な業界にならないものかと思いますね。今回のような売り逃げも、ビジネス的にメーカーとしては「有り」なやり方なのだとしても、小売や消費者にしわ寄せが来たりもします。バンナム鵜ノ澤氏はCESA会長も努める日本サードを代表する存在なのですから、ビジネス的損得だけでなく、各種巻き起こっている負の影響にもう少し誠実に向きあってほしいなと思います。