据置でも毎日あたまの体操?〜『Wiiでやわらかあたま塾』レビュー

WiiSportsが好調ながら、なかなかその次が見えてこないWii。そんなWiiのソフトの中で、DS版のミリオンを受けて小売から大きな期待を受けていたのが、「Wiiでやわらかあたま塾」でした。

Wiiでやわらかあたま塾

Wiiでやわらかあたま塾

自分はDS版を持っておらず、Wii版もあまり関心を持っていなかったのですが、GWに帰省するのにあわせて何かパーティゲームが欲しいな、と思って発売日に急遽購入しました。

以下、買ってみて家族で軽くプレイしてみた感想を述べてみたいと思います。

しゃべりまくるリモコン

まず、プレイして気が付くのは、とにかくリモコンがしゃべりまくること。しょっぱな、ハカリ先生がリモコンに対して確認をとると、リモコンが「OKです!」と返答。これ以外でも、実際のプレイ中に残り3問以下になると「あと○問です」とリモコンがしゃべって教えてくれます。また、対戦ゲームではリモコン音声を電話に見立てて、注文を聞いてそれを覚えて答えるものがあり、これでも自然な音声がリモコンから流れてきます。
そのほかにも、細かいところでいろいろとリモコンは音声を発し、このWiiやわらかあたま塾の大きな特徴であると言えるでしょう。

シンプルな一人用モード

ゲームモードとしては、一人用と複数対戦用があるのですが、一人用については実にシンプルな内容。5種類の問題を一通り解いてあたまのやわらかさを図る「やわらかテスト」と、個々の問題について難易度などを選択しながら個別に挑戦できる「あたまのストレッチ」モードです。

テストでのバリエーションとしては、5つある各ジャンルに3種類の問題があり、これが繰り返し出される感じ。ですので、一通りのゲームを遊ぶ、という意味ではメイドインワリオなどよりはるかに早く終わってしまいます。一応、毎日プレイして、そのあたまのやわらかさの上達を楽しむ、というのが一つの筋な感じはしますが、脳トレみたく一日に一回という制限もなく、どっちかというとゲーム感覚が強いですね。

ストレッチモードでは、各問題をレベル別でプレイすること出来、クリアしたスピードなどに応じてメダルがもらえます。これは、WiiSportsやはじめてのWiiライクですね。一応、やりこみ要素、といえるでしょうか。

手軽に楽しめる対戦モード

対戦モードでは、リモコンは1本が中心、スピード対決の「対戦レース」だけ2本でのプレイとなります。2人以上でプレイするときは2つのチームにMiiを割り振るこ感じです。

「対戦レース」では画面が左右に分けられ、連続で出る問題をどちらのチームが先にクリアできるかを競うことになります。このとき、4問ずつぐらいでメンバー交代となり、この際にリモコンの受け渡しが発生します。そのため、1対2とかだとリモコン交代の分だけ対戦が不利になる、という展開もありますね。

「きょうりょくサバイバル」では、一本のリモコンで順番にプレイし、連続で何問行けるかに挑戦。おどるメイドインワリオにも似たようなモードがありましたね。

「どきどきパネル」では、画面上に4×3のパネルが表示され、このパネルを順番にめくっていき、そこで示された問題を何問解けるか、その合計で勝負を行います。パネルによって、ジャンルなどは分かりますし、このパネルバトル独自のゲームもあったりするのですが、難易度はランダム。また、パネルによっては解いた問題数が×2になるものや、逆に超むずかしい難易度になる場合もあり、この辺のランダム要素がパーティプレイにはいい感じですね。

「DS以上」のものが弱いWii

上記紹介してきたWii版のやわらかあたま塾。DS版をプレイしていない自分ではあるのですが、随所にこのWii版から感じられる「DSっぽさ」が、ちょっと違和感を感じるところがありました。

とくに、1人プレー。やわらかテストは、DSの脳トレや常識力トレーニングなど、多数のソフトで取り入れられている方式で、DSで手軽に毎日プレイするモチベーションの一つとなっているものです。しかし、この「毎日遊ぶ」というスタイルに、DS以上のメリットがWii版にあるとは、正直あまり感じられません。自分はDS版を持っていませんが、DS版を持っている人としては、Wii版はかなり微妙な感じではないでしょうか?Wii版だけ触っている感じでは、わざわざこれを毎日Wiiを立ち上げてまでプレイしたいかというと、ちょっと微妙です。

現状ではWiiの起動時間も任天堂岩田社長が理想としていたほど瞬時ではありませんし、そもそも、いつでもどこでも手軽にプレイできるDSと違って、Wiiは場所はTVのある場所に限定されます。TVの入力切替やリモコンの準備ほんの少しの手間も、ゲームへのモチベーションという意味では結構影響するものです。こう考えると、「毎日手軽にプレイ」ということをゲームの肝とするならば、WiiよりもDSの方が適している感じなんですよね。

とくに、やわらかあたま塾はすでにDSでもミリオン売っているタイトルです。Wiiのユーザ層のうちDSユーザ層も結構いるとすれば、上記のような差分が少ない状態では、なかなか売りとしては弱いように思います。

一応、対戦モードでは一つの大きな画面に向かって、大勢でプレイすることができるので、この点はWii版もすぐれているとは言えますね。しかし、問題のバリエーションはあまり多くないので、本当にパーティなどで数回楽しむ程度、となってしまうのではないでしょうか?同様のプレイだったら、おどるメイドインワリオの方がボリュームもあって優れている印象です。また、WiiConnect24を使った他人とのランキング交流などもありますが、これだけではちょっと弱い印象ですね。

「DSと同様」でなく「DSにない」アプローチに期待

以上、通して触れてきたWiiでやわらかあたま塾。ソフト不足なWiiの中ではファミリーユーザ受けするタイトルだと思うので、今後もじわじわと売れていくとは思いますが、DS版みたいに大ヒットまではいかないのでは、と思いますね。現状では、DS版との差別化がうまく出来ていない感じがします。以下のWii版苦戦を伝える忍さんの「手のひらで手軽で遊べることに意義があるのでは」、という指摘も最もな印象です。

DS「ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウイング」FFブランド力で好発進 | 忍之閻魔帳

「毎日手軽にプレイ」はDSで成功したアプローチではありますし、Wiiでもニュースチャンネルお天気チャンネルなどでそれを狙っているのは分かるのですが、とりあえず「DSで成功したものをそのまま持ってきただけで成功するほど甘くないといったところでしょうか。

そもそも、DSで当たっている知育・実用路線ですが、最初のスタートである脳トレが書籍の発展系ですし、それ以外にも実用本と似たような流れがあります。こうした本って、「似たような本はいらない」というのは普通だと思うんですよね。料理本ばっかり新刊が出るたびに買いあさる、というのはあまりないのではないでしょうか(月刊誌などは別として)。

そうした点を踏まえますと、最近苦戦の続くタチジェネシリーズの続編についても、正直「売れなくて当たり前」、あくまで前作でまだ満足してくれなかった一部ユーザだけが購入する、という程度のように思います。(逆を言えば、「タチジェネ続編が売れない」=「実用ソフトが売れなくなった」という論理展開はまだちょっと早いかな、という印象です。)

SCEは、PSPで携帯市場を奪って利益を広げるつもりで、PS2と同様のアプローチで乗り込んだわけですが、結果的に既存のPS2ユーザをPSPとで分け合うだけという、あまり芳しくない結果になりました。任天堂も、ある意味ではこれの逆の状態が起こらないとも限りません。これまで据え置き機でのシェアが弱かった任天堂が、圧倒的立場にいるDSと同様のアプローチでWiiを展開し、DSとのユーザブッキングが起きてしまうという。

現状、本体販売数では他の次世代機を圧倒しているWii。しかし、DS以外の購入者層を広げていけなければ、待っている未来は据え置き機全滅というシナリオなようにも感じます。たとえ主役が携帯機であるとしても、WiiWiiで据え置きでしか出来ない、「ならでは」を見せて我々に斬新な楽しみを示していただきたいものです。