Wiiで激しくボクシング 〜 『はじめの一歩Revolution』レビュー

WiiSportsが爆発的ヒットを続けながら、なかなかそれに続くスポーツゲームが出てこないWii。そんな中、「はじめの一歩Revolution」はWii発売前からアナウンスされていたタイトルで、WiiSportsのボクシングを楽しんでいる人からもそこそこ注目を集めていたタイトルでした。

はじめの一歩 レボリューション - Wii

はじめの一歩 レボリューション - Wii

しかし、Wii体験会で自分がプレイしたときはポインタを指し示しながらリモコンを振るというもので、操作感は最悪でした。ただ、その後操作モードがWiiSportsのボクシングライクなものが追加され、公式HPでの動画も結構楽しそうな雰囲気のため、そこそこ期待感は上昇していました。

わぱのつれづれ日記 - WiiSports風操作もできる「はじめの一歩Revolution」

ただその後、あのファミ通のレビューで「6/7/6/6」という低いスコア。ファミ通レビューは大手優遇のいい加減なことで有名ではあるのですが、はじめの一歩は店頭用宣伝冊子はファミ通編集で、ファミ通誌面でも何回か特集記事がくまれており、かなりの広告費がファミ通側に流れていたタイトルでした。その中でファミ通がこれだけ低い点をつけるわけなので、よほどのクソゲーなんじゃないかとの憶測が流れたわけです。自分も、PS2版の2ではそのあまりのバランス調整の悪さに辟易とした覚えがあるので、正直地雷臭がしたのは確かですね。

とはいえ、前々から予約していましたし、フラゲでのレビューがそこそこ高評価だったこともあり、購入。とりあえず原作モードを1度クリアしたので、簡単にゲームレビューをしてみたいと思います。

ゲームモード〜原作モードにチュートリアルMiiによるセーブ管理も

まずは、ゲーム開始時にセーブデータを作成。ファイルは5つあるのですが、このセーブファイルにはMiiを関連付けることができます。自分としてはサードソフトでは初のMiiですね。まあ、単なるセーブファイルのアイコン程度にすぎませんが、他のWiiのゲームでもMii=セーブパーソナライズが標準的に使われているので、サードでも広がると分かりやすくていいですよね。
セーブデータを選択後、メニュー画面へ。ここでは「チュートリアル」、「原作モード」、「フリー対戦」、「データブック」、「設定」を選ぶことができます。各モードについては以下の説明の中で触れていこうと思います。

微妙な出来のチュートリアルモード 〜 2P対戦を使った練習がおすすめ

操作性が独特なはじめの一歩、まずはチュートリアルをプレイすることになるでしょう。このチュートリアル、用意されている各種操作モードを選んで鴨川会長のアドバイスの元試すことができるのですが、正直微妙な出来。なによりも、無駄に制限時間が設けられているのがいただけません。なかなかうまくパンチが出なくても強制的に練習が打ち切られてしまうため、充実した練習がなかなか出来ません。操作に癖の強いゲームなだけに、格闘ゲームにあるようなフリーでいくらでも練習できるモードを用意すべきだったでしょうね。

そんな中、おすすめな練習方法としては、2Pフリー対戦を使う、というものです。もちろんリモコンが2本が必要になりますけどね。操作モードの内、ポインティングモード1だけはリモコンだけでも選択できますので、ヌンチャクは一応1本でOKです。フリー対戦であれば、時間制限はないので、思う存分操作練習することができます。

5種類から選べる操作方法〜スイング×2・ポインティング×2・クラシック×1

まずは操作方法から。Wii体験会ではポインターを当てたいところに合わせながらリモコンを振り、ヌンチャクで移動という操作方法でした。これは、製品版ではポインティングモード2として入っています。体験会ではこの操作に自分は全くなじめずCPUにぼろくそにやられ、世間的にもあまり評価はよくなかったように思われます。

製品版では、5つの操作モードが要されています。メインに据えられているのが「スイングモード」。WiiSportsのボクシング風にリモコンとヌンチャクを振って操作するモードですが、移動方法の違いでさらに2種類あります。スイングモード1ではリモコンとヌンチャクをそろえて前後左右に傾けることで移動。スウェー・ダッキングもZボタンを押して同様の操作となります。一方、スイングモード2では移動やスウェーなどがヌンチャクのアナログスティックを使って行うことになります。

次に、体験版の仕様に近いのが「ポインティングモード」。A or Bボタンを押しながらカーソルを相手にぶつける形で様々なパンチを繰り出します。こちらも移動とスウェーの仕方でさらに2種類別れ、ポインティングモード1ではカーソルを画面端に持ってくることで移動、スウェーなどもカーソルの動きに反応して行われます。このモード1ではヌンチャクが必要なく、リモコンだけでプレイできるところは何気にすごいところですね。モード2では移動はアナログスティックを使います。

最後のクラシックモードは、まさしくこれまでのはじめの一歩と同じような操作ですね。4ボタンを2つずつ左・右に割り振りストレートとフック、Rボタンと併せて押すことでアッパー。Lを押しながらでスウェーとなっています。PS2版でも同様の設定を選ぶことができ、定番とされた操作です。

各操作モードについての感想

以上5つのモードですが、それぞれいろいろ癖があります。前述した2Pフリー対戦を使った練習で一通りためしてみたので、その感想を以下に記すことにします。(ただし、原作モードでスイングモード1で2時間プレイしていたので、正直慣れの差があることは先に触れておきます。)

まずスイングモード1ですが、個人的にはこれが一番「一体感」がありますね。パンチが両腕、移動も両腕での傾きなので同じ流れでどちらも操作できて意識がとぎれにくいです。パンチしてちょっと移動してまたパンチ、といった操作を状態の移動とからめて流れるようにプレイできます。
ただ、とにかく「移動」についてはかなり癖があります。リモコンとヌンチャクの傾きで移動させるのですが、そもそものニュートラルポジションがリモコンを若干前に傾けた状態なんですよね。ですので、普通にボクシングの構えのつもりで顔の前でリモコンを持ってしまうと、バックしてしまいます。これはちょっと頂けない仕様でしたね。リモコンをほぼ垂直に立てたぐらいをニュートラルポジションにしておいてくれるとよかったんですけどね。ただ、ちゃんと練習すれば前後の動きは比較的簡単にできるようになります。左右はなかなかぱっと移動しないので、思わずあずまんが大王のちよちゃん初マウス状態になってしまいますが。

一方、2chなどでは一番人気なのがスイングモード2。移動がアナログスティックになる分、非常にスムーズに移動することができます。その分、取っつきやすいのはたしかですね。ただ、個人的にはすでにスイング1で2時間プレイしていただけに、パンチと移動とで操作系が切り替わることに若干違和感を感じました。特に、左ジャブが若干やりづらいんですよね。移動時はヌンチャクのアナログスティックで操作する必要があるので、そのときは左パンチは打てません。このため、スティックで近づき、足を止めて左右パンチ連打、相手と距離が離れたらスティックで移動という感じになるんですよね。もちろん、慣れればスイング2でもスムーズにパンチと移動で切り替えられると思うのですが。
ちなみに、パンチについてですが、かなり敏感に反応します。WiiSportsのボクシングよりも全体にスピードも感度も高い感じですね。ただ、フック、アッパーは結構打つのが難しいです。実際練習してみて感じましたが、フックもアッパーも、どっちもリアルに腰を使って振らないとうまく認識してくれない感じ。小さいパンチだと、ストレートとすぐ認識されることが多いです。ただ、逆を言えばちゃんとリアルなフック、アッパーを打てばそれが画面に反映されるわけで、これはこれでありかもしれません。試合で焦ってくるとついネコパンチになってうまくいきませんけどねw。


次に、ポインティングモードですが、やはりかなり微妙な感じ。ポインティング1では移動もポインティングなのですが、これがまたやりづらい。ポインタを下側に向けると前進するわけですが、これがそもそも直感的でないですし、実際パンチをし始めるとボタンをしながらポインタ移動してパンチ動作するのと移動がまざってごちゃごちゃになります。リモコンだけで操作でき、使うボタン数も少ないのは評価できますが、正直ごちゃごちゃしてやりづらい操作性かと思います。

逆にポインティングモード2はWii体験会そのままですが、これはこれで面白い操作系です。移動がヌンチャクですが、スイング2と違ってヌンチャクは移動のみで分業されているため、違和感はありません。あとは、純粋にポインティングでのパンチ操作ですね。ボタンを押しながらポインタをちょこちょこ相手のボディーや顔に当てていくのは、なかなか不思議な感覚です。出来る限り小さく動かすのがコツかもしれませんね。なんか、あり得ない腕の振りをしたり空振りしたりと、なかなか難しいですが、フックやアッパーはスイングモードより出やすいでしょう。ただ、左右のストレートワンツーは非常に難しいですね。左右に振らずにAボタンがストレートなので、そもそも出来るのかどうかも不明ですが。

クラシックモードは前記したようにPS2のものとそのまま。正直、味気ないですね。たしかに、パンチの操作精度などは高まるのですが、PS2版とあまり差を感じないというか。むしろ、一人称での操作がやりづらいとも言えます。なんだかんだ言って相手のパンチが見づらいですからね。クラシックモードなら、カメラ位置もクラシックにしてくれてもよかったのに、と感じます。というか、他のモードでもカメラ位置は調整させて欲しかったところですけどね。PS2ではできていたのですから。

以上、ざっと紹介してきましたが、個人的にはWiiならではということでスイングモード1をおすすめします。ただ、移動が難しいのはたしかなので、やりやすさという点ではスイングモード2をおすすめします。あとは、好みでポインティングモード2というところですかね。

ボリュームたっぷりな「原作モード」

さて、長々と操作性について説明してきましたが、ここからは原作モードについて。PS2版でもデモが試合前に入っていましたが、Wii版の方が相当気合いは行っていますね。とにかくしゃべりまくりです。一部アニメ版と声優が変わっているようで不満も出ているようですが、自分はアニメ版の印象はあまり残っていないので、そんなに変な感じはしませんでした。

キャラのモデリングは正直微妙なところもありますが、それでもPS2版よりは数段似ている感じですね。筋肉の表現や光沢感などはかなりいい感じです。トゥーンシェイド気味なので輪郭のジャギがひどいこと、背景もジャギジャギ&貧弱だったりするのがいまいちですけどね。プレイ中はあまり気にならないのですが、とにかくデモが長いので、この辺のクオリティの低さは正直気になるところです。

で、このデモがとにかく長いんですよね。試合開始までに3分ぐらいデモが入ることもしばしば。ロードもPS2なみで結構気になります。ただ、デモの内容自体は比較的よくできていると思いますけどね。自分は一応はじめの一歩は原作は全部読んでますし、アニメも見ていましたが、何分読んだのがかなり前のところもあり、適度に頭で補完しながら楽しむことができました。


実際の試合についてですが、自分はノーマルのみクリアまでプレイしています。全体のプレイ時間は5時間ほど。試合だけでは4時間弱ですね。結構なボリュームでした。ノーマルでも、結構難易度は低めで伊達戦ぐらいまではサクサクすすみます。木村や板垣でプレイしたときがちょくちょく苦戦しましたね。あと、最後の方のジミーも非常に強敵でした。一歩のときは基本インファイトなのですが、相手によってはアウトボクシングの方が簡単な場合があり、このあたりの駆け引きがなかなかおもしろいです。

試合は3分が倍速ですすみ、1分半となります。ダウン時は通常スピードにもどりますけどね。あと、ノーマルをプレイして感じたのは結構ダウン頻度が高いこと。体力よりも、いいパンチが入ったかどうかがダウン判定になっている感じです。ですので、基本的に以下に相手を2回、もしくは3回ダウンさせてTKOに持って行くかが基本の戦いとなり、ちょっと大味な感じも。鷹山VSホーク戦はフリーノックダウン制なのですが、この戦いだともうお互いダウンさせまくりで、これはこれで楽しかったですね。

試合中は、基本はZ+Bでの防御、Zでのスウェーを絡めて攻撃。重要なのは距離感なのですが、一人称なため結構難しいところはあります。適度な距離感でジャブを出しながらワンツー繰り返し、が一番シンプルで効果的な感じ。距離がつまって相手に回り込まれそうになったらフックなどで応戦という感じでしょうかね。WiiSportsのボクシングよりもずっと動きが速く、なかなか相手の攻撃を目で見てよけるのはmずかしいので、攻撃と距離感が重要な印象です。

必殺技を覚えてくると、それを以下に効果的に当てるかがポイントに。前述のように結構ダウンは取りやすいので、必殺技を的確に当てれば簡単にTKOがとれます。ただ、その分隙がでかく、不用意に出すと簡単に逆にダウンくらうので、結構難しいですけどね。ノーマルをクリアまでプレイした感じでは、やはり威力はデンプシーロールが最高。ただ、カウンターもらう率も高いです。あと、デンプシー発動がゲージがたまったあとZ押しながらフックなのですが、Zボタンはスウェー、防御にも使うため、結構暴発しやすいです。というか、Zボタンに必殺を割り振られるとスウェーしながら左パンチが打てなくなるので、ちょっといまいちな仕様な感じはしましたね。当てやすく使い勝手がよかったのが沢村のバレット、青木のダブルパンチでしょうか。どちらも当たる範囲が広いのがいいですね。必殺技も、デンプシーやドラゴンフィッシュブローなど、コンビネーションのパンチは実際にちゃんと左右のパンチを打つ必要があります。この辺はリアリティあってたのしかったです。

カスタマイズ要素ありの「フリー対戦」

つづいてフリー対戦。選手数については、PS2版がかなりの選手量を誇っていたのですが、今回は25名とこれまでには及びません。基本的に原作モードで倒した選手が使えるようになる、という感じです。まあ、もっともこれでも主要な選手はだいたいそろっていますので、前作と過度に比較しなければ問題ないと思いますけどね。

フリー対戦では、記録するセーブファイルも個別に選ぶことが出来ますので、対戦時のデータもパーソナライズできます。また強さも3段階から選択でき、またパラメータもパワー、スピード、体力の3つのバランスを振り分けることができるため、ハンデ付けをしたプレイも可能。階級が違った対戦もできるだけに、この辺をいじったプレイも楽しいかもしれませんね。

いろいろなデータが見れる「データブック」

タイトルの「データブック」メニューでは各個人のデータをグラフで詳しく見ることができます。各難易度、各操作法ごとのデータだけでなく、トータルの成績も見れます。面白いのが、試合数とそれによるデータの変遷。KOパンチの種類なんかもでるのですが、自分のプレイスタイル、得意なパターンがどういった推移をしているのかがグラフィカルに見れて楽しいですね。対戦プレイなどは、Miiで関連付いたデータ同士の対戦成績なんかも見れると面白かったかもしれません。

運動量・身体への負荷について

さて、この手のWiiでの体感ゲームについて関心が高いのがその運動量。特に、ボクシングはボクササイズというものもありますし、最近ではビリーズブートキャンプのヒットでテレビの前でのパンチ動作に興味を持つ方も結構多いでしょう。

自分の場合、普段ほとんど運動せず、週末にゴルフ打ちっ放しをするぐらいなのですが、とにかくプレイして最初の30分ぐらいで汗だく、腕がプルプルというかんじでしたね。特に、普段使っていない左腕が早々と弱音を上げました。1日目は伊達戦まで2時間ほどプレイしたのですが、翌日はひどい筋肉痛。箇所は力こぶのあたりと、肩の後ろの筋肉ですね。後の部位はほとんど筋肉痛はなく、ピンポイントで肩周りが筋肉痛になったのは結構不思議な感じです。翌日はお盆を水平に支えるのとかが苦しかったですねw。ただ、手首の痛みと違って明らかに筋肉痛と分かるものだったのでよかったですが。

2日目はだいぶ筋肉がこなれてきたのと、操作になれてきてそこまで力まなくなったこともあり、比較的無理なくプレイ可能に。クリアまで4時間ほどプレイしましたが、一応体力的に限界になることはありませんでした。まあ、それでもやはり翌日は筋肉痛に成りながらこの記事を書いている訳ですけどね。

以上のことから、運動効果は結構高いように思います。ただ、動かす箇所がかなり限られているので筋トレという意味では限定的なものになるでしょう。汗もかなりかくのでそちらの効果もあり。ただ、こまめに水分補給とかしたので、体重は減らなかったですけどw。しかし、普通にゲームに集中するだけでこれだけの運動量を得られるというのはなかなかいいかもしれませんね。一方、その分平日にやりすぎると授業や仕事に影響が出てしまいそうですけどw。ただ、それもやりなれてこればだんだん鍛えられて楽になるとは思います。Wiiの普及が進むにつれて、やたらと上半身の一部だけ鍛えられているゲーマーが、リアルに発生するかもしれませんね。

まとめ 〜 慣れは必要だが新鮮に楽しめる作品

以上、長々とレビューしてきましたが、とりあえず自分はかなり面白いソフトだと感じました。ファミ通レビューでは低評価でしたが、そのレビュー内容はほとんど「操作性がいまいち」というもの。たしかに、操作性に癖があるのは確かですし、やりづらいところはあるとは思いますが、Wiiリモコンを使った直感的操作を全てオミットしてしまうほどの欠点であるようには感じませんでした。それに、こうした操作も1時間もプレイしていれば慣れてきてだいぶ感覚がつかめるようになります。ファミ通レビューワがそろいもそろって操作性を駄目出ししていたのを見ると、正直本当に短時間しかプレイしていないのが丸わかりという感じがしますね。

グラフィックに微妙なところがあったり、チュートリアルが充実していなかったり、選手数が前作までより少なかったり、ダウン率が高かったりと、確かにいろいろと引っかかる点が多いので、自分も点数をつけるとしたら80点前後だとは思います。ただ、WiiSportsを楽しんでおり、特にボクシングを結構プレイしている人にはおすすめなソフトだと思いますね。キャラゲーなので、はじめの一歩を知らないと抵抗感があるかもしれませんが、知らなくてもある程度はプレイできると思いますし。やり込み要素自体はあまりないと思うので、一本のソフトを長時間やり込まないと気が済まない人には向かないところもあるかもしれませんが、短時間でガーッとテンション上げて盛り上がりたい、という人にはいいソフトだと思います。

Wiiの有効性を生かしたWiiSports、その方向性を引き継ぐ、よりボリュームのあるソフトがなかなか出てこない中、このはじめの一歩はある程度及第点の出来であると言っていいのではないでしょうか。忍之閻魔帳によれば初日販売は1万本程度、Amazonでは入荷待ちになっているなどぼちぼちの出だしを見せているだけに、今後口コミで伸ばす可能性もあります。いつまでも「任天堂だけ」「WiiSportsだけ」と言われないためにも、こうしたサードの良作が続々と出てくるといいですね。