PS3のPS2互換性についての推測

PS3の大きなメリットの一つであるのが「PS2との互換性」。しかし、E3を過ぎた今になってもいっこうに詳細が発表されず、どの程度の互換性が保証されるのかわからない状態となっています。

そんな中、AVWatchなどで連載記事を持っている記者西田宗千佳氏が、PS3PS2互換性について言及しているようです。

西田 宗千佳のPostscript: E3・WinHECが終わって

この記事の主要な部分を簡単に要約すると、だいたい以下のような内容でしょうか。

  • PS3にはPS2のEE+GSがほぼそのまま搭載し、ハードレベルで互換性を保証
  • ソフトウェアエミュレータのめどがつき次第、EE+GSをはずしてコスト削減
  • 様々な仕様のPS3での互換性確保のため、HDDをつかってパッチによるアップデートもあり得る

以下に、上記西田氏の記事の内容に併せて、自分なりに「PS3PS2互換性について」を推測してみたいと思います。


○ソフトウェアの互換性の取り方について
PS3で最初にHWでPS2との互換性を取り、後々ソフトウェアに移行するという、という西田氏の記事ですが、これについては以前の久多良木氏のインタビューでも「ハードウェアとソフトウェアの組み合わせで対応」と語られています。
SCEI 久夛良木社長インタビュー(3) - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース

この「HW→SW」という流れ自体ですが、すでにPS2でも取られていたように思います。そもそもPS2でPS1との互換性を保証する際には、IOPというPS1互換チップを内包してHWで対応していました。このIOPでは、PS1の互換だけでなく、PS2ゲームではDVDやメモリカードの制御にも使われているようです(下記リンク参照)。
PlayStation2
Sony Flash on ASCII

一方、PS2でも、型番が変わるにつれてグラフィック機能を担当するGS、およびCPUにあたるEEは随時シュリンクされていき、途中で統合されています。
90nmプロセスの利点を生かした新世代PlayStation 2 - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース

そんな流れの中で、最新の薄型PS2では、いくつかのPS1,PS2ソフトとの互換性が問題となって騒ぎが起きました。
PlayStation.com(Japan) | お知らせ | 「プレイステーション 2」(SCPH-75000シリーズ以降のモデル)における「プレイステーション」および「プレイステーション 2」規格ソフトウェアの互換性についてのお知らせ
これらの互換性問題は、主にPS1ソフトと、PS2のセーブやディスクアクセス関連の問題に集中していることから、おそらくIOP機能がEE+GSチップ内に内包されたか、ソフトエミュレーションに切り替えられたからではないか、という推測が一部でささやかれていたわけです。(下記のslashdotの投稿だと、IOPのライセンス切れとなっていますが…)
PlayStation 2 の新モデルに互換性問題

PS3でも、当初はHWで互換性を取ると言うことになると、おそらくこの1チップにまとまった薄型PS2 SCPH-75000用のをベースにしたものが使われるのではないかと、自分は予想しています。この場合、少なくとも単に「ゲームを動かす」というだけの話であれば、現状のSCPH-75000程度の互換性が実現できるわけです(それ以外の要素については口述します)。

さらに、西田氏が述べているような「ゲームごとのパッチ」というものを利用すれば、薄型PS2で問題が出ているゲームについても、個別にパッチを当てることでもしかしたら動作するようになっているかも知れません。
もっとも、このパッチ機能というもについては、いろいろ疑問があります。パッチをHDD内でどう管理するのか?、HDD容量が足りなくなったらどうするのか?ネットが無い環境だと、別途パッチの入ったDVDなどを用いて更新するのか?など、いろいろ疑問がありますが。


PS2ゲームの高解像度表示について
ただ、ほかにも気になる点があります。一つは「PS3ではPS2のゲームを高解像度でプレイできる」とSCEが紹介していたについてです。
PS2の場合、PS1の描画部分はPS2のEE+GSのうち、GSで行っていました。これにより、PS1ソフトのテクスチャを保管して高画質にした表示などが可能になっていたわけです。しかし、PS3の場合、西田氏の記事にあるような想定だと、あくまでCG表示部分は従来PS2と同様で、CG自体をきれいにすることはできません。PS3がDVD再生機能を持ち、これらをアプコンしてHD化して表示する機能をもっていることから考えると、「PS2ゲームの高解像度表示」というのは、単なるHDへのアプコンである可能性が高いのかな、と想像します。


PS2ゲームの振動機能ついて
もう一点は、やはり「振動機能」です。周知の通り、PS3のコントローラは振動機能がのぞかれています。このため、PS2のゲームをPS3で遊んでも振動機能は使えません。「なら、PS2のコントローラをつなげばいいじゃん」という指摘も当然あるでしょう。まだソニーからアナウンスはありませんが、おそらくUSB接続でPS2のコントローラおよびメモリカードを読み取ることが出来る周辺機器は間違いなく出てくるでしょう。そうすればたしかにPS2の振動付きコントローラは使えます。
しかし、問題となるのは「特許訴訟」です。この訴訟で焦点となったのは、単にコントローラ内に振動機能があるかどうか、ではありません。「ゲームから信号を送り、コントローラを振動させる」その仕組みそのものがImmersionの特許な訳です。このため、そもそもImmersionの訴訟の対象としては、PS2本体だけでなく、振動機能を使うゲームすら含まれています。
ITmediaニュース:SCE、Immersionとのフィードバックコントローラ特許訴訟で敗訴

もし、この特許訴訟を意識してPS3が振動機能を無くしたのであれば、PS3ではたとえPS2のコントローラをつないだとしても、振動させることは出来ないでしょう。かといって、現状PS2でImmersionと争っている最中にPS3だけライセンスを結んで振動機能付きコントローラを出すことは出来ないでしょう。
つまり、ソニーとしては、振動機能を捨てることで完全互換をあきらめるか、PS2の訴訟を早々に和解してPS3では新規にライセンス契約を結ぶかどちらかだったわけです。今回のE3を見る限りでは、SCEは前者を選んだ形ですね。


○まとめ
以上のように、PS3の互換性についての自分の推測内容は以下のようなものです。

  • PS2のゲームは、SCPH-75000と同程度「動く」。
  • PS2のコントローラ、メモリカードは別途拡張をUSB接続すれば利用可能か。
  • ただし、振動機能は、PS2コントローラを接続しても利用できず(特許訴訟の関係)。
  • PS2の高解像度表示はあくまでアプコンで、CGレベルでの高解像度化はなし

こうしてみると、PS3での互換性は、PS2でのPS1のときのようにグラフィックそのものが向上することもなく、ゲーム内の主要機能の一つである振動機能がスポイルされるという形になるのかな、というのが自分の推測です。少なくとも振動機能が使えない限りは「完全互換」とは絶対言えないでしょう。
PS2の中には、振動機能がゲーム性において重要な意味を持つゲームもありますし、メモリカードなどを読み込むために別途の周辺機器が必要、というのに抵抗感を感じる人もいるかもしれません。このままだと、PS3だけで完全にPS2を置き換えるということが出来ないユーザも出てくるかも知れません。自分も、もしPS3を買うとしたらPS2は完全に撤去してしまいたいので、訴訟関係などをクリアして、なんとか「完全互換」を実現してほしいものです。


P.S.
日経ビジネスの記事でE3時のPS3の価格発表について辛辣な記事を書いたり、WiiConnect24の趣旨を事前に予測していたり、Wiiリモコンの概念を5年前に推測したりして話題になった(参考:5/12の日記)、野安ゆきお氏が同様に互換性についてのコメントをブログでかかれていますね。
野安の電子遊戯博物館:●E3報道の読み方(2)●
趣旨としてはほぼ自分と一緒ですね。詐欺まがい、とか、とてもマスコミ側の人とは思えないコメントでちょっと心配にもなりますが。あと、野安氏は「他社が振動機能付きコントローラを出せばOK」としていますが、自分の解釈ではPS3側でコントローラを振動させる信号を出す時点で特許に引っかかるかと思ったんですが、結局このあたりはどうなんでしょうね?