「任天堂決算説明会 質疑応答」から見る「DSの今後」について

先日のエントリで、任天堂の決算報告説明会の動画を紹介しました。

「任天堂 08年3月期決算説明会」から見る、任天堂ハードとサードとの関わり - わぱのつれづれ日記

上記エントリではサードと任天堂との関係について焦点を絞って考察しましたが、それ以外にも非常に見所のある内容でした。特に、「プラットホームサイクルは今までの常識は通用しない」という趣旨の内容は、これまでアナリストやゲームマスコミが自らの論調の根拠としていた考えだけに、かなり揺さぶりをかけられた形でしょう。「昔こうだったから、今後はこう」という、深い思考を要しない安直なコメントが通用しないと言うことですからね。

こうした流れを受けて、説明会の後に開催された質疑応答。こちらも任天堂は、適当に省略された記事にされて誤解を生むのを恐れ、毎回詳細に書き起こして公開しています。

2008年3月期 決算説明会 質疑応答

上記、プラットホーム関連の質問やそれについての説明もいろいろ出ており、非常に読み応えがあるないようですね。今回は特にこのプラットホームサイクルの話とDSの展開しぼって自分なりのコメントを述べてみたいと思います。

「プラットホームサイクル」と「DSの今後」

まずは、冒頭でもあげたプラットホームサイクルについて。この従来どおりの「5年程度で代替わり」という考えを否定する形となった訳で、その関係から質問も多く出てきたようです。

該当する質問はQ4、Q14、Q16、Q17あたりでしょうか。これまでのハードよりも、世界でDSに火がつくまでが遅かった分、当分はDSの世界的好調が維持する、という形のようです。ただ、一方で日本では昨年伸びが止まり、今年の予想も大して多くないことから、アナリストから突っ込みを受けている訳ですが、これについては、消費者を驚かせられるソフトを今後も出すことで対処、ということのようです。

この質疑応答を見る限りだと、「日本でのDSのてこ入れ」としてどのように行うのか、具体的に見えてこないところが、聞いている人には不安を与える形なんでしょうね。Q1で値下げについても否定していますし。Q18で、DSの予想は控えめに出しているだけと言っていますが、かといって具体的なタイトルは、ネタの新鮮殿関係から話せないとQ8で言っていますしね。

ただ岩田社長的には、DSのプラットホーム寿命はまだ続くと見ており、今後もDSでの展開を続けることは伝わってくるコメントではあったのは確かです。

DSの次世代はどんな形に?

とりあえず、世界的に見ればDSはまだまだ伸びる気配を見せていますし、この状態で次のハードを出してもなかなかハードの移行が進まないことは、海外での昨年までのPS2PS3の関係を見ていると分かります。あまりに強大なプラットホームは、ただ単に性能がアップして高くなったハードで簡単に置き換わるようなものでなく、その寿命は長くなるんですよね。PS2は日本でもP4とかが出る関係でまだまだ現役ですし。

DSの次となると、正直単に性能アップしただけではPSPとの差別化があまり出来ませんので、新たな「サプライズ」のある形でないと生み出せないでしょう。DSの伸びが今後も続くと言うことは、似たようなものでは置き換えられない、ということでもありますから。ある意味、バーチャルボーイ並みの飛躍が必要になってきそうな気がします。携帯ゲーム機の高性能版はPSPやPSP2(?)などに任せ、任天堂はまったく新しいデバイスを持ってきそうな気はしますね。

五感に関する部分で、もう一歩飛躍したものを持ってこれるかどうか。あまりごてごてしたり、デメリットが目立ってしまうとバーチャルボーイ同様の失敗をしてしまうので、どれだけシンプルな形態で「目新しい感覚」を実現できるか。さらに、どんな目新しいサービスを実現できるのか。DSが大成功しただけに、任天堂の次のハードルはかなり険しいものとなるでしょう。ただ、それに対してどういった解を示してくれるのか、楽しみでもあります。

今年のDS展開は?

日本においては、現状のMHP2GでのPSPの伸びの後、サードからPSP向けの主力タイトルがくることもある程度想定されます。ただ、年齢層がDSに比べてPSPの方が狭い現状は変わらないだけに、DS側で再び幅広い年齢層にアピールできる話題タイトルを出せれば、再び大ヒットを飛ばす余地はあると思います。

とりあえずDQ9は相当幅広い年齢層に売れる弾としてあるだけに、あとはWiiFitのようにリアル世界の話題ともリンクできるソフトを用意できるか、ですね。任天堂キャラものや、これまでのタイトルの続編でない、全く新規・新機軸の気合の入ったタイトルが今後発表されることに期待したいと思います。

あとは、Q9であげられている、DSを使った異なるビジネス、というものも興味深いところですね。すでにシアトルのセーフコフィールドでは、DSを使った情報配信&食べ物注文サービスなどを展開しています。

任天堂、セーフコ・フィールドのNintendo Fan Networkを無料化 - Engadget 日本版

DSはもうかなりの人が保有していますし、ネット環境も標準の無線LANで構築できます。そうした意味では、インフラと組み合わせたサービスはいろいろできそうですよね。ビジネスモデル的に、大きな収益を埋めるのかというとちょっと簡単には想定できないところはありますが、今回の質疑応答Q9を見ても「今年複数のことをはじめる」と発言されているだけに、今後の展開は興味深いところです。

携帯ゲームとして、絶対的な立場を築いたDS。今後更なる伸びを見せるのか、緩やかな減退を見せていくのか。今年後半の展開に注目したいと思います。