「任天堂 08年3月期決算説明会」から見る、任天堂ハードとサードとの関わり
据置、携帯ゲーム機共に好調でゲーム市場において圧倒的な存在感を示している任天堂。その昨年度の決算報告が先日行われ、各所で報道されていました。
任天堂、過去最高決算 DSやWii、旧作ソフトも好調 - ITmedia News
個人的には、任天堂がいくら儲かったとか数字的な話にはあまり興味はありません。最近の数字はあまりに大きすぎて一消費者にはピンとこないですしね。ただ、任天堂の市場分析力、戦略、そしてそれを明確にぶれずに情報発信していく岩田社長の姿勢には以前より強い関心を持っています。
元々セガユーザーで任天堂はむしろアンチ気味だった自分が、任天堂ソフトを多く買うようになったのも、DS以降の新しい任天堂の流れに共感を覚えていることが大きいです。「従来ゲームにはない新しいエクスペリエンス」、「リアル社会にも恩恵のあるゲーム」といった流れが、もともとそこまでコアなゲーマーでは無い自分と合っていたのかもしれませんね。
さて、そんな任天堂の決算発表なんですが、前々より岩田社長が自ら発表資料を作り、分かりやすく説得力のあるプレゼンをすることで知られています。また積極的な情報公開がされており、今回もウェブ上で資料を確認することが出来ます。
2008年4月25日(金) 決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文
また、実際の講演の動画も公開されています。
任天堂株式会社 2008年3月期(第68期) 決算説明会 - IR Webcasting
さらに、上記二つの資料を組み合わせ、岩田社長の発言を字幕として投稿者コメントで重ねた動画がニコニコに上がっていました。こちらの方がより分かりやすいかもしれません。
「任天堂ハードではサードは売れない」という批判に対する反論
今回の発表で一つ岩田社長が力を入れて説明していたのは、「任天堂ハードではサードは売れない」といった日頃言われている批判への反論です。この件は、以下のページで詳しく述べられています。
2008年4月25日(金) 決算説明会 任天堂株式会社 社長 岩田聡 講演内容全文 5ページ目
動画だと15分あたりから。説明の趣旨としては、大体以下のような感じですね。
要するに、DSではすでに国内ではうまく行っているし、海外ではWiiもうまく行っているのでそんなに心配はいらない、という主張ですね。たしかに、すでにDSでは「DSは任天堂ばかり」という批判もあまり聞きませんし、Wiiもそうなっていく可能性はありますよね。
「国内サードの乗り遅れ感」が強調される形に
この説明資料を見ると、海外ではすでにWiiでのサード比率も大きいことから、「国内ハードがWiiに乗り遅れているだけ」という印象も強く与える内容になっています。
たしかに、これまで日本サードはPS2における国内ビジネスだけである程度やっていけましたし、PS2のときは任天堂のソフトとの直接対決を避けられるおいしい条件で商売していたわけです。任天堂ハードが主流になっても、なかなかその成功体験が抜けなかったのは、無理もないことかもしれません。気合いを入れたソフトをWiiで作っても、まだハード立ち上げ時だと最初の1,2本は任天堂ソフトになる可能性が高く、苦戦が続きましたし。さらに、グラフィック的な向上が少ない分、単に看板タイトルを持ってきても差分が見えづらく、逆に操作性が変わることによる既存ファンの抵抗もあってしまう。このあたり「従来ビジネスの延長ではうまく行かない」ということは岩田社長も話している通りでしょう。
この点、海外は比較的柔軟なんでしょうね。元々日本ほど決まり切ったシリーズもののタイトルばかり5つも7つも出てくるほど停滞している市場でないことも大きいとは思います。ただ、この資料で言っている「Wiiは海外ではすでにサードシェア6割」というのは、ちょっと気を付ける必要もあります。というのも、海外では「スマブラX」と「Wii Fit」の発売が遅れているんですよね。Wii Fitは昨年度中には発売されていませんし、スマブラXも北米のみ3/9に発売された形。そう言う意味では、日本ほど任天堂のキラータイトルが昨年度中に集中していたわけではないのです。ですので、Wii FitとスマブラXのそろう4〜6月の四半期は、任天堂の比率がもう少し高くなっていそうな気はします。
Wiiにおけるサードのブレークスルーは?
DSではRPGや実用ソフトなどでサードのスマッシュヒットが出てきて盛り上がりましたが、Wiiではまだなかなかサードが模索状態。ファミリースキーとデカスポルタという、WiiSportsの流れでのヒットが一つの流れを見せていますが、もう一つ大きな流れも欲しいところですね。モンスターハンター3は確かに期待されるタイトルではありますが、これはDSで言えばFFIIIリメイクあたりに対応しそうな期がするので、それまでにもう少しソフトにバリエーションが出ているといいなと感じます。
DSでヒットした知育系は、あたま塾や常識力テレビなど、任天堂自身Wiiで出していまいちな状態なので、あるとしたらフィットネス関連でしょうか?できれば、任天堂が市場を掘りおこしたものだけでなく、サード自らが新しいジャンルを開拓して欲しいところですけど。
ただ、PSP市場が伸びてきたことで、サードは自ら革新の方向には進まず、客層がつかみやすいPSPで従来通りのゲーム作りを繰り返す可能性もありますけどね。大規模なサードほど、安定して売れるソフトを作らないと大量の社員を養えませんし。そうなった場合は、Wiiを引っ張るのはこれまでとは違ったメーカーとなってくるのかもしれません。
ともかく、今は任天堂が世界的に引っ張っている形のWii。すでに大量のユーザーを抱えているこのプラットホームで、今後サードがどういったビジネスを展開していくのか、注目していたいと思います。