任天堂、年末Wii出荷目標未達も大幅増益

すっかり立場を確立したDS、そして新規性が受けているWiiと、好調が続く任天堂。25日に第3四半期の業績概要を公開したこと(PDF)にあわせて、マスコミでも記事が出ています。

同じソースで好対照な見出し

今回取り上げる記事はアサヒドットコムと日経IT-PLUS。
任天堂「Wii」、販売計画に届かず デジタル家電&エンタメ-ゲーム:IT-PLUS
asahi.com: DS、Wiiが絶好調 任天堂、大幅増益に - デジタル

両方とも、全く同じソースを用いたニュース記事なのに、見出しからして全く受ける印象が違うところが素晴らしいですね。これぞ日本のマスコミ、という感じです。比較的任天堂びいき(というかソニーバッシング)の多い朝日は「絶好調」、それに対して長年ソニーと仲のよかった日経は「計画に届かず」。両者の姿勢がよく現れています。

生産台数と販売台数との開き

さて、朝日の記事については先日のエントリ(年末年始を終えての次世代機現状について)でも触れた訳ですが、日経の記事の方では、業績報告だけでは分からない、生産数や出荷についてもコメントを取って記載されています。

日経の記事によれば、「販売台数319万台、生産台数400万台」とのことです。こうした業績報告で任天堂が言う「販売台数」というのは、基本的には問屋への販売、つまり通常「出荷台数」と呼ばれるものだったはずです。一方、生産台数はそのまま生産した台数。つまり、この数字を見ると、400万台作ったけど、まだ問屋に約80万台も年末時点で出荷できていなかったことになります。

これに対する任天堂・森専務のコメントが「欧米は輸送経路が長く、生産遅れも発生した」というもの。つまり、何とか400万台作ったけど、出荷は間に合わなかった、と言うことのようですね。実際、過去に何度か任天堂もコメントしていますが、欧州への出荷などは通常船舶による輸送が主で、大量に一気に出荷できる代わりに、到着するまでかなりの時間がかかるもののようです。とはいえ、当初目標は「出荷400万台」だったので、本来はその運輸の期間も見越して生産しなければならないはず。そうした意味は計画未達であることは間違いないでしょう。(どこぞの企業のように『生産出荷台数』なら楽々クリアなんですけどね。)

「ストラップ交換対応」の影響は?

今回の森専務のコメントにはないのですが、こうした出荷の遅れは、たしかに生産の遅れもあるでしょうが、ストラップ交換対応の影響も少なからずあったかと思います。ストラップ交換に乗り出したのは12/15。もちろん、その日までに作っていたWiiの中にもかなりの数の初期型Wiiストラップが存在していたことでしょう。交換のアナウンスをした以上、交換していない初期型Wiiを新たに出荷できるわけもありません。この際、Wii出荷の裏でかなりの量のWiiストラップ交換作業が発生したと考えられます。それはいくら人的コストを費やしたとしても結構な時間がかかるものでしょう。発売日が12/2、しかも結構実はかつかつのスケジュールで販売されたWiiとしては、この交換にかかる日数が、年内出荷目標において致命的な問題になったのかもしれません。

もちろん、これは正式なソースは出ていませんので想像に過ぎません。単純に生産が間に合わなかっただけの可能性もあります。ただ、あの段階での交換対応は販売計画的にはかなりリスクを負う判断だったとは思うます。出荷目標、販売機会損失をしてでも、訴訟対策に早めに手を打つことを選択した任天堂。訴訟リスクはなおも残ったままですが、初期対応速度が速かったことは、少なくとも世間的には比較的好感を持って受け止められ、リスク軽減にはなったように思います。まさしく、損して得取れの精神ですね。

今後の販売における「さらなる一手」に期待

とりあえず、今後の出荷目標は年度内600万台、朝日の記事では700万台にもなるという発表。WiiSportsだけでもそれぐらいは売っていけそうですが、できれば第2のWiiSportsや、チャンネルのさらなる充実などが欲しいところですね。VCコンソールがリッチになっているのはいいですけど。今後のWiiの販売戦略に期待しています。