非現実から現実への転換〜DS「ウィッシュルーム」レビュー

現在ゲーム機市場で圧倒的な存在となっているニンテンドーDS。しかし、発売当初は年末年始は爆発的に売れたものの、2月、3月とソフトが余り出ず、一時期は週間売り上げでPSPを下回っていました。(もっとも、このときはPSPが年末年始に十分な出荷ができず、単に初期需要が継続していただけ、というのが当時の見方でしたが。)

そんなソフト不況時にファンに注目されていた作品が、アナザーコードでした。

アナザーコード 2つの記憶

アナザーコード 2つの記憶

このゲームは自分もDS発売前から期待していたソフトで、発売前から結構このブログでもプッシュしていたソフトです。

わぱのつれづれ日記 - ニンテンドーワールド
わぱのつれづれ日記 - アナザーコード インタビュー

CMでユースケサンタマリアを起用したりして、この当時のDSソフトとしては10万本発売と、セールス的にはアドベンチャーゲームというジャンルにしては予想以上に成功したソフトと言えるでしょう。


そして、そのアナザーコードを作ったCINGの放つアドベンチャー第2弾が、今回発売された「ウィッシュルーム」です。

ウィッシュルーム 天使の記憶

ウィッシュルーム 天使の記憶

海外では「HOTELDUSK Room215」というタイトルで1/22に発売されており、日米欧ほぼ同時発売と、日本発のアドベンチャーゲームとしては非常珍しい展開を見せているソフトです。海外のレビューでも、比較的高い評価を受けている模様。

Metareview - Hotel Dusk: Room 215 (DS) - Joystiq

このゲームは、一応Wii体験会でも一度プレイしており、そのときの印象を以下のレビューで述べています。
わぱのつれづれ日記 - Wii体験会レポート(DS編) 『ウィッシュルーム』

これ以外にも、DSステーションの配信していたダウンロード版もプレイしましたが、こっちは本当に最初の会話シーンだけの体験でしたね。そして、製品版は発売日に購入したのですが、メインで世界樹の迷宮をプレイしているため、まだあまり進んでいません。とりあえず、Chapter2をクリアしたところまでプレイした段階ですが、アナザーコードとの比較や、これ用に購入した振動カートリッジの使い勝手などと併せてレビューしてみたいと思います。

アナザーコードの回想

まずは、ウィッシュルームの前作にあたる、アナザーコードについてから。スタッフが過去にハロルドシリーズなど有名タイトルを手がけた人だと聞いて期待してプレイしたのですが、プレイした印象は正直いまいちなものがありました。

わぱのつれづれ日記 - アナザーコード 1周目クリア

1周目をやっただけでは、どうにも消化不良なストーリーで、もやもやが残った感じ。結局、2周目はやりかけで飽きてしまい、そのままになっています。ストーリー的に大きな分岐があれば2周目もやる気が起きますが、差分がよく分からない状態だと、なかなかモチベーションが上がらなくて。2周目でも見落としがあると悲惨だと思い攻略サイトを見ながらやったのですが、それもモチベーション低下を生んでしまう原因だったかもしれません。謎解きの楽しさを無くしてまで楽しめるストーリーとは、正直感じなかったので。ボリュームばかりで中身カスカスなものは勘弁ですが、ボリュームないなかでも密度濃く楽しめるストーリーもあったんじゃないかと、惜しいところがあります。


一方、アナザーコードをやっていて感じた一番の不満は、「謎解きの唐突さ、非現実さ」でした。DSのインタフェースを使っていろいろな謎解きを楽しませたいという心意気は感じたのですが、どうもその謎解き箇所が唐突に出てくる印象。「なぜ普通に部屋に入るのに謎解きしなきゃいけないの?」とか、「この館にすんでいた人は、毎日こんなトリックを解いて生活してたのか?」とかが思い浮かんでしまい、どうにもプレイしていて冷めてしまったんですよね。これは昔友人がクリアするのを見ていた「バイオハザード3」でも感じたことでしたが。なまじシナリオがシリアスなだけに、脈絡のない謎解きが不自然に感じたのです。

とはいえ、アナザーコードの非現実なトリックも、事件の舞台そのものを非現実にしているので、ある程度は相殺できている印象はあります。またそれ以外の部分、例えば情報から見た3DマップなどはDS初期作品としては非常に高いクオリティを誇っていました。謎解きも、脈絡そのものは不自然なものもありましたが、どれもそこそこ凝ったつくりで、DSのタッチ操作ならでは、という感じ。最後のマイクを使ったガラスのトリックなんかは、なるほどとうならされましたね。伝聞では聞いている版画トリックなども、そのうち余裕があれば挑戦してみようと思います。

「現実的なトリック」中心のウィッシュルーム

さて、ここからがウィッシュルームになるわけですが、アナザーコードと違い、ウィッシュルームでは舞台がかなり現実的なものとなっています。時代は1970年後半、場所はある古びたホテル。アナザーコードのような特殊な島の館とは異なっています。謎解きについても、アナザーコードではそれがゲームの中心を占めていましたが、今回はどちらかというとホテル住民との会話、交渉が重要になっている感じで、謎解き自体はそれをつなぐ中でうまく配置されています。
とは言っても、多少は無理はありますけどね。子どもをどかすためにパズルを解く、鞄の鍵が壊れたから針金で開ける、など、無理矢理謎解きが必要なシチュエーションが作られているものもありますが、それでもアナザーコードよりは現実的な世界での話になっているかな、という印象です。ですので、比較的今回の方がお使い的イメージは減っている印象はあります。
一方、前にWii体験会の時の感想でも述べましたが、ドアをノックするアクションなど、リアルにしすぎて若干うざいところもあります。と言うのも、ゲームに詰まってくるととりあえず総当たりで全ての部屋をチェックしようとするのですが、このとき、「ドアの前に移動→ドアアイコンをタッチ→ドアの画面に変化→ノックorドアノブ開く」という操作が必要になります。これがかなりうざいんですよね。サクサク進んでいるうちはいいのですが、つまり始めたときにこうなると、結構気持ちがおれそうになります。リアリティとゲームの快適さのバランスは難しいところだとは思いますが、もうちょっと考慮して欲しかった点ですね。セカキュー特典のマンガみたいに、「大人のDS推理力トレーニング」とかいうネタにするのならあれですけどw。

絶妙な雰囲気のキャラクタアニメ

このウィッシュルームでは、アナザーコードから引き続き同じイラストレーターがキャラデザインを担当しています。前回のアシュレイも一部で熱狂的人気を誇りましたが、その透明感のあるデザインは自分も好みなデザインです。
前作ではこの主人公アシュレイの姿しかまともに出てきませんでしたが、今作ではかなり多数のキャラが登場します。しかも、それぞれがパラパラマンガのようにアニメーションするのですが、これが実にいい『味』を出している感じですね。

縦持ちの独特なインタフェース

ウィッシュルームの操作は縦持ち。脳トレですっかりおなじみのスタイルではありますが、意外と脳トレ以外ではうまく使われていないスタイルだったりします。

この縦持ちの仕様、会話シーンでは非常にいい感じで機能しますね。右側に話す相手、左側に主人公カイルと、ちょうど話しているような感じになります。ここは左右のキャラが非常に細かくアニメーションするので、いい感じで臨場感が出ますね。ファミ通インタビューで「画面上下だと、同時に見るのが難しい」といったコメントをしていましたが、確かにこの会話シーンはいい感じになっていると思います。

ただ、通常の移動シーンはちょっと微妙。右側にマップとキャラアイコン、左側に3Dマップが表示され、移動はキャラの先をタッチで示すことで行います。これはアナザーコードと一緒の操作ではあるのですが、正直この操作では左側を見ている余裕はあまりありません。左を見ながらタッチして移動するのは、直進とか単純な操作ぐらいしか無理なんで。シンプルかされたマップで移動操作を行うこと自体はいいのですが、せっかくの3D表示が生かせていないな、という感じでしたね。あと、3Dマップのカメラ位置が完全にFPSと同じような視点になっており、ちょっとした左右への方向変換がぐるっと視点が移動してしまうのが、ちょっと見づらい感じもしましたね。壁に近づいた状態で方向を変えたときとか、何がなにやら分かりませんので。


とまあ、上記まではタッチペンのみの操作の場合。このゲームは実は十字キーやボタンでの操作もサポートしています。自分も説明書見るまでは気づかなかったんですけどね。十字キーは移動や選択肢の選択、通常の会話送り操作に使え、これはかなり便利です。DSを横持ちする際、左手親指をちょうど十字キーにのせるようにして持つと、いい感じで操作できます。上記で述べた「移動時に3D画面を見づらい」という問題も、移動を十字キーで行うようにすれば比較的よく見れるようになります。また、メッセージ送りも毎回タッチペンでタッチするのは面倒なので、十字キーを使って送った方が快適ですね。
また、決定ボタンも一応X・Aボタン、もしくはRボタンで代用できる模様。ただ、これは左手一本でDSを持っているときは難しい動作ですね。Rボタンをなんとか押せないことはないですが、間違ってDS本体を落としてしまいそうです。左手親指を裏側に回せばRボタンを親指で押せますが、今度は十字キーを押せませんしね。素直に左手を使ってAボタンを押した方が楽かもしれません。

個人的には、十字キー+タッチペンという操作が一番快適なように感じました。ボタンだけでは、どちらにしろアイコンをタッチすることができませんので。

ゲーム性を演出する会話シーン

会話シーンは、このゲームでは謎解きよりも重要な位置づけを持っている印象です。
会話しているうちにキーワードらしきものに出くわすと、右から左にその内容が「?」と共に流れてきて、その?マークがストックされます。また、会話中に三角黄色のつっこみマークが出てきて、これをタッチするとつっこみもできます。?マークはこれを通じてもたまっていくことが多いですね。

そうしてストックした内容は、会話がいったん中断すると質問リストとなって聞くことができるようになります。また、会話の流れによっては、こっちが返答する場合もあり、それもリスト形式で選ぶようになります。これら質問・返答とも、実は結構注意が必要。何も考えずに総当たりに聞いたり、うかつな返事をするとゲームオーバーになることが結構あります。ゲームオーバーと言っても、すぐ直前のところからやり直せることが多いので、それほど深刻なものではないですが、ちゃんと考えてプレイする必要があるでしょう。(ちなみに、個人的にこのゲームオーバーの時に、普段は渋いカイルが「そんなつもりで聞いたんじゃなかったのに…」と呆然とした顔でつぶやき、その後あちゃーという表情→タクシーの前で呆然とぽつんと立ちつくすシーンというのが何ともマヌケでツボでしたw。)

質問中は、こっちの対応によって相手が顔を暗くすることがあります。これを2回やってしまうとゲームオーバーになる可能性が高い印象ですね。一度相手の顔色が悪くなったら、次の設問ではあえてご機嫌を取る方向に振った方がいいかもしれません。何でもかんでもつっこんで聞いていれば言い訳じゃない、というのがなかなか面白いところですね。

味のあるストーリー

ストーリーは、主人公カイルが刑事をやめてセールスマンをする傍ら、裏家業や相棒捜しをするというもので、結構シリアスなものです。とは言っても、人殺しがばんばん怒るような、バイオレンスなものではないようですが。
Chapterはホテルでの1時間ごとに区切られており、1章終わるごとにアナザーコード同様復習の設問があります。もっとも、今作の方がストーリー中心な分、理にかなった復習になっていますが。
ストーリーは、説明書のあらすじに書いている内容も含めて順に解き明かされていきます。1章はほとんど何も分からない状態ですが、2章で結構大きな進展がある感じですね。この先の展開が非常に気になる状態で、楽しみです。

ひと味加える振動カードリッジ対応

このウィッシュルーム、実はDS振動カードリッジに対応しています。自分が持っている振動対応ソフトは、EliteBeatAgentsにつづいて2本目なのですが、EBAの時には振動カードリッジは購入しませんでした。通販のみで、送料込み1650円というのが正直引っかかったというのもあります。

任天堂オンライン販売 DS振動カートリッジ

一時期、DS版のカードリッジを同梱しているメトロイドピンボールを中古で探したのですが、3000円程度と結構な値が張るので見送り、結局今回DSLite版を通販で購入しました。送料がもったいないので、できればヨドバシなどで市販売りして頂きたいものです。

振動カードリッジ自体のレビューは以下のGAMEWatchのサイトが詳しいです。

不定期連載 ゲームグッズ研究所【第65回】

上記レビューでも述べられていますが、振動の感触は「コリコリ」とか「ゴリゴリ」といった感触。正直、振動だけでなくその音まで聞こえてくるので、結構違和感はあります。その音がちょっと耳障りですね。ただ、何もないよりは、ちょっとしたことでちょっと振動が加わるだけで、ただ淡々とプレイしているよりはゲームのダイナミックレンジが広がったような印象をうけました。

ちなみに、ウィッシュルームでの振動の使い方はかなり控えめなものです。自分が確認したのは、オープニングでの銃撃のシーン、それから会話中に「?」が発生して文字がスクロールするシーン、選択肢をタッチしたとき、そしてポケベルの時です。どれも、別に振動なしでもゲームに支障ないのですが、個人的にはあった方が面白みが増すように感じましたね。

振動カードリッジ購入にかかるコストがコストなだけに、今後多数のソフトで対応してくれることを望みます。ちなみにEBAでも試してみましたが、マーカータッチと失敗時にふるえ、失敗時のふるえは焦りを増長してミス連発につながりましたw。あと、これも余談ですが、任天堂からの運搬は悪名高い佐川急便が使われており、自分のところに振動パックが届いたときには、箱がつぶれていましたorz。できれば別の業者を使ってもらいたいものです。

味のあるアドベンチャーゲーム

以上、とりあえず2章までをクリアした状態でのレビューですが、個人的にはアナザーコードよりは面白いという感想です。より、現実的な話となり、ストーリーの文章量も多い分、ボリューム感もある程度期待できそうです。(もっとも、「願いが叶う部屋」あたりの話はファンタジーな要素なので、もしかしたらこのあと非現実的なネタが出てくるのかもしれませんが。)
店舗でも結構売れ行きは好調なようで、近所のゲームショップでも世界樹の迷宮DQMJと共に売り切れになってました。アナザーコード同様、今作もCMがガンガン流されており、それによって購入した一般のライトゲーマーも多いと思いますが、そうした人でも大体想像通りの楽しさを味わえるのではないでしょうか?
アドベンチャーゲームという性質上、クリアまでの時間は長いと言っても限度があるでしょうし、クリアしたら中古流れも早いソフトだとは思いますが、こうしたゲームも今後遊んで行きたいと思うので、是非次につながるような展開をして欲しいですね。