音声インタフェースの成功例となるか?!「しゃべる!DSお料理ナビ」

7月、8月はこれといった大作ソフトがない任天堂のDSラインナップですが、その中で話題になっているのが「しゃべる!DSお料理ナビ」。特に、ソフトのパッケージ画像の公開、DSLiteの新色ノーブルピンクの発売、そしてCM公開と、情報が出てくるごとに日増しに注目度が高まっているように思われます。

しゃべる!DSお料理ナビ

しゃべる!DSお料理ナビ

公式ページ、TouchDSのページの両方で広報活動しているわけですが、どちらも見せ方が非常にうまいなぁ、という印象ですね。
しゃべる!DSお料理ナビ
Touch-DS.jp - しゃべる! DSお料理ナビ
とくに、色鮮やかな写真を前面に打ち出したきれいなデザインが、食欲をそそられていい感じですw。

このDSお料理ナビ、基本的には料理レシピ集であるわけですが、その中で大きな要素を占めるのが「音声インタフェース」です。DSではこれまで、脳トレ音声認識をうまくつかって今までにない新鮮なゲーム感覚を生み出していました。過去にさかのぼれば「ピカチュウげんきでちゅう」や「シーマン」、最近では「nintendogs」や「大玉」など、ゲーム分野ではいくつか音声認識を応用したものが出ていますが、今作のように、音声合成と組み合わせて、入出力インタフェースとして音声を使った例は初めてのように思います。この記事では、この音声インタフェースに注目してコメントしてみたいと思います。

○音声インタフェースの応用例

音声認識を実用シーンで実現したものとしては、IBMのViaVoiceなどが有名です。PCでの文字入力やコマンド入力に音声を使う感じですね。ただ、PC利用に限ってしまうと、結局健常者であればキーボード+マウスに勝る例はなく、初心者への容易さという面でも、タッチペンの手書き入力の方がまだ現実的で、なかなか普及していない状態です。

音声認識で抵抗感につながるのは、やはり「発話」することでしょう。一人でも恥ずかしいし、周りに人がいればなおさらです。人以外のものに発言する、と言う行為は通場ない行為のため、抵抗感無く使うためには、どうしても慣れが必要になるわけです。脳トレなどで多少音声認識知名度は高まっているとは思いますが、まだまだ日常レベルに入り込めるレベルではありません。

こうしたウィークポイントをもつ音声入力ですが、それでも「音声でなければならない場面」であれば、話は変わってきます。現状で言えば、「カーナビの操作」がそのいい例です。車運転時は、運転手はうかつにハンドルから手を離して操作するのは危険ですので、音声入力のメリットがあるわけです。また、視線も不用意に前方からそらすわけにはいきませんので、音声出力機能も最近では普通にみんな使っていますよね。
とはいえ、カーナビでも音声入力を通常使っている人は少ないでしょう。それは、信号待ちなどで多少手を使い操作できること、そもそも車でカーナビを使う用途では多人数の場合が多いので、操作は助手席の人に頼むことができるということも大きいかと思います。

○家庭内音声インタフェースの試金石?

そうした意味では、今回の「しゃべる!DSお料理ナビ」が目的とする『料理中』というのは、実にいい着眼点のように思いますね。料理中はどうしても手が汚れることが多いですし、火を扱うときはそう簡単に手を離せないこともしばしばあります。さらに、料理するときは一人で行う場合が多いでしょう。そういった意味では、非接触で入出力できる音声入力は、実に理にかなったインタフェースなわけです。

公式ページやCMの動画を聞く限り、音声出力機能はあまり流ちょうな発音では無いですが、それでも抑揚はついており、DSのハードスペックを考えればそれなりなレベルであるように思います。十分実用レベルでしょうし、DSというゲーム機で使うことを考えれば、逆に『味』であるとも言えるでしょう。
また、音声入力についても、料理中だと炒めたりする音や換気扇の音など雑音も多いと思いますが、「OK」とか「くわしく」など、単語をかなり限定しているだけに、それなりの精度で使えるんじゃないか、と予想してます。

こうしたソフトは、これまでもPCなどでは同様のソフトがあったかもしれません。しかし、わざわざノートPCを台所に置いて料理する人も少ないでしょう。ニンテンドーDSという、小型で安価な端末が出てきたからこそ、こうした「ちょっとした用途」に音声インタフェースを使えるようになったわけです。そういう意味では、単なる一つのソフト、というだけでなく、生活の質が変わる可能性もある、インタフェース界にとって試金石的なソフトなようにも思いますね。

以上のような意味から、この『しゃべる!DSお料理ナビ』は、音声インタフェースの中では歴史的な成功例となる可能性を秘めたソフトだと思います。実際、『ゲーム裏話』さんの情報によれば、出荷数は初回25万本とのこと。それなりに受注もあったと言うことでしょうから、結構期待できる気もします。
平成18年7月9日|ゲームの裏話

気になるところとしては、画面が小さいので離れたところで見やすいかどうかとか、料理が定番が中心なので、主婦だったらこんなの見なくても作れるんじゃないか、というところですね。バンドブラザーズのように、GBAスロットを使ったレシピ追加や切り替えが出来る拡張を用意してあるといいのですが。(先日のP〜さんのレポートでレシピ追加についてちょこっと情報は出ていたので、何らかの機能はあるように思いますけど。)

○まとめ

PSPがとかくゲーム以外の用途で使われているという批判があるため、このソフトに対しても当然、「DSはゲーム機なのに、こんな実用ゲームが売れても…」と文句を言う人もいるとは思います。ただ、PSPUMDや音声・映像再生がそういった「ゲーム以外」が主要素であり、UMDに至っては容量は増えるけどゲーム中のロードが長くなるという欠点も持っているのに対して、DSのマイクやタッチペンは純粋にインタフェース機能なため、これまでにも十分にゲームに活用されています。そうした基本をふまえた上で、すでに持っている機能を活用してより生活を便利にしてくれるのなら、こうした実用ソフトも十分にアリ何じゃなんじゃないでしょうか。

「共通のプラットホームを目指す」として、Operaブラウザやワンセグチューナなど、さまざまな展開を見せていく任天堂の戦略。その一つとしてこの「しゃべる!DSお料理ナビ」がどの程度の成果を残せるのか、興味深いところです。