「“ソニータイマー”など埋め込まれているわけがない」 by ソニー

ソニータイマーという有名な言葉がありますが、それについてソニー自身が言及してしまったという珍しい例で、一部で話題になっています。

ITmedia エンタープライズ:初心者ユーザーの増加に対応したソニーVAIO事業部の取り組み――G-Forceジャパン

基本的にVAIOサポートの話で、初心者への用語の使い方などを工夫している点について話しているのですが、問題となっているのは以下の発言。

岡本氏の悩みは、「不当にソニーの商品イメージが悪いこと」だ。

 「“買ってから1年1カ月で壊れるソニータイマー”など埋め込まれているわけがない。だが、こうしたイメージはなぜか根強く残っている。マーケティング、アフターサポート、製品開発部門を連携させて、とにかくイメージアップを図りたい」(同氏)

公式に、「ソニータイマーは埋め込まれていない」という発言がされること自体が非常にめずらしいですね。ただ、あえてそうしたネガティブワードを取り上げるにしては、発言の仕方があまり好意的に解釈できるものでは無かったようです。


ソニータイマーという言葉の背景については、Wikipediaに非常に詳しく書かれています。
ソニータイマー - Wikipedia
slashdotでもかなり熱く語られていますね。
スラッシュドット ジャパン | 「ソニータイマーなど埋め込まれている訳がない」と、VAIO関係者が発言


上記ページに書かれているように、もともと、ソニータイマーという言葉自体、ソニー製品を買ったユーザが故障した際などに抱く不満感が集まったもので、非常に多くの要因が長いことかけて広まったものなんだと思います。もちろん、ライバルメーカーやアンチソニーファンの悪口もかなりの量があるとは思いますが、実際にソニー製品を買って故障してしまったという、実感を伴った発言も混ざっていることで、なんだかんで信憑性が高まってしまっているのだと思います。それでも、本気でソニータイマーなるものが埋め込まれていると信じている人も少ないんじゃないでしょうか。単に、壊れやすい、という品質についての悪いイメージを持っているだけで。
ソニーの場合、特にPSなどで若年層に多数のソニー製品を売りましたが、PSは非常にゲームで酷使されたために、故障の絶対数が多くなっていました。実際、PSなどは、コストダウンの一環として可動部分に樹脂製パーツを使われていることなどが指摘されています。こうしたPSの影響で、若年層に対してソニーブランドの勝ち組としてのいいイメージだけでなく、壊れやすいという印象も与えてしまったのではないでしょうか?


話を岡本氏の発言に戻すと、個人的にここで問題なのは岡本氏の使った「不当に」・「なぜか」という言葉じゃないかと思います。つまり、上記のような複数の要因から生まれているソニータイマーという言葉を、そういった背景にあるものの考察なしに「不当になぜか」としてしまっていることが問題なんだと思います。少なくとも、会社側の人間が、自分たちに都合の悪い事項について、安易に「なぜか」という言葉を使うべきではないと思います。前にもPSPでインフラストラクチャモードが国内で少ないことを「なぜか少ない」と言ってしまいましたが、会社側の人間としては常にその「なぜか」を深く考察し、自らが解決のためにとりくまなければいけないと思います。「なぜか」と言って考えることを放棄してしまったら、他にはだれも代わって考えてくれはしないのですから。
他にも、「不当」と言う言葉も、これだけ見るとあたかもアンチソニーファンの印象工作のせいだ、とも見て取れますよね。こういう、自らに責任がないようなニュアンスの発言は、あまりシチュエーションに似てはいないのですが、雪印社長の「私は寝てないんだ」発言を思わず思い出してしまいました。消費者の目線でなく、あくまで自分の目線でよく考えなしに話している、という点で。


ソニータイマーという言葉に対する対策として、この岡本氏は単に「イメージアップしていく」と言っていますが、まずは品質の高いものを作ることが重要でしょう。PS3も、10年間の可能性、将来性で売ろうとしているぐらいなのですから、10年は故障せず動くような品質で出してきてほしいものですね。