4-2. ニンテンドーDS Lite開発スタッフインタビュー

発売当初の極度の品薄から、徐々に出荷も増えて品薄が解消の方向に行っているニンテンドーDS Lite。本来発売と同時期に公開する予定が、その品薄のために見送られていたDSLiteの開発インタビューが公開されました。
開発の上で注意された点では、いろいろな点でPSPとは違うところがあり、その対比がおもしろいですね。たとえば、以下のコメント。

米山:携帯型ゲーム機として、操作性を犠牲にしてまで小さくするわけにはいかないんです。もちろんディスプレイの大きさはキープしたいし、ボタンの配置も変えるわけにはいかない。そんな中でダウンサイジングするために、今回は部品メーカーさんと協力してカスタムメイドのパーツをいくつか使っています。

これに対して、「これがPSPの仕様だ」の時の久多良木氏のコメント。
「それがPSPの仕様だ」、久多良木SCE社長がゲーム機不具合騒動を一蹴 - - nikkeibp.jp - 過去記事

「これが、私が考えたデザインだ。使い勝手についていろいろ言う人もいるかもしれない。それは対応するゲームソフトを作る会社や購入者が、この仕様に合わせてもらうしかない」

別に、任天堂開発陣が特にすごいコメントをしているわけではありません。操作性を犠牲にせず、いかに小さくするか、というのは元々日本のメーカーが至上命題としてきたことですから。単に久多良木社長の逆ギレコメントがおかしいだけです。使いにくいかもしれんが、我慢しろと客に言い切れる日本人は、非常に貴重な種ですよね。

もう一つ、品質、頑丈さについても好対照なコメント。任天堂側は以下の通り。

米山:携帯ゲームの機構設計に携わる者として強度は軽視できません。誤って本体を落として壊してしまったとしても修理代に数千円かけていただくのは忍びないですし、修理代にかかるぶんをおもしろいソフトに使っていただきたいですしね。そのために今回も内部構造の補強や部品の配置バランスも含めて強度をかなり上げ、強度試験は長期間かけて行っています。ただ、そこには重さやサイズとの葛藤もあるんです。この悩みはゲームボーイの時代から機構設計に携わっている者の宿命ですね。

できる限り故障しないように、配慮がよく分かりますよね。ゲームボーイの開発秘話で、山内元社長が自ら試作機を落下させて故障しないかどうかまず確認したという逸話は有名ですからね。
一方で、初期不良続発、□ボタン問題などさまざまな点で品質問題について騒がれたPSP。そもそも構造的問題があったんじゃないかという指摘に対して、久多良木社長が語ったありがたいお言葉が以下の物。

「使用する液晶画面はこれ以上小さくしたくないし、PSP本体もこれ以上大きくしたくなかった。ボタン位置も狙ったもの。それが仕様。これは僕が作ったもので、そういう仕様にしている。明確な意思を持っているのであって、間違ったわけではない。世界で一番美しいものを作ったと思う。著名建築家が書いた図面に対して門の位置がおかしいと難癖をつける人はいない。それと同じこと」

素人があれこれ邪推して変なこと抜かすな、おまえらはただ俺の作った物をありがたがって使っていればいいのだ、という、まともな人間ではまずはけないコメントを社長が発していたのだからすごいですね。


ともかく、至極まっとうな企業努力を続けてきた任天堂が、一時期の不振を抜け出し、徐々に復活してきています。一方で、一度の成功でおごったSCEは、柳の下のどじょうをねらいすぎ、成功前提の大型投資で身動きがとれなくなり、徐々に雲行きが怪しくなっている状態です。久多良木社長という、強いリーダーシップはあるが、その分毒もある人物で、この先本当に成功することができるのか。なかなか興味深いものがありますね。