PS4に関するあれこれ〜ディベロッパー指向なハードも、市場は冷淡

昨日発表されたPS4。それから一日を経過し、さまざまな反応や追加のインタビューが出ていますね。以下、そうした情報について簡単に触れてみたいと思います。

SCEインタビュー〜詳細は未決定、視点はディベロッパー向け

まずは追加のインタビュー群から。

4Gamer.net ― PS4は「つながり」の中心に。SCEJプレジデント 河野 弘氏インタビュー
4Gamer.net ― PS4でゲームはどう変わるのか。SCE Worldwide Studiosの吉田修平氏インタビュー
【本田雅一のAVTrends】PS4が変えるユーザー体験。SCEハウスCEOインタビュー -AV Watch

SCEJ河野氏は日本でのビジネス面での視点、吉田氏はソフト開発としての視点、CEOアンドリュー氏はトータルな枠組みとしての視点を語っていますね。いずれも、理屈的には無理の少ない話をざっくばらんにしている印象です。ある意味、刺が少ないというか。情報的な新しさとしては互換性や中古の件でしょうか?互換性については、ディスクレベルでの互換性は無し。あくまで、PS3の互換についてはGaikaiを介したクラウドで提供するようです。まあ、これはアーキテクチャが違うことから分かっていたことではありますが、結構昨日の段階ではクラウドのくだりを勘違いしていて「互換性ある!」と最初思ってしまった人も多かった模様。クラウドだと、どうしても遅延や利用料金とかが気になるところですが、この辺はまだ「未定」とのこと。MSの出方を伺っているだけならいいですが、本当に技術的に未定だとちょっと怖いですね。中古については、一部禁止になるのではとも言われてましたが、現状では「動く」という吉田氏の発言。ただ、ちょっと含みは残っていますね。なんらかの認証などのからくりは残っている可能性はあります。

その他本体の機能やアーキテクチャについては、ディベロッパー指向な感じで作り易いもの、新たな操作ができそうなものを詰め込んだ、という感じ。個人的にはSteamなどのPCゲームに好印象を持っているので、このアプローチは無難で悪く無いとは感じています。どこもPCベースで作ってGPUを駆使したゲーム作りになっているのは普遍的だし、変態アーキテクチャにすることは誰も幸せになれないでしょうからね。カメラに付いては、標準かとも思いましたが吉田氏の発言見るとちょっと外付けの可能性もありそう。それだとほとんど使われなさそうです。ちょっとでかいと思うんですよね、PS4Eyeって。タッチパッドは、とりあえずスマホとかで流行ってるから付けてみた、って感じのようです。Vitaの背面タッチパッドと一緒で、非常に危険な発想ですね。まずソニー自身が「こういうことをやりたい!」と思ってデバイスを付けないと、サードが活用してくれる、なんてのは甘い考えだと思います。

本体アーキテクチャについて〜GPURADEON HD7850相当、CPUはJaguarで低消費電力仕様

続いて、本体アーキテクチャについての分析。これは半導体に詳しい後藤氏と、GPU関連技術の専門家の西川氏の記事。

【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】次世代ゲーム機「PlayStation 4」をSCEがニューヨークで発表
【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】PlayStation 4のCPUコアはなぜ「Jaguar」なのか

後藤氏の記事は、これまでも半導体製造の視点からさまざまな予想をしており、結果的にほぼその予想が的中したかたちで、これまでの持論のおさらいみたいな記事になってますね。GPUリッチなのにCPUがそこまで高くない構成になっていることの舞台裏などが語られています。Jaguarもそこまで性能が低いCPUではないと思うのですが、CPUが低めでマルチコアGPUリッチというのは、どことなくCellのPPU・SPUの構成を思い起こさせます。GPU使いこなせないところは、まるまるCPUのスペックに依存することになるため、弱小インディーズや中小和ゲーメーカーはすごいクオリティのものは難しいかもしれませんね。(もっとも、その辺はそもそも金かけてモデルや背景などの素材を作ること自体が金銭的にも無理かもしれませんが。)

PS4の正体は? RADEON HD7850並みのGPUと予測 by西川善司

一方GPUについては西川氏。アーキテクチャと性能値から、大体RADEON HD7850相当とのこと。自分が今使っているPCにはRADEON HD6850が載っていますが、これよりは高性能みたいですね。とはいえ、自分が買ったこれもせいぜい1万円強ぐらいのもの。7850も現状すでに2万切っているミドルレンジなので、2,3年もしたら1万円以下のローレンジになってしまいそうですね。構成的にも、2,3年後に7万ぐらいのローレンジデスクトップPC+Steamの方が性能上、みたいなことは十分ありそうです。その他、アーキテクチャ的な面から利用出来るCGテクニックについていろいろ書かれていますね。

市場の反応〜ステレオタイプな冷淡意見

さて、こうした記事の一方で、市場のアナリスト関連の評価は結構冷淡なものが多いです。

PS4でSonyは土俵際に立つ, くたびれた戦略と変化への盲目
プレステ4、流れは変えられない - WSJ.com
ソニー、サプライズなきプレステ4 リアルな映像の功罪  :日本経済新聞

なんか、どれも「リッチな据え置きゲームは時代遅れ」みたいなステレオタイプな意見でちょっとがっかりしますね。PS4は、リッチな据え置きゲームをリーズナブルな形で開発、提供するかを考えた構成だと思うのですが、そもそもの「リッチゲーム」を否定しているところから入ってるのが残念です。たしかに、スマホタブレットでそれこそスーファミ時代にも劣るようなゲームでも満足、金も稼げてる時代なので、リッチゲームは単なる開発費の無駄遣い、的な発想なのかもしれません。AV機器が機能や性能が向上しても特に消費者に求められなくなって来ているように。PS2のDVD、PS3のBDみたいなものが無いのも、インパクトを弱くしているのかもしれません。

とはいえ、「もうリッチなゲームなんていらない」みたいな論調をゲームをさほど好きでもなさそうなアナリストにされるとイラッとくるところはありますね。

ゲームに詳しくない人にも驚きを持ってもらえるかどうか

以上、追加情報を見てみましたが、全般的に理詰めで無難につくってきてる感じのするのがPS4です。開発責任者がPS3の変態アーキテクチャに苦しんだのを何とかしてきた人たち、そしてソフト開発してきた人たちだから、その反動ががっつりきているというか。その一方で、市場は互換性のなさやそもそもの目玉要素の地味さ、据え置き市場への関心薄れなどから冷淡な反応、というところでしょうか。

そもそもPS3や360でも洋ゲーではマンネリ化、経営悪化が叫ばれており、単に効率化を高めただけの据え置きゲーム機がどこまでビジネス的に成功できるか、怪しいところはあります。ただ、個人的な指向としてはやはり据え置きゲームやPCゲームでの美麗なリッチコンテンツは生き残っていて欲しいと思っています。任天堂はGamePadというところで本体性能はあまり飛躍的にはあげずに目先を変えてアプローチしてきましたが、PS4はどっちかというとソニー版ゲーミングPCみたいな、PCでもできそうなことばかり。まずはソニー自ら「PS4でしかできない画期的な驚き」を提供する必要があるでしょう。サードだのみするなら、開発費援助とかしないと、サードはサードで冷淡なのはVitaでも分かっているでしょうし。和ゲーメーカーが体力的にあまり期待できない状態ですが、ソニーには市場評価を見返してやるような「何か」を、E3などでしっかりとアピールしていただきたいものです。