SCEがクラウドゲーミングのGaikaiを買収〜今後のPSソフト配信の布石か

WiiUが先陣を切る形になる次世代据置ゲーム機。一方で、MSとSCEでもUE4がらみなどで次世代機の噂がちらほら聞こえているところではあります。

そんな中、今日ゲーム業界において大きな動きがありました。それは、ソニー子会社であるSCEが、クラウドゲーミングのGaikaiを買収したというニュースです。

4Gamer.net ― SCE,クラウドゲームサービスの「Gaikai」を買収
ソニー、クラウドゲーミングのGaikaiを約300億円で買収 - Engadget Japanese

クラウドゲーミングとは、サーバー側でゲームのレンダリングをし、結果を端末に送信してプレイする、いわばリモートプレイのクラウド版というサービス。この分野ではOnLiveが大きく世間にアピールしていましたが、その後出てきたGaikaiが各種メーカーと連携したサービスを展開し、まだ萌芽前という感じではありながら熾烈な闘いをしていたようです。

6/30に契約締結〜買収額は3.8億ドル

Gaikaiは、先日のE3前にもソニーが買収という噂は出ていましたが、今回それが正式に発表されたかたちですね。PRによれば6/30には契約を締結しており、買収額は3.8億ドルとのこと。SCEは先日722億円の債務超過が発覚したのですがまた300億規模の買収となりますね。

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もっとも、PRでは「業績への影響は軽微」とのこと。これは買収額に見合う収入が初年度から見込めるということなんでしょうか?それとも買収額とはまた別計算?

PS2/3の互換性替わり?PS4の本筋〜気になる活用法

さて、こうなるときになるのはソニーの活用法ですね。当然ゲームへの応用となるんでしょうが、プラットホームメーカーであるSCEが買ったということで、当然PS本流への応用が考えられます。GaikaiはLGやサムスンといった韓国メーカーとの契約も取り付けており、スマートTVへの展開をやっていたので、まずは韓国メーカーへのPSゲーム配信とかですかね?あとはソニーBRAVIAでのスマートTVでもやってきそうでしょうか。このあたりは今のところはまだノーコメントということのようですが。

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後は、個人的に予想するのはPS2PS3の互換性関連への応用です。PS2PS3は各々特殊なアーキテクチャすぎて、次世代機での互換性が非常に難しいと考えられています。CELLももうほとんど終息傾向ですしね。しかし、オンラインクラウドであれば、サーバー側だけ互換性を維持できるマシンを用意出来れば、あとはクライアント側は平凡な端末でも対応できます。PS2,PS3への互換を形だけでもうたいながら、コストパフォーマンスに優れた次世代機を提供するには、良いソリューションだと思いますね。もっとも、この場合は手持ちのディスクを使うことができません。やるとすると、今のVitaのようなPassport形式でしょうか。このあたり、追加出費が必要なようだとあまり消費者に受け入れられず、まさに形だけになりかねないのが玉に瑕ですが。

一方で、そもそもPS4そのものがGaikai経由のクラウドオンリー、というのもありえなくないとも思います。つまり、Gaikai対応する端末は全てPS4、みたいな。課金の方式としては月額制や買いきり制とかですかね。とはいえ、クラウドゲーミングではどうしても遅延が出てくるため、国によってはゲームにならないところも出てきそうなので、クラウドオンリーは現実的には難しいのかもしれませんが。

他のソニー機器ではOnLiveへの対応〜GoogleTV関連

一方、先日の平井CEO就任以降「One Sony」を強調しているソニーなのですが、このGaikai買収にたいしてまたアンバランスな対応が見て取れます。

4Gamer.net ― Sony,SCEが買収したGaikaiのライバルサービスと連携する製品を発売

7/9に発売するGoogleTV対応のメディアプレイヤーでは、GaikaiのOnLiveに対応する、ということです。Gaikai買収直後に、ライバルクラウドのサービスを提供するというのはなんとも間の悪い。もっとも、OnLiveとGoogleとが提携したのはもっと前の話で、GoogleTVについてもソニーGoogleが組んで率先してやっていたもの。その流れということで考えればさほどおかしい話ではありません。むしろ、「ならなんでOnLiveの方を買わなかった?」という感じもするんですが。

構図的にはPSXスゴ録みたいな、SCE VS ソニーみたいにも見えてしまうのですが、これは「One Sony」を掲げる平井CEOとしてもバツの悪いところでしょう。いろいろ見直しをかけていくと株主総会で言っていたので、今後Gaikaiへの一本化などが図られるのかもしれませんね。

他社の動向にも注目

以上、今回のSCEのGaikai買収について触れてきましたが、個人的にこの動きは業界的に非常に興味深い話だと思っています。クラウド、というのは一つの流れでもありますし、分散コンピューティングなどとも絡めれば、いろいろ夢のある世界にも感じます。WiiUはもう具体的に出てしまったのであれですが、Miiverseというソーシャルネットワークがありますし、ネットワークがキー要素であることには変わりありません。互換性はハードで取っているので、ある意味シンプルです。一方、MSがどう出るかですね。Windows8スマホタブレット、PCをまとめてきているだけに、ゲーム部分もWindows Xみたいな形でカーネル共用、一部互換性ありとかでまとめてくる可能性もあります。また、ソニーのようなクラウドでのゲームプレイも、可能性が無くもありません。

単純な性能だけ追い求める据え置きゲームが、コスト面や販売価格面、差別化などの面でいろいろ行き詰まりが見える中、WiiU、Gaikaiと動き始めたゲーム業界。数年後に訪れる世界は、もはや単なる「ハード」を飛び越えた争いになる気もします。ゲーム業界の動向好きとして、面白い未来が広がっていることに期待したいですね。