ソニー経営方針説明会開催〜ゲームは3大重点事業の一つ

本日はソニーの経営方針説明会が開催されました。平井新CEOとなって初の説明会、そして5200億という大きな赤字を発表した直後だけに注目が集まりました。

http://www.sony.co.jp/SonyInfo/IR/financial/fr/viewer/strategy/2012/

説明会の趣旨は以下のリンクで述べられています。

Sony Japan | ソニーを変革し、エレクトロニクス事業の再生、成長と新たな価値創造をめざす

重点事業として、ゲーム、イメージング、モバイルが上げられていますね。特にゲームが大きく取り上げられているのが、ゲーム好きとしては興味深いところです。平井社長の出身母体でもありますし社長になった功績の一番ですので、今後も注力されていくということですね。PS Vitaの出足がいまいちなところがあり、この先の展開が不安視されているところはあるのですが、これによって「ソニーの命運を握る存在」にまで格上げされた感じです。これまではTVの影に隠れていましたからね。

周辺機器販売、DL販売・定額課金・カジュアル層らが収益拡大改善の鍵

ゲームに関するスライドが今の2枚。

14.重点事業領域:(2)ゲーム
15.重点事業領域:(2)ゲーム

グラフを見るとゲームの売上が11年度で8000億強、営業利益が350億ぐらいでしょうか、黒字となっています。営業利益率が4.5%ぐらいといったところ。これを14年度には売上1兆円、営業利益率も8%ということですから800億円黒字と大きく伸ばす目標のようです。その具体的施策が2枚目のスライドで、ハードとしては本体と周辺機器で堅実な売上、それ以外のソフト・サービスの部分ではDL販売強化、定額課金の拡大、そしてカジュアル端末での新規顧客獲得とあります。

まずハード面は、コストカットした本体を売っていくこと、そして利益率の高い周辺機器をたくさん売ること、ということでしょうか。torneなんかはかなり利益出てそうですよね。これを見ると本体の無茶な値下げはなさそうでしょうか。ソフト面では、DL販売強化というのはVitaですでにやっています。定額課金とはPlayStationPlusやSEN(Sony Entertainment Network)での映像音楽配信というところでしょう。カジュアル端末、というのはPS SuiteでのPSタイトルのスマホ配信ですね。

堅実ではあるが地味な戦略

こうして見ると、たしかに平井CEOのこれまでの路線の延長という感じです。コストを切り詰め、利益率の高い部分を重視していく、と。ただ、大々的に売上や利益率を伸ばす、と言う割には地味ではあります。どっちかというと「うまくやりくりする」という感じで、イノベーティブなものは感じられません。

また、ソフトとかでソニーが大きく自ら牽引、というのがあまりアピールされていないのも気になるところ。あくまでサードのソフトなどが中心で、ソニーは胴元、土管屋としてロイヤリティで喰っていくというか。PS2で世界的に大成功したときにちょうどSCEAにいたのが平井氏ですので、その成功体験に引っ張られているのかもしれません。久夛良木氏がPS3でとったオープン路線(Linux、汎用HDDなど)を、クローズドなものに戻したのも平井氏ですしね(Linux廃止、Vitaの専用メモカ)。SCE時代からPS2時代の原点回帰を何度もアピールしていましたし、その流れかと。ただ、それならせめてPS1の頃まで戻って「ファーストとして大型タイトルで市場開拓」ぐらいまで踏み込んで欲しいところなんでしょうが、大型ソフトはハイリスクですし、コストカットで上り詰めた平井CEOでは難しかったということなんでしょうか?

サードの動向に左右される戦略

しかし、こうした戦略を見ると、多分にサードの動向に左右されてしまいそうに感じます。映像配信やtorneはまあソニー自身のコンテンツなのでその延長でしょうけど、ゲームに関してはいかにサードが能動的に参加してくれるのか。海外ではXbox360が大きなシェアを占めていますし、任天堂WiiUでマルチ展開の一角に参加してきます。日本では3DSが中心で、和サードはもう体力不足が著しく「いかにコストかけずビジネスモデルの変化だけで金稼ぐか」に腐心しており、もっぱらスマホやソーシャルに目が向いてしまっています。そうした、海外、日本のサードにどんどんソフトを出してもらうための強力なアピールが、いまいち感じられなかったところが残念です。

もちろん、裏で開発支援したり、販売協力するなどしてすでに多数の有力タイトル発売の確約をとった上での自身のある発言なのかもしれません。ただ、今は日本も海外もマルチプラットフォームは当たり前の時代。サードがそれほど独占タイトルを出してくれるかというと、そうでも無いような。その状態で本当にこの大きな拡大を実現が可能なのか、ちょっと疑問の残るところはあります。

まずはサードもユーザーも安心できる体制づくりを

ざっと見てきましたが、とりあえずソニーが今後もゲームに大きく注力すると決意表明をしたことは大きなプラス要素でしょう。これまではとにかくTV赤字の立て直しばかりにフォーカスがあたり、ゲームはちょっとビジネス的には日陰の扱いでしたから。ただ、公約をした分、周りの見る目も厳しくなります。「ゲームが成功しなければソニーが傾く」といった見方をされても仕方ないところもあるでしょう。

戦略的にコストを抑えてソフトやサービスの拡大、ロイヤリティで稼ぐようですので、まずはサードやユーザーがたくさん参加してくれなければ話になりません。そういう意味では、ハードの普及台数というのは非常に大事な要素になってきます。その部分について、今後もっと積極的かつ具体的な戦略を見せて欲しいですね。また、経営の苦しいのはサードも一緒なので、いかに協力体制を築けていけるかも重要。金はかかるところでしょうが、ライバルの任天堂とMSはキャッシュ持っていますからね。そこと張り合うには、ソニーもそれなりに身銭を切る必要があるでしょう。サードはなんだかんだ現金だと思うので。

とにかく、集中と選択の一つに選ばれたゲーム事業。ソニーが頑張れば必然的に任天堂とMSも頑張らざるを得ませんし、市場も盛り上がることでしょう。とりあえずこの年末商戦ぐらいまでの動向に注目してみたいと思います。