ICONIA TABがiPad2を圧倒?!〜BCNランキングを利用した提灯記事

商品の宣伝のため、ある調査結果の見方を工夫することで別の印象を与えようとする試みは至る所で行われています。調査機関、記事を書くところが裏で金銭関係がある、いわゆる提灯記事、というやつですね。記者のギャラ関係コメントなどからそういった記事があることは分かっていますし、まだ良識のあるメディアなら[PR記事]という見出しをつけたりもするのですが、ステルスマーケティングに対して明確な法律での罰則の無い日本では、たびたび提灯記事が横行することがあります。

ただ、そんな記事の中には、ときどき「いくらなんでもこれはおかしい」という記事が掲載されることも。今日、そうした「これはひどい」という記事が読売新聞に掲載され、話題となりました。

ICONIA TAB、iPad2引き離しシェア1位…7月度 : インターネットコムニュース : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

はてなブックマークの方でその反応を見ることができます。
はてなブックマーク - ICONIA TAB、iPad2引き離しシェア1位…7月度 : インターネットコムニュース : ニュース : ネット&デジタル : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

あまりに内容がひどかったためか、すでに記事が読売新聞からは削除されています。かなり珍しいケースですね。ただ、元々の記事はjapan.internet.comのもので、そちらの記事はまだ残っています。
日本エイサー「ICONIA TAB A500」がタブレット端末シェアで1位に - japan.internet.com
他にも、J-CASTが同様に記事にしていますね。
7月のタブレット端末機種別販売数量シェア、「ICONIA TAB A500」がiPad2上回りトップに : J-CASTモノウォッチ
そして、CNET Japanではプレスリリースをそのまま掲載。
エイサー、Android(TM)搭載タブレット「ICONIA TAB A500」販売好調 7月のタブレット端末製品別売上シェアで1位を獲得 - CNET Japan
そのプレスリリースは以下のものになります。結局、このエイサーのプレスリリースをそのままエイサーの都合のいい状態のまま記事にしちゃっていたのが残りのメディアってことですね。
エイサー、Android(TM)搭載タブレット「ICONIA TAB A500」販売好調 7月のタブレット端末製品別売上シェアで1位を獲得|日本エイサー株式会社のプレスリリース

iPadのモデル別集計を逆手にとったエイサーの発表

この記事、基本的には日本エイサーがBCNランキングのデータを元に、自社のICONIA TABが売れていることを主張する発表をし、それを記事にした形となっています。その際の、エイサーの主張の仕方がえぐいというのが話題になった点ですね。

acer【アイコニア】ICONIA タブレットPC シルバー ICONIA TAB A500-10S16 アップル iPad 2 Wi-Fiモデル 16GB MC979J/A(ホワイト) アップル iPad2 Wi-Fiモデル 64GB - ブラック

BCNランキングでは、タブレット端末について、型番毎での集計を行っています。このため、iPad2ではそのメモリ容量、色で非常に多くの型番があるわけですが、それが個別集計なので数が分かれているんですよね。それに対して、エイサーのICONIA TABはA500単体。もうひとつ、Windows7を搭載したW500というのもありますが、それを加味しても2モデルとなります。結果的に一位のICONIA TAB A500の下に、iPad2の各種モデルが6つ並ぶという、馬鹿馬鹿しいグラフが出来上がり、その状態で「ICONIAが一番!」と主張しちゃっているのが滑稽でしか無い、という訳ですね。

ちなみに元となっているBCNランキングの月間ランキングは、以下のページから参照できます。

iPad、タブレット端末の売れ筋情報|BCNランキング【月間】

こちらによれば、30位までで3Gモデルや初代iPadも入れて17個もiPadがランクインしています。ある意味iPad一色のようなランキングですね。足し合わせれば過半数を越えている状態で、ICONIAは大きく差をつけられている形です。

とはいえ、たしかにICONIA TAB A500もよく売れていますし、Android端末の中で過半数以上を占めている、ということは特に過剰な発表にもなっていません。iPad2を上回っていると主張しちゃったこと、それに対して、プレスリリースではグラフ掲載されていないのに、internet.comがわざわざグラフを載せて記事にしちゃったことが、今回の嘲笑を誘ってしまった形です。

「見出しニュースの伝搬」の過剰利用

インターネット社会では、ニュースは見出しだけでどんどん伝わっていきます。今回も、読売新聞がinternet.comの記事をそのまま掲載した形で多くの人の目に触れるようになった形ですね。GoogleニュースやYahooニュースなどでも、そうした一部偏向メディアの捏造に近いような記事を、そのままのタイトルで転載してしまうことがあり、ちょくちょく問題になったりします。立ちが悪いことに、そういったメディアは、誤解が怒るのを承知でわざと変な見出しを付けていたりするんですよね。ネットのらくがきレベルの煽り内容をそのまま記事にして、タイトルだけ伝搬、さらにTwitterで拡散、なんてことも合ったりします。TVでマスコミにダマされる一般人をばかにするのをよく聞きましたが、インターネットだとさらに低レベルな「だまし」が横行しているような状態です。

以前、小学館著作権問題が盛り上がったときにも書きましたが、結局のところ最終的には「受け手側の情報リテラシー」につきます。今回の件は、はてブとかで総ツッコミ入っているのはいい傾向だと思いますね。おかしな偏向記事については、分かる人でどんどん指摘して、素人でも分かるようにすることは必要だと思います。あんまりやり過ぎて単にメディアを攻撃したいだけ、となってしまうと本末転倒ではありますが、カオスで理不尽な情報操作が横行しないようにするためにも、健全な情報伝達が行われるような空気をうまく作っていけるといいな、と思います。