PS3で音声合成によるニュース読み上げサービス「葛城ミサト報道計画」〜月額800円で

今世代のゲーム機において、先代との差分として大きいのがネットワーク部分。Wiiでの各種チャンネル、Xbox360でのLive、PS3での各種配信サービスなど、各社サービス内容から価格など、いろいろ模索しながらしのぎを削っている形です。

そんな中、PS3でまた一つ変わったサービスの提供が始まるようです。それは、エヴァの登場キャラ、葛城ミサトがニュースを読み上げてくれる、というものです。

バンダイナムコ、PS3「葛城ミサト報道計画」。日々のニュースを葛城ミサトが伝えるサービス - GAME Watch

映像はPS3の高いグラフィック性能を使ったトゥーンシェードの3Dで葛城ミサトを実現。そしてPS3のネットワーク機能を生かし、最新のニュースを毎日新聞から提供を受けて取得。そしてさらにPS3のCellのハイパワーと高い技術力に基づく音声合成で、全自動でニュースを読み上げてくれるという、まさにPS3ならではのコンテンツですね。基本無料なサービスが多く、いろいろと無料ならではの不足な点があったりするPSNですが、アイマスDLCの味を占めているバンナムだけに、ここであえて月額800円という価格設定をしてきたのもなかなかチャレンジングです。

開発にかかったお金をどこかで回収する仕組みは絶対必要ですからね。任天堂のように広告費扱いで計上する、MSのように会員制にして広く徴収するなどがありますが、PS3では任天堂ほど広告費にお金をかけている余裕も無いでしょうし、会員制にして料金を徴収するようなシステムも用意されておらず、これから構築するのも大変でしょう。そう考えると、一サードがPS3でお金を得る方法としては、こうした月額性というのも比較的現実的な解と思われます。800円という値段も、XboxLiveの、割引前の月額と同様ですから、まあ払えない額ではありません。オタク向け商売を基本にしているバンナムらしい展開です。

映像サンプルはすでに公開

とまあ、たしかに企画書レベルではなかなかよさげな内容なのですが、後は実際のサービスですね。すでに、サンプルのPVが公開されています。

うーん、これはちょっと微妙なような。まず、読み上げ方にあまり抑揚がなく、音節の間もぶつぶつとなめらかにつながっていないところも見られます。音声合成は、日立の「RubyTalk」というものが用いられている模様。HPで公開されている「RubyTalk2.0」という方のサンプルはかなりいい出来なだけに、今後のアップデートに期待と言うところでしょうか?

日立超LSIシステムズ:音声合成ミドルウェアRuby Talk-製品概要

また、キャラ自体もモデリングはなかなかいいのですが、無表情に近いのも気になります。これだけあまり感情が感じられないなら、素直に林原めぐみを起用して、「綾波レイ報道計画」で良かったんじゃないでしょうか?そっちの方が需要も高い気もするのですが。実際、この後そうしたキャラ違いバージョン、それに付随して衣装などのDLCなどをやっていくのかもしれませんけどね。

ちなみに、このサービスの提供には、依然SCEバンダイナムコが共同で設立した、セリウスという会社が関わっているようです。

バンダイナムコとSCEがタッグ!合弁会社「セリウス」設立/ゲーム情報ポータル:ジーパラドットコム
セリウス (企業) - Wikipedia

資本比率はほぼ半々。会社設立が2007年3月7日ですので、約2年3ヶ月というところでしょうか。その成果物の一つがこれとなる、というところでしょうか。

題材となったエヴァは、最近BDに対してソニーの高画質化技術が使われていると大々的にアピールしているところを見ても、BDやPS3などを推進していく上で、ソニーの中で戦略的位置づけとなるコンテンツになっているようにおもわれます。

発売迫るBlu-ray版「ヱヴァ」に採用された高画質技術とは? -AV Watch

ドコモでもエヴァケータイをアピールしていたりしますし、未だエヴァの影響力は強いということでしょうね。

「次世代機ならでは」への積極的姿勢には賛同

正直、このクオリティで月額800円というのは、消費者にすっと受け入れてもらうには厳しいとは思います。ただ、映像だけ綺麗になっただけゲーム性に変化が無い続編ソフト、もしくは映像すらPS2レベルでただ解像度が高くなっただけのソフトなど、あまり革新性の見られないソフト展開をしているところと比べたら、ファーストとしては挑戦的な取り組みをしていることは大いに評価出来ると思います。SCEPSPでもいろいろ挑戦的な取り組みをしていますし、結構頑張ってますよね。もっとも、新しい取り組みをヒットさせるのは、やはり難しいことであり、宣伝方法やそのインパクトが重要になってきます。このあたりをDS以降うまくやっていたのが任天堂で、そのあたりで差がついている感じでしょうか。ハードレベルでコンセプトが明確な任天堂に対して、コンセプト後付の形になっているのが、消費者になかなか届きにくくなっているところだとは思います。

Wiiのモーション入力やポインティングなどのUI、そして今回の音声合成とニュースの融合など、だいぶサチってきているグラフィックに比べれば、まだまだ発展の余地を残している部分はあると思います。せっかくハードの処理性能を向上させても、それを生かせる新しいコンテンツを作り、客層を広げなければ、ゲーム業界に待っているのは緩やかなる死だけでしょう。この「葛城ミサト報道計画」が成功できるかどうかは微妙ですが、今後も各社積極的にテクノロジーとエンターテイメントの融合を進めていって欲しいものです。