PS3で「ノンゲーム」も充実〜「Life with Playstation」や映像配信など

MGS4が初週47万本売り上げ、本体も約7.7万台と大きく飛躍し、15週連続週販トップのPSPを上回る販売を見せたPS3

【ゲームハード販売台数、ハード別ソフト販売割合】 集計期間:2008年6月9日〜6月15日 - ファミ通.com

一方で、その翌週はMGS4は約6.7万本の販売、PS3本体も2.5万台と、PS2の時と同様初動に大きく偏った傾向を見せ、良くも悪くも「従来のゲームの売れ方」を踏襲する形となっていました。

PSP「スーパーロボット大戦A PORTABLE」初週約9万本、他|忍之閻魔帳

その従来ゲームの市場については、団塊Jrの年齢上昇と少子化の影響で先細りの影響は避けられないことは、任天堂の岩田社長がDS発売前から繰り返し発言してきたことで、そのスピードの差こそあれ、現状の流れでは国内での縮小は避けられない印象はあります。

そんな中、是が非にでもPS3事業の黒字化を行いたいソニーは、MGS4の発売を一つの区切りとし、新たな戦略に打って出るようです。

「ソニーは変化し続ける」。映像配信強化など新経営計画

ノンゲーム」をゲームとならぶ中核に据える戦略

ソニー株主総会内で、SCE平井社長を招聘して「いかにしてPS3で黒字を出すか」を説明している形ですね。各種経費削減などの泥臭い話も出ていますし。ビジネスについても、通常のゲームの延長だけではなかなか大きな成長・拡大は見込めないということで、それ以外にどうやってお金を稼ごうとしているのかを、株主に説明している印象です。

説明スライド- PlayStation Business:2つの重要な鍵

上記のスライドでも示されているように、「Non-Game」というコマンドがゲームに並ぶ形で記されていますね。Wiiでもゲーム以外での様々なアプローチは行われていたのですが、「Non-Game」という言葉をそのままダイレクトにファーストが使っているところが、任天堂とちょっと違うところでしょうか?

この辺の言葉の使い方の違いは、任天堂ソニーのポリシーの違いもあるでしょう。任天堂は、岩田社長が前々から述べていましたが、「ゲームを家庭で受け入れてもらうこと」が主として、そのために抵抗感をなくす、手にとってもらいやすくする方法の一つとしてWiiのネット機能を打ち出していました。知育や実用ソフトも、「幅広い年齢層に受け入れられるソフト」という視点で開発されていますし、単に特定ゲームユーザーに固執しないでゲームデザインをしている、という印象です。

それに対して、元々ソニー久夛良木氏の「ゲームはトリガー」という発言にもあったように、ゲームが主という訳ではないんですよね。PS3も、BDとHD DVDの規格戦争に活用されましたし、今回の動画配信サービスなど、ソニーのサービスで囲い込むための戦略商品という位置づけが当初からありました。

ですので、今回こうしたサービスを打ち出してきたことは、トリガーとして消費者の家庭にPS3を導入させるゲームの役割が、一定の成果を得たということで、いよいよソニーの期待する「ノンゲーム」でのビジネス拡大に積極的に踏み出すということなんでしょう。どちらも、従来のゲームという既成概念にこだわらず、より顧客の多い広がりのあるエンターテイメントを目指すという点では共通していますね。

消費者の受け止め方は?

あとは、この戦略がどの程度消費者に受け入れられるか、でしょうか。すでにPS3の所有者に取ってみれば、新しいサービスが楽しめるのは歓迎される事項でしょう。動画配信も、レンタルでの借りたり返却したりの手間を回避できるのであれば魅力的です。

ただ、平井氏は久夛良木氏がゲーム以外にフォーカスを当てていたのを、「あくまでPS3はゲーム機」と、ゲーム中心のビジネスに持って行く戦略を取られていた方です。その平井氏が、MGS4でさらにゲームより戦略に大きく比重を映していた中で「ノンゲームもゲームと並ぶ核です!」と訴えるのは、ちょっと展開が急な感じがしなくもありません。

また、「Life with PlayStation」はWiiの「お天気チャンネル」と似た発想ですし、Homeやゲーム内広告はSecondLifeと同様、映像配信についてもXbox360において海外ではすでにディズニーなどと提携して実現されています。アイデア的にPS3オリジナル、と言い切れるものが乏しいのも少し気になるところです。任天堂の岩田社長が繰り返し言っている「消費者を驚かせる」という要素が欠けているのでは無いかと。とくに、この手のサービスは「手軽に手を出せること」が重要ですので、まだ4万円もするPS3では少々一般消費者にとってハードルが高い気もします。

個人的にはWiiの路線が好きで、このPS3の戦略自体は歓迎なのですが、果たして本当に黒字化のために効果的な手段となるかどうかは、若干疑問が残ります。黒字化自体は、おそらく経費削減や本体のコストダウン化とか、そちらの方の効果の方が大きいような気もします。

個人的にはこの方向性の充実に期待

とはいえ、個人的には「アフリカ」や動画配信など、従来ゲームでない路線には興味があります。通常のゲームはXbox360で比較的満足していますしね。また、別にソニーノンゲームに注力しても、マルチ開発環境を構築したサードはPS3でもゲームを出すでしょうから、ゲームが無くなるという訳でも無いでしょうし。

大容量HDD、高度なマシン性能を生かして、ノンゲームの分野でもPS3ならではの面白みのあるサービス・ソフトを充実させていってほしいと思います。