Wiiリモコンでテレビ番組にアクセス〜「テレビの友チャンネル」

Wiiリモコンによるモーション入力、ポインティングという機能が大きな売りのWii。一方で、標準で備わっているWiiチャンネルから広がる「毎日起動するゲーム機」というコンセプトも、まだそこまで浸透している感じはしませんが、任天堂は地道に努力を重ねている領域です。そんなWiiチャンネルに、また一つの機能が加わりました。それは、Wiiで見るテレビ番組表、「テレビの友チャンネル」です。

Wiiでテレビ操作やEPG表示が可能になる「テレビの友チャンネル」

テレビ番組表自体は、松下のテレビなどでよく使われているGガイド。電通も資本参加しているIPG(インタラクティブプログラムガイドという会社と連携しての提供となっています。

インタラクティブ・プログラム・ガイド - Wikipedia

基本はただのテレビ番組表なのですが、Wiiチャンネルならではの独特なアプローチがあったりするので、簡単に紹介してみたいと思います。

グラフィカルで機敏な動作のテレビ番組表

まず、基本となるテレビ番組表について。初期設定で地域を入力後、表示する放送波を選択。その後、情報送信の設定をしたあと、番組表に移ります。

番組表としては、日頃新聞などで見慣れている横軸テレビ局、縦軸時間の形式ではなく、その逆で縦軸がテレビ軸、横軸が時間軸の形式。RDなんかと一緒の形式ですが、正直なれていない人にはとことん見づらいかもしれませんね。もっとも、SD解像度のWiiで表現する場合には、横軸時間の方がスペースを効率的に使えて見やすい気もしますが。このあたりは賛否が分かれそうです。

番組表の解像度は、+-ボタンで時間軸の範囲が拡大・縮小可能。また、1ボタンを押すことで文字の大きさを段階的に変更することができます。もっとも、こちらもSD解像度なので最小文字サイズでもそれなりに文字は大きく、かといって情報量も番組名+α程度なので、基本は最小文字サイズで使うんじゃないかと思いますが。Wii自体は高齢者が使うことも想定しているので、大文字モードはそういった方用なんでしょうかね。

番組表では、異なる日付にも非常に軽快に移動することができます。これは、インターネットTV番組表のように毎回ネットに見に行くものよりも動作は軽快ですね。

強力な検索機能〜番組紹介から横断的に実行可能

上記のようなテレビ番組表は、「動作の軽い番組表」の域を出ていないのですが、この「テレビの友チャンネル」ならではの機能として一つ、強力な検索機能があります。

ジャンルごとに表示とかは、既存の番組表でもありますし、検索機能自体は普通に付いているものも多いでしょう。もちろん、この「テレビの友チャンネル」でも、そうした機能はついています。しかし、さらに進んだところとして備わっているのが「番組紹介文の中の単語から直接検索可能」というところですね。具体的には以下のスクリーンショットを見て頂くと分かるかと思います。

番組表のある番組をクリックしたときに表示される紹介文に対して、Wiiリモコンポインティングで自由に文字を選択することが出来ます。選択した語句には赤線が引かれ、Aボタンを放すと「さがす」というボタンが表示されます。これをクリックすることで、現在ダウンロードしてある番組表から横断的に検索が実行。該当する番組を3D表示で直感的に提示してくれるのです。色の変わっているところを選択すれば、実際の番組内容が表示。検索が該当した箇所は赤文字になっています。

これは、PCでのブラウザなんかだとよくある機能ですよね。ページ上の任意語句をドラッグして右クリック、そのメニューから「Webで検索」などを実行することで、毎回検索語句を手動で打ち込むのを避けられ、快適に検索が出来る手段です。電子辞書などでも、「ジャンプ機能」というのがあって、カーソルキーで辞書の文章内の単語を選択し、その単語の意味を別の辞書で引く、なんて機能があったりしますが、テレビでカーソルを使ってそこまでやるものは、自分は知りません。Wiiリモコンによるポインティング機能があることで、こうした文字列選択→検索がスムーズに出来ている感じがしますね。

逆転の発想の再利用〜センサーバーからの反射光を利用した「TVリモコン機能」

もう一つ、特徴的な機能として、Wiiで直接テレビ選択を可能とする「テレビリモコン機能」があります。これは、Wiiリモコンの仕組みによる問題点をうまく解決した内容となっていますね。

Wiiリモコンは、一見通常のテレビリモコンと同じ仕組みに見えますが、実際は大きく異なります。通常のリモコンはリモコン側に赤外線LEDが付いており、リモコンから赤外線信号を発信してテレビ側の受光部で受信します。それに対して、Wiiリモコンはセンサーバー側にLEDが付いており、リモコンの先頭に赤外線カメラを搭載することで、ポインティング位置を認識、実際の操作信号はBluetoothWiiに転送しています。いわば、センサーバーは逆転の発想で作られた仕組みなんですよね。

こうした仕組みのため、Wiiリモコンから直接赤外線光をテレビには発信できませんので、Wiiでテレビ番組表を実現しても、結局テレビの操作を別リモコンでやってしまうのでは片手落ちだと思っていたんですよね。それを、任天堂は逆転の発想を再び用いることで解決しました。

具体的な解決策としては、「センサーバーがテレビ操作信号を発信、その反射光を利用してテレビ操作する」というもの。要するに、Wiiリモコンが赤外線を発信できず、センサーバーからしか発信できないのなら、そのままセンサーバーでテレビを操作してやろう、ってことですよね。逆転の発想で生まれたものを、ダイレクトに利用している形です。

反射光を利用するため、テレビの場所などによってはうまく行かないかと思ったのですが、自分の場合はうまく動作。元々、センサーバーの片側には5つのLEDが付いており、その端の2つは若干斜めに、外側に向けてつけられています。この傾きについて、自分はプレイヤーの位置が左右に大きくずれても対応できるようにするため、と解釈していましたが、もしこの時点で将来的に壁などを使った反射光を利用したテレビ操作を想定してのものだとしたら、なかなかすごいですね。

【続報:Wii分解】「センサーバー」にはセンサがなかった - デジタル家電 - Tech-On!


テレビリモコン利用のための設定&運用も独特

このテレビリモコン機能の利用においては、そもそもの初期設定がなかなか大変です。テレビのメーカーやタイプなどをいちいち設定する必要があるので。ただ、この部分でもWiiは独特なアプローチをしています。それは、「テレビの反応を見ながら、Wiiリモコンを使って音声ガイダンスをする」というもの。

Wiiを表示しているテレビ自体をテスト操作したりするので、その部分をWiiリモコンのスピーカーで補っている形ですね。WiiFitの「ながらジョギング」なんかも、画面を出さずに操作させることをうまく実現していましたが、これも非常に理にかなったスピーカーの使い方と言えるでしょう。感覚的には、電話サポートなどでの音声ガイダンスに近い感じですね。

とはいえ、いくらガイダンスをしたからといって、こうしたリモコン設定は多少マニアックな感がするのは事実。はたして、電化製品に詳しくない大人の人がどこまでこの設定をちゃんとこなせるでしょうか?特に最後の設定項目は「とりあえずタイプAにしておいて」という漠然とした指示で自分でもとまどいましたからね。

また、テレビリモコンの利用方法も、自分はかなりとまどいました。てっきり、「テレビリモコンモード」なるボタンなりモードを選んで、それからWiiリモコンでTV操作をするかと思ったのですが、実際はそんなボタン無し。一体どうやればテレビリモコンモードになるのか、この「テレビの友チャンネル」内のチュートリアルだけでは分からなかったのですよね。

ホームボタンから見られるマニュアルを読んでもよく分からず、結局ウェブを検索。ようやく、テレビ番組を具体的に選択した時に出るテレビマークをクリックしたときに、テレビリモコン機能になることが分かりました。あともう一つはチャンネル名の横の数字を押してもテレビリモコンになりますね。

特にこの「テレビの友チャンネル」はそうなのですが、画面をパッと見ただけではどれがボタンで、どれが単なるマークなのかが分かりづらいです。ポインタを動かして、いろいろマークに載せてみて、そのときに出るヘルプで動作がやっと分かる感じ。色遣いやボタンの立体感など、若干UIに直感性を損なうところがある感じがしたのは残念です。

さて、肝心のテレビリモコンの使い心地ですが、なかなか快適。十字キーの上下で選局、左右で音量調整、1で消音、2で入力信号切り替えなどが可能です。また、ホームボタンを押すと元のWiiの画面に戻ることもできます。ただ、自分がやったときは3回に一回ぐらいはうまくWiiの画面に戻らず、BS放送に切り替わって止まってしまうことがありました。このあたりは、ちょっと動作は不安定な感じはしましたね。

強力なユーザープロファイリングが可能な「みんなの注目度」・「気になるスタンプ」

その他、なかなか強力なユーザーリサーチとして機能しそうなのが、「みんなの注目度」と「気になるスタンプ」。注目度の方は、純粋に番組情報を開いただけでその統計がカウント。気になるスタンプはユーザーが明示的にスタンプを押した情報が任天堂に送られるものですね。もちろん、情報送信の有無はいつものように選べるようになっています。

こうした、番組表の閲覧履歴というもの自体は、特段珍しいものではありません。ソニー提供の「テレビ王国」などではかなり前からやられていた手法ですしね。最近ではHDDレコーダーなどでもそういった機能がありますし。

便利なテレビ番組表【Gガイド.テレビ王国】

ただ、機能自体は同等でも、Wiiという何百万台も売れるコンシューマー機器で集められる情報というのは、なかなか強力な情報となるでしょう。特に、地域情報や性別、年齢なども合わせて送られるようなので、これは他よりもより詳しい視聴者関心情報の調査になりそうです。この情報がどこまで使われるかは「サービスの向上以外使わない」というちょっと漠然とした言い方になっているので、関係会社程度は利用したりするのかもしれませんね。もちろん、メインの使われ方は、この「テレビの友チャンネル」内での検索だったりするのでしょうけど。

まとめ〜テレビとの連携をより密にするチャンネル

以上、ざっと触れてきましたが、テレビ番組表という機能自体は、正直今は非常にメジャーであり、地デジTVなどを買えば標準で付いているもの。いちいちWiiを立ち上げてそこからアクセスするよりTVの番組表を使った方が表示もっさりしていたとしても早いし楽でしょう。また、自分なんかはそうなのですが、PC上でより一覧性の高いテレビ番組表を見て番組を把握、その後テレビリモコンでTVを操作するような人もいるでしょう。そうした人にはあまり恩恵はないチャンネルでしょうね。リビングにSDテレビを置いており、そこにWii無線LANでネットアクセスできる形でおいてある、という人には恩恵のある機能だと思いますが。

ただ、この「テレビの友チャンネル」で、これまでテレビを単なる映像出力機として使い、ある意味テレビ視聴の妨げとなっていたTVゲーム機において、リアルなテレビとスムーズにつながる手段を実現したというのは、なかなか画期的なことのように思います。「家の中で邪魔に思われないゲーム機」、「毎日起動してもらうゲーム機」という、任天堂のぶれのない方向性がしっかり反映されているチャンネルだと思います。

既存のサービスをある程度使いこなせている自分のような世代にはあまりダイレクトに効いてくる機能でなくても、こうした「異なるサービスのアプローチの仕方」というのを手を変え品を変え見せてくれる任天堂の姿勢は、純粋に好奇心を満たすという意味では実に面白いと思います。今後も、マンネリでない、消費者をあっと言わせる驚きを与え続けていって欲しいですね。