ファミ通・浜村氏の語るゲーム業界07〜08年
先日のエントリで毎日新聞「まんたんウェブ」での少々偏った記事を紹介しました。
”アキバのプロ”お勧めはPS3とXbox360?! - わぱのつれづれ日記
そのまんたんウェブで、またいろいろと突込みどころ満載の記事が公開されたようです。といっても、今回はそもそも問題発言の多いファミ通・浜村氏のインタビューと言う形ですが。
http://mainichi.jp/enta/mantan/news/20080103mog00m200001000c.html
内容的には、よく言えば大胆な予想、悪く言えばいろいろと首をひねりたくなるものとなっています。ただ、全体的に言い回しが妙に断言口調であり、これについては毎日新聞側で記事にする際に極端な口調にしてしまっている可能性はありますね。以前、東洋経済で自分のコメントが偏向して掲載されたと、ファミ通誌上で浜村氏が愚痴っていたこともありましたし。
浜村氏発言ピックアップ&コメント
上記のように毎日新聞で記事にする際に誇張されている可能性もありますが、一応業界第一人者が一般マスコミに名前を出してのインタビュー記事。引っかかる表現をいくつかピックアップし、コメントしていきたいと思います。
実はアドベンチャーは、ゲームとしては終わったジャンルですよね。(中略)DSで再びヒットしている。新たなユーザーが、ファミコンの歴史をたどっているみたいですね。
こちらは、発言内容自体は別におかしくないですが、終わったジャンルと言い切ってしまうのはちょっとどうかと言う感じですね。ファミ通的にはギャルゲはゲームとして認めていないんでしょうか。キミキスなんかは、エンターブレイン発売なんですけどね。Fateなんかも、角川はかなり推していたように思うのですが。
(ドラクエ9は)今期でそうにないですね。もっと市場を温める努力をしているのではないでしょうか。
次のドラクエ9の投入時期についても、DSがこれだけ普及してきてドラクエIVがミリオンを達成しているのにもかかわらず「市場が温まるのを待っている」という発言。たしかに、ドラクエリメイクで盛り上げてから9を投入と言う流れがふさわしく、スクエニもこれを狙っている感じはしますが、そもそも開発が遅れているということの要因が大きいような気もします。
(来年の注目は?)個人的には「ブルードラゴン」のDS版が注目ですね。「ダビスタ」や「サクラ大戦」が売れるかも、見ていきたい。
次の注目作品として、「ブルードラゴンDS」と「サクラ大戦」、「ダビスタ」をあげています。ブルードラゴンはアニメは結構人気なようで、ドラベースの件もあるので軽視はできませんが、そこまで爆発的ヒットするのは厳しいのではないでしょうか?また、サクラ大戦とダビスタは、タイトルとしてはちょっと古い感じもするんですよね。まあ、あくまで浜村氏は「注目作」としか言っていないので、これらタイトルが売れるかどうかで市場動向を読む、という意味合いなのかもしれませんが。
(PS3)値下げされて12月はWiiより販売を上回りました。値段の高さがネックだったのが証明された感じですね。4万円はPS2の最初の価格ですから、ようやくローンチしたと言ってもいいでしょう。
さて、その次が問題の「12月はPS3がWiiを上回った」という発言。おそらくこれは誤植でしょう。12月はWiiが爆発的に売れ、PS3は値下げ+新型+GT5Pという戦略の割には伸び悩んだ月でしたので、WiiがPS3を上回っているのは確実ですからね。これは11月の間違いだと思われます。(そのわりに記事が掲載されて1日ぐらいたっても訂正されていないのがあれですが。)ただ、誤植だとしても12月のクリスマス週にその前の週版を下回った点を踏まえた考察がされていないのが、業界第一人者としてはどうだろう、とは思いますね。
たしかに、久夛良木氏ほどの強烈なビジョンを語る人はいなくなりましたが、現SCE社長の平井氏は「PS3はゲーム機」と明確な発言を繰り返しています。ゲーム業界的には久夛良木氏の「PS3はゲーム機じゃない」という発言よりは好ましい発言のように思うのですが、それは浜村氏的にはスルーなんでしょうか?後半の「戦略商品だから」という発言も、ビジョンが語れていない話とかみ合っていない感じが。戦略商品だからビジョンがぶれている、と言いたいのですかね?
「メタルギアソリッド4」、「龍が如く」、個人的には「戦場のヴァルキュリア」が注目です。あまり売れないと、開発ラインをWiiに分けてくるメーカーが出てくる。ソフトのラインが止まると苦しくなるので、ある程度行かないと。
これはリアルな状態予想な感じですが、露骨に「もしこれらが売れなくてPS3とかのラインが減ったら困る」という心情に基づく発言ですよね。Wii向けにされることが、まるで悪いことのような表現です。浜村氏的には、Wiiばかりにソフトが充実してしまうことは、HDでの国内ハードのソフトがでない、望ましくない未来ということなんでしょうね。個人の感想としては自由ですが、総合誌の社長としてはいかがなものか、という内容のように思います。
「Wiiフィット」を買う人は、Wiiフィットをやるための機械と思っているのでは。任天堂はそれでもいいと思っているのでしょう。任天堂がチャレンジした「ゲームへの無関心」の挑戦は成功していると言えます。
任天堂が目指すのはあくまでゲーム層の拡大で、WiiSportsやWiiFitはその入り口のはず。これについては、岩田社長も発言しており、浜村氏も把握しているとは思うのですが、それでも「任天堂もそれでいいと思っている」と発言するのはどうなんでしょうね。浜村氏は任天堂の方針がわかっているはずなのですから、「次にどうつなげるかが重要」ぐらいのコメントはできないものなんでしょうか?
これまた大胆な発言ですね。ナイツやバイオUC、宝島Zなんかは浜村氏的には「ゲームらしいゲーム」ではないんでしょうか?浜村氏には、ぜひとも「ゲームらしいゲーム」という言葉の定義を、具体的タイトルを上げて発言していただきたいものですね。そもそも、ゲームらしいゲームがないという発言のあとにWiiFitをあげていますが、WiiFitは浜村氏的にゲームらしいゲームなんでしょうか?ここのところは、毎日新聞の編集の段階で変になっている気もします。
Wiiは今までのゲームの操作を捨てましょう、というゲームなので。マリオ、ドラクエでは、べらぼうに飛び抜けていない。スマブラで見せられるか? そこがポイントですね。
ここも非常に変な発言です。スマブラはWii発売前から「GCコントローラが最適」とまで発言されていたWiiにおける従来操作の代表作を表する作品。それに対して「スマブラがWii操作の独自性に鍵」と発言するのは、全くもって意味不明です。そもそも、Wiiではクラコンも用意しているわけで、「今までのゲームの操作を捨てる」ということがすべてのゲーム機ではないわけですし。FEなんかも出してますしね。
(スクエニは)PS3のレベルのネットワークゲームの展開が発表されるかに注目です。ドラクエ、FF、新ネットワークゲーム時代を作る可能性がある。
期待するのはPS3のネットワークゲームだけですか?WiiやXbox360は期待していないのですか?
WiiとPS3は競わず、違うユーザーが使い分けている。販売台数で競っているようにみられてきた。一つのゲーム機が、すべてを取る時代ではない。まだ混沌の時期ですが、今後10年がどっちに向かうか、明確になる楽しめそうな1年になるでしょう。
DSとPSPも、当初PSPが支持されるような発言をしていて、台数差が大きくなってきたら「住み分けできる」と発言をしていましたよね。PS3とWiiでも、「最終的にはPS3」という発言をしていましたが、Wiiが大きく伸びている現状ではまた「住み分けできる」という発言。なんか、業界の雄として発言する割には都合がいいな、という感じです。
問題は毎日新聞?浜村氏?
以上、いろいろと突っ込みを入れてみましたが、正直表現が大胆なものが多く、浜村氏がここまでそのとおり発言したのか、編集の段階で毎日新聞側が刺激的な内容になるように編集したのか、詳しく分からないところもあります。まあ、すでにはてなブックマークなどでもいろいろ突っ込みを受けていますし、毎日新聞側で極端な記述があれば、ファミ通の浜村通信で弁解のコメントがあるんじゃないでしょうか。
はてなブックマーク - 浜村弘一さんに聞く:ゲーム界07〜08年 ドラクエ9は市場待ち DSでファミコンの歴史再び(まんたんウェブ) - 毎日jp(毎日新聞)
果たして今回の浜村氏のコメント、どこまで市場に即したものになりますか。この一年の売行きで道筋が明確になると言うことなので、楽しみに見守っていきたいと思います。