「新型PS3についてのアンケート」に見るファミ通とITmediaの姿勢の違い
ネットでのゲーム情報というと、日本ではGAME Watch、ITmedia、ファミ通が有名ですよね。
GAME Watch Title Page
ITmedia +D Games
TVゲームニュース - ファミ通.com
自分の印象ではGAME Watchは比較的客観的に、中の文章なども追加情報なども加えて記載しており、情報も早くて好感が持てます。また、ITmediaは若干記者の感情や主観が入ることはありますが、複数ページも多く内容的に読み応えのある記事も多いですね。
一方、ファミ通はゲーム専門誌のウェブサイトだけに、ニュースと言うよりは広告的ニュアンスが強く、記事の中でも「!」マークとかよく使われていて、純粋なニュースサイトという感じではありません。また、ニュース記事もやたらとギャルゲが多かったり、特定陣営についての表現が偏りがあったりしますよね。ただ、ソフトメーカーとのつながりが強いらしく、スクープ情報が載ったり、マイナーだけどコアな人気のあるタイトルなんかも紹介されていたりします。
そんな有名ゲームサイトの内、ちょうど時期を同じくしてITmediaとファミ通で、先日発表されたPS2非互換新型PS3のアンケートを採っていました。この二つのアンケートが、実に両者の立ち位置というか、PS3のとらえ方をよく表していて面白かったので紹介してみたいと思います。
購買意欲を問うITmediaアンケート
まずはITmediaのアンケートから。これは現時点でまだトップページにアンケートがある状態ですが、以下のアクセスランキング記事で内容を紹介しています。
ITmedia +D Games:新しいPS3、買いますか?
このアクセスランキングのところでは度々編集後記みたいな記事が書かれますよね。IT戦士・岡田有花嬢など、「次世代ゲーム機が欲しくない」、「Wiiで盛り上がりすぎて驚いた」、「オカンもWiiに夢中でした」、「Wii、使ってますか?」など、ゲームネタでも率直な感想を書いていていろいろと話題になっていましたよね。
で、肝心のアンケート項目ですが、以下の通り。
PS2非互換となった新型プレイステーション 3。買う?
PS3の課題が値段の高さに対して、新型PS3の課題はPS2非互換な訳ですから、その双方について公平にいるいらないを聞いている感じですね。実に普通なアンケート内容です。
ちなみに、現時点では上記ランキング記事のところにあるとおり、「PS2のソフトができないんで買わない」というのが61%とダントツになっていますね。もっとも、ネットでのアンケートは基本的にネガティブな要素が大きめに出る印象があります。ですので、実際にはここまで高い比率ではないとは思いますけどね。
「買わない」という項目がないファミ通アンケート
さて、これに対してファミ通のアンケート。これは、「Yahoo!ゲーム」のページで開催されていますね。そのアンケート項目と結果は以下のページで見ることが出来ます。
税込で39980円と4万円を切ったPS3の新モデル、どう思う? (協力:ファミ通ゲーム白書編集部)
- 価格が手ごろになったので、買いたいと思う
- PS2ソフトとの互換性が有るなら、欲しい
- 互換はあまり気にしていないが、まだ高い
- 安くなって互換もある20GBモデルの方が良い
- 安くなって互換もある60GBモデルの方が良い
ITmediaの記事と比較してまず注目したいのは、「買わない」という項目がないこと。どれも基本的に「PS3は欲しいと思う」ということが前提の項目になっているのがすごいですね。5つ内でネガティブな要素が入っているのが「互換はあまり気にしていないが、まだ高い」と「PS2ソフトとの互換性が有るなら、欲しい」なわけですが、これら項目ですら「互換はあまり気にしない」「欲しい」という好意的言葉が入るのは徹底していますね。
もっとも、先のITmediaのアンケートで紹介したように、ネットでのアンケートではネガティブな項目の方が票を伸ばしやすい傾向があります。「ゲーム業界が幸せになる」ことを目指しているファミ通としては、こうしたネガティブな要素が目立たないように、好印象になるような項目にしたかったのかもしれませんね。
Wii相手だと異なる態度
ただ、相手がWiiになると状況は変わるようで、最近のものでは以下のようなアンケート内容になっています。
Wiiをお持ちの皆様、最近あなたがWiiのゲームで遊ぶ頻度は?(協力:ファミ通ゲーム白書編集部)
- ほぼ毎日遊んでいる
- 毎日とは言わないまでも、結構遊んでいる
- ここ最近はあまり遊んでいない
Wiiをお持ちの皆様、最近あなたがWiiのゲームで遊ぶ頻度は? (協力:ファミ通ゲーム白書編集部) - Yahoo!ゲーム - 投票結果
そして、このアンケート内容を以下のようにアピールしています。
Wiiについては、PS3の3倍のペースで売れてる一方で、「Wiiスポーツ」に並ぶヒット作に恵まれていないなど、ここ最近遊んでいないユーザーが67%に達しているという問題点を指摘。
エンターブレイン:09年にDSは3000万台、ドラクエ9は500万本視野 ゲーム市場展望(まんたんウェブ) - 毎日jp(毎日新聞)
まあ、これはあれですかね、ファミ通なりの「バランス感覚」ということでしょうか。あまりに一つの陣営が勝ちすぎるのは、ゲーム業界にとってよくないという。もっともその割には国内据置最下位のXbox360を猛プッシュしたりはしてないですけどね。
新型PS3に対する消費者のジャッジは?
PS3については、すでに現状の20GB、60GBも5000円値下げされ、スパイダーマン3のBDも付いてきてお得感が出ています。また、新型の4万を切る価格も確かにインパクトはありますよね。
忍之閻魔帳さんの記事によれば、先週のPS3の売上は久しぶりに1万台を割ってしまったようですが、タイミング的にはちょうど値下げ発表〜値下げ前にあたるので、これは売上が落ちて当然だと思われます。注目なのは従来型が値下げされた週の売れ行き、そして11/11の翌週の売上ですね。
PS2互換機能が重要視されているならば、今週の売上が結構な伸びを見せることでしょう。また、11/11はPS2互換機能が無いとは言え大幅の値下げですので売上は相当な伸びを見せるでしょうが、それがどの程度継続するかが興味深いところ。PS2互換機能が重要だとすると、新型PS3も好調な売れ行きが継続しない可能性もありますからね。(ちなみに11/11の週すらあまり伸びなかったら、今年の挽回は諦めた方が良さそうです。)
果たして、PS2非互換での値下げという大胆なSCEの判断に、消費者はどういったジャッジを下すのか、注目です。
P.S.
上記アンケートの比較では、考察が不十分なところがあったので補足しておきたいと思います。以下に、ITmediaとファミ通のアンケート項目での対応関係を記します。また併せて、それぞれの項目から想定される回答者の予想行動も記述しています。
ITmedia ファミ通 予想行動 ひと言。安いから買う 価格が手ごろになったので、買いたいと思う 新型PS3を購入 PS2のソフトはやらないんで買う 新型PS3を購入 まだ高いから買わない 互換はあまり気にしていないが、まだ高い 新型PS3値下げ待ち PS2のソフトができないんで買わない PS2ソフトとの互換性が有るなら、欲しい 新型PS3はいらない 安くなった現行モデルを買う 安くなって互換もある20GBモデルの方が良い 現行PS3を購入 安くなって互換もある60GBモデルの方が良い 現行PS3を購入
こうしてみると、基本的にITmediaとファミ通のアンケート項目は、本質的には違わないことが分かります。ITmediaの方が新型PS3購入という項目が2つあり、ファミ通の方が現行PS3購入検討が2つある形ですね。両方とも、「そもそもPS3に興味ない」という項目は無いので、PS3購入検討をしている人が対象のアンケートということになっています。
違いとしては「買わない」という言葉を直接的に使っているかどうか、ということぐらいでしょうか。ファミ通の方がより角が立ちにくい婉曲な設問になっている、という感じで。ですので、このアンケートから見て取れるのは、企業側への配慮の度合い程度、という感じです。
P.S.2
ついでに、上記で対応づけた「購入者の予想行動」で、ITmediaとファミ通の現時点の投票結果を対応づけてみました。
予想行動 ITmedia ファミ通 新型PS3を購入 11% 11% 新型PS3値下げ待ち 15% 31% 新型PS3はいらない 62% 25% 現行PS3を購入 10% 36%
こうしてみると、設問の表現的にも一致している「新型PS3を購入」については同率となっていますね。それ以外は、設問の表現の違いや、ITmediaとYahoo!ゲームを来訪する人の傾向の違いが出ている感じです。ファミ通の方では「新型PS3がいらない」というダイレクトな設問がない分、それが値下げや現行PS3の項目に分散している感じですかね。
そもそも、ファミ通の「PS2ソフトとの互換性が有るなら、欲しい」という項目自体、PS2非互換である新型PS3のアンケート項目としてはよく分からない項目ですね。PS2互換が復活したと仮定した場合のマーケティングリサーチでしょうか?(ちなみにファミ通側が足して100%にならないのは、各項目小数点以下を「切り上げ」で表記しているからのようです。)