PS3 国内累計販売100万台達成 〜 ただしソースはファミ通

先日の「PLAYSTATION PREMIERE」で反転攻勢に出たPS3。そんなPS3を強力にバックアップすべく、ファミ通ことエンターブレインも多数の記事をWebにアップするなど、精力的な活動が続いています。

そんな中、PS3の後押しするかのように、エンターブレインからPS3国内累計販売台数100万台達成の発表がなされました。

東京新聞:国内販売、100万台突破 PS3、発売から8カ月で:経済(TOKYO Web)
PS3国内販売が100万台、Wiiは今月上旬に290万台−ファミ通(2) - Bloomberg.co.jp: 海外トップニュース

ただ、このアナウンスの文章を読むと実はちょっとしたからくりが潜んでいるように感じます。その点について、以下で詳しく見ていきたいと思います。

PS3より累計期間が1週間少ないWiiの販売台数

今回エンターブレインによるからくりが隠されているのは、Wiiの販売台数について。Bloombergの記事の方を見ると、PS3Wiiの販売台数と集計日は以下のようになっています。

PS3 1,010,492台 7/15現在
Wii 2,909,931台 7/08現在

なぜか、Wiiの方はPS3の集計よりも1週前までのデータとなっています。たまたま、Wiiだけ集計が遅れたのかな?とも思いましたが、そんなことは別になく、いつもファミ通ソースの販売台数速報を語られる忍さんのところで、7/9〜7/15の週のWii販売台数について公開されています。

続いて本体関連。
DQS」に合わせて若干出荷数の増えたWiiは約10万台、
牙城揺るがずのDS Liteは約13万台、
新型の発表で来週以降の動向が気になるPSPは約3万台を販売。
PS2PS3は熾烈なブービー賞争いを継続中。
360は「トラスティベル」効果も無くなって元の水準まで戻った。

「ドラゴンクエストソード」Wii用ソフトの初動記録を塗り替える|忍之閻魔帳

上記忍さんの「約10万台」という内容を信じるならば、Wiiは先週だけで少なくとも9万台強は売っている訳です。この数字を7/8現在のWiiの販売台数に足すとどうなるでしょう?綺麗に、300万台を達成してしまうんですよね。ようするに、PS3の販売100万台と、Wiiの販売300万台が同じ週に達成されるという、おもしろい偶然が生じてしまったと考えられるわけです。

こうした状況に対して、結果的にファミ通が取った手段が、「PS3は100万台達成した7/15までの数字を公開、Wiiは300万台達成していない7/8までの数字を公開」というもの。こうした手段をとった裏側について、自分なりの推測を以下で述べてみたいと思います。

「累計期間のズレ」の裏側についての推測

ファミ通的にはPS3を盛り上げるためにも、「PS3販売100万台達成!」というのを大々的に報じようと考えて、ずっと準備していたのでしょう。しかもちょうど「PLAYSTATION PREMIERE」が開催されたところですしね。時期的にもちょうどよかったわけです。「100万台」という数字も、PSの「いくぜ100万台!」という生産出荷によるハッタリコピーでなじみの深い数値ですしね。

しかし、Wiiがまさかの同週300万台達成。完全にかぶってしまうとは、ファミ通にしても想定外の結果だったのではないでしょうか?しかも「ハード販売300万台」といえば、ファミ通の浜村氏が『普及の目処の台数』として繰り返し主張していた数値。ようするに、ファミ通・浜村氏の自論に従うのであれば、100万台達成よりもずっと重い意味を持った数字なんですよね。

となると、Wii300万台とPS3の100万台を同時に示すことは、ファミ通的にはおそらく、都合の悪いことだったのではないでしょうか?実際、ファミ通のHPではPS3の100万台だけを取り上げてますしね。

プレイステーション3の累計販売台数が100万台突破 エンターブレイン調べ / ファミ通.com

ただ、他のマスコミ向けへの情報公開となると、当然ライバルのWiiなどの販売台数も求められるのは必然でしょう。ここで単に「PS3が100万台、Wiiが300万台」と情報公開してしまっては、おそらくどのマスコミも「Wii販売台数300万台達成!PS3の3倍」というニュアンス・見出しで記事が書かれているのは目に見えています。そこで、わずかにWiiの販売台数を1週分しぼることで「300万台」という分かりやすい数字が表に出るのを阻止した、というのが自分の推測な訳です。

まあ、結局こうした「からくり」があっても、結局「Wiiに半年遅れ」とか「ライバルに水をあけられ苦戦」とか報道されちゃってるんですけどね。それでも、ジャスト3倍差がつくよりは印象は弱まっている感じはしますよね。19800円が2万円より大幅に安いように見えるのと同じで。

もちろん、これは自分の推測にすぎませんので、真相がどうなのかはわかりません。もしかしたら、Wiiの7/9〜7/15の販売台数が90,068台だったりして微妙にWiiが300万台に届いていないかもしれませんしね。ただ、どちらにしろ集計できているのに累計期間が1週ずれているのは不自然な感じがします。

「生産出荷100万台」報道から半年も経過

さて、こうした累計期間のズレ以外にも、この情報を見る視点があります。というのも、ファミ通が「PS3、100万台達成!」と大々的に報じるのは、今回が初めてではないんですよね。それは、今やさすがにすっかりからくりが暴かれた感がある『生産出荷台数』です。

プレイステーション3の生産出荷台数が日本国内で100万台に到達 / ファミ通.com 

まあ、このときはSCE自らがプレスリリースしているわけなんですけど、そのあまりにもあんまりな内容に、以下のエントリでいろいろつっこんだものです。

わぱのつれづれ日記 - 『PS3 国内生産出荷100万台達成』プレスリリースについての分析

上記ファミ通の記事も、発表当時は見事に『出荷台数』となっていたみたいですね。まあ、さすがにファミ通自身が「アンフェアな行為」について公式に詫びた以上、二度と同様のミスを犯すことはないと思いますけど。

しかし、当時こんな発表をしてしまったため、結果的に今回の「販売100万台」の報道により、『生産出荷したものを実際に売るのに、半年もかかるんだ』という事実を消費者に知らしめてしまったわけです。どんだけ開きのある数字を常用していたんだ、ということですね。海外でも、前の年に生産出荷を大量に行い、翌年生産出荷0とかいうあり得ない数字を決算で出してましたしね。ハッタリを繰り返すと、いつかこうして化けの皮を剥がされることが起きる、といういい例でしょう。(もちろん、これはPS陣営に限った話ではないですけどね。)

「業界を盛り上げること」と「情報操作すること」を混同しない情報公開を

ファミ通的には、ゲーム業界で特定の勢力だけが伸び、他の勢力が衰退するような自体よりも、全てのプラットホーム、企業がどこも好調な売り上げを上げていくことを望んでいることはよく分かります。実際、PS3Xbox360Wiiも、すべてがぐんぐん伸びてソフトも充実して、世間的にも注目度が上がって、という事態になれのはいいことですしね。

ただ、現実的にはどうしても偏りが生じてしまいます。そうした際に、ファミ通はどうしても特定顧客向けに都合のいい情報ばかり重視する傾向があるのが、いまいちなところです。単なる一営利企業としては間違ってはいないことだとは思うのですが、なまじファミ通は他の一般マスコミから「ゲーム業界についての普遍的情報を提供できる情報機関」としての役割も期待されちゃってますからね。そうしたファミ通の営利主義な行動が、もろに他のマスコミ記事に反映されてしまうわけです。もっとも、最近はだいぶマスコミも学習してきて、エンターブレイン報道を鵜呑みで記事にしたりはしなくなりましたけどね。(もっとも、浜村氏的にはむしろ、一般マスコミ側の方が自分たちの情報について変に穿った見方をしている、という意見のようですが。)

ゲーム業界に限らず、こうしたマスコミによる情報操作など、日常茶飯事でしょう。自分が知らない・知識がないだけで、ファミ通よりひどい例も世の中にはいくらでも転がっていると思います。ただ、下を見ていてもキリがありませんので、現状ゲーム情報機関としての責任を負わされている以上、ファミ通にはそれにあった形での情報公開をお願いしたいところですね。小手先の印象操作などに頼るのではなく、業界全体を盛り上げていけるような、そうした取り組みをして頂きたいものです。


P.S.
ファミ通で、Wiiが300万台販売達成した件も7/19に報じられたようです。
Wiiの国内累計販売台数が300万台を突破 エンターブレイン調べ / ファミ通.com
こうしてみると、上記の「わざと一週間ずれた数字を公開した」という自分の推測は的はずれで、実際はコメントで指摘のあったように「PS3の販売台数だけ最新データを公開した」というものの方が正しそうです。これついては、別途エントリでまた自分の考えを述べていますのでご参考ください。
わぱのつれづれ日記 - Wii 国内累計販売300万台達成 〜 これもソースはファミ通

勇み足的な記事で、皆様にご迷惑をおかけしたことをお詫びします。