CEROレーティングに異議を唱えるファミ通・浜村氏
昔と比べ、最近はテレビゲームに置いて子どもへの影響というものが非常に大きくクローズアップされています。ゲーム脳が一時期騒がれましたし、最近でも銃乱射事件などが起こるたびに、テレビゲームが影響しているとしてバッシングにあったりしますよね。
そうした世間からの厳しい目に対して、むやみに国からの規制などを加えられないよう、ゲーム業界が独自に定めている自主規制基準に、CEROのレーティングというものがあります。
コンピュータエンターテインメントレーティング機構//年齢別レーティング制度とは?
ゲームの内容を審査し、A,B,C,D,Zのレーティングをつけるというものですね。ただ、このレーティングについてはZ指定以外には販売時の強制力はなく、推奨年齢の指定のあるB,C,Dでも誰でも自由に買えてしまうところがあって、その有効性には疑問のところがあります。さらに、審査自体もゲームの隅から隅まで検証するわけにもいかず、提出されたものの一部を機械的に基準と見比べて審査され、変な査定になってしまうこともしばしばで、批判が絶えないところですね。
さて、上記のような色々問題もあるCERO基準だけに、世の中にはこのCEROに対して真っ向から文句を繰り返し述べている人物がいます。別に単なる一消費者やゲーマーなら分かるのですが、問題はその人物がゲームマスコミ最大手エンターブレイン社長、浜村弘一氏だということです。ある意味、業界の秩序を築くべき立場でありながらことあるごとにグチグチ文句をつける彼ですが、今週のファミ通における浜村通信では特に眉をひそめるようなコメントがあったので取り上げてみたいと思います。
「親が判断する」のに「子どもだけで買える」矛盾を無視した批判
まず前半部分では、レーティングの意味について以下のような趣旨の発言をしています。
まあ、モンハンがらみのいつもの浜村氏の主張な訳ですが、やはり自分には引っかかるところがあります。特にこの発言で引っかかったのは、「誰でも買うことが出来るのは意味がない」ということに対して「親が判断することだ」という反論を返しているところです。レーティングは親が見て、子どもがプレイしていいか判断しなければいけないものならば、むしろB,C,D指定こそ保護者同伴で、親が見極められる状態で販売しなければ意味無いんじゃないでしょうか?
子どもが小遣いで勝手に買えてしまうのでしたら、親の判断もあったものじゃありません。子どもが勝手に買った後、親が「こんなのプレイしちゃダメ」と制止すればいいということでしょうか?でも、それだと子どもせっかく限られた小遣いで購入したのにそれがプレイできず、やるせない状態になってしまうでしょうし、親も子どもとそうした気まずい思いになりたくないこともあるでしょう。
ゲームソフトメーカーの味方である浜村氏としては、ソフトが売れるのならOKなのかもしれませんが、ちょっと思考が偏っているように思いますね。「ゲームを制限なくいろいろな人に売るべきで、最終的な責任は購入者側にあるべき」という浜村氏の結論が先にあり、屁理屈気味に苦情を述べている感じをうけます。
ゲームマスコミトップでありながら「トワプリ」の審査基準を把握していない浜村氏
さらに自分が驚いたのが、その後のゼルダトワプリのB指定のところです。
- 『ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス』がB指定で驚いた。プレイしても何が問題かよく分からない。
- 一説には、低年齢の子どもが観るには過激なシーンがあることらしい。何らかの表現手段で、CEROの基準に引っかかるらしい。
- 相変わらず木を見て森を見ない判断。審査者は作者の伝えたいものを見極めて、その上で判断して欲しい。
- 12歳以上という基準にするなら、その判断基準を寄り明確に提示して欲しい
ここを読んだときは心底あきれましたね。それは、「なんでこいつはトワプリがB指定食らった基準を知らないんだ?」というところです。トワプリがB指定を受けた理由は、すでに発売前には明らかになっていました。
わぱのつれづれ日記 - Wiiに関するQ&A〜ニンドリ1月号
上記の記事の最後の部分で取り上げているように、2006/11/21発売のニンドリでトワプリの審査基準については触れているんですよね。しかも画像付きで、任天堂広報の公式な説明なわけです。それなのに、仮にもゲームマスコミトップにいるような人物がこのゼルダのB指定を、ここに来て「基準がよく分からない」と発言したのは、本当にあきれてしまいました。
いくらライバル誌に載せられた情報だからといって、公式の発言を「一説によると」という曖昧な知識扱い。そんないい加減な理解で、この浜村氏はCERO評価に声高に文句をつけていたのかと。こんなの、政治に対して偏見だけで文句をつけてる酔っぱらいレベルなんじゃないですかね?
浜村氏こそ率先して業界秩序を守る努力をすべきでは?
その後にあるように、審査基準を分かりやすい形で提示するべきという主張はたしかに分からなくもないですが、浜村氏がゼルダの規制をよく分かっていない時点で台無しです。それに、よく分かるように示すというのなら、ファミ通紙面で堂々とやればいいじゃないですか。ニンドリはすでにトワプリについてQ&Aという形で紙面で紹介しているわけですし、ニンドリができてファミ通ができないという話もないでしょう。
誌面でネットアンケートの結果を「組織票を除く」と適当に手を加えて何ページも「隠された真実が明らかに!」とか特集記事組む余裕があるなら、これまで様々なCEROの年齢制限を受けているタイトルについて、具体的にどのシーンがどのように引っかかったのか、分かりやすく何ページも記事を作ればいいんじゃないでしょうか?
過去にそういった特集もあったのだとしたら、過去のクロスレビューを別冊付録にする代わりに過去のCERO指定基準の別冊付録をつけて、どういった点が問題ありそうなのかを広くアピールする努力をすればいいのに、と思います。社長がこれだけ明確に強い意志を持っているのですから、ただ雑誌の巻末でグチグチ文句をつけるのではなく、協力して業界をよい方向に持っていくような行動に移したらいかがでしょう。社長からのトップダウンで。
また、浜村氏はそもそも影響力の強い立場にいるのですから、自らのPSWびいきの発言とか、クロスレビューの大手メーカー重視といった「アンフェア」なところも直していくべきでしょう。そういった提灯記事あふれる業界は、やはり世間から白い目で見られてしまうと思うんですよね。ゲーム業界のことを考えてCER基準に文句つけるなら、そういった自らの雑誌の取り組み方についても見直すべきだと思います。
ゲーム業界が自主規制することの意義
CEROによるレーティングにいろいろ問題があるとはいえ、こうしたゲーム業界内での規制がなければ、単に世の中の見る目がさらに厳しくなり、最終的には国などの強制的な規制にまでおよびかねません。制度上まだ不備のあるCERO基準ですが、こうした自主規制の基準作りというのは、ゲームを白い目で見られないためにも非常に重要だと思いますね。現時点で対象年齢にひっかかっており、ゲーム好きな人などは単に鬱陶しいだけかもしれませんけど。
任天堂も、DSやWiiで目指しているものの一つに「ゲームを白い目で見られないようにする」というところがありますしね。いつまでも不健康、子どもにやらせたくないものという視点を親にもたれてしまったら、業界として伸びていかないですし、実際プレーしている自分たちも形見が狭いですしね。ゲームの社会的地位を高めていくことは大事でしょう。
この辺についての自分の考えは、以下のエントリにもう少し詳しく書いているつもりです。
わぱのつれづれ日記 - ゲイムマンのブログ:砧公園秘密基地: ゲイムマンが世田谷のゲーム脳講演会に行ってきた [ITmedia +D Blog]
ゲーム業界の自主規制の行方はいかに
いろいろと、浜村氏個人については批判をしてきましたが、そうは言っても確かに現状のCEROレーティングが色々問題をはらんでいるのは確かでしょう。基準が分かりにくいとか、拘束力がZ指定しかないとか、レーティングを一体どう活用すべきなのかがはっきりしていない感じはします。B,C,D指定を保護者承認が必要とかやるのも趣旨的にはいいのですが、ゲームショップなどから見れば正直現実的ではないでしょうしね。
最近では、WiiやDSのおかげでだいぶイメージがよくなっているビデオゲームですが、やはり親から見ればまだ、子どもの勉強を妨げるとか、ひきこもりになるとか、そういった教育上のネガティブさを感じるところはあるでしょう。そうした中で、そうした白い目を向ける人たちを無視して業界が開き直ってしまっては、いつか手痛い制約を課される心配もあります。
任天堂の進める「ゲームへの抵抗感減らし」も一つの方向ですし、上で自分が主張したようにファミ通などがCERO基準などをもっと分かりやすくアピールしていくことも一つだと思います。我々ゲーマーが今後も様々なジャンルのゲームをプレイできるようにするためにも、世間から後ろ指を指されないような土壌を築いていけるといいですね。