堀井雄二氏の意気込みが感じられる「ドラゴンクエストソード」インタビュー

好調ながらサードのタイトルでいまいち大きな成功例が現れないWii。そんな中、発売前から注目されていたタイトル「ドラゴンクエストソード」がいよいよ来週7/12発売されます。

発売を前にして、すでにTVCMなどが開始されていますが、WiiのHPでもドラクエシリーズの鍵を握る人物、堀井雄二氏のインタビューが公開されています。(Wiiメールニュース経由)

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上記インタビューでは、堀井雄二氏がどれぐらいこのDQSに関わっているかが見て取れますね。ゲームバランスなどに、かなり真剣に取り組んでいる感じです。試行錯誤した様子、そしてそれによって導き出された結果などがなかなか興味深いですね。

苦心の跡が伺える剣撃操作

DQSは、自分がWiiを初めて体験した記念すべきタイトルであり、そして失望したタイトルでもありました。
わぱのつれづれ日記 - Wii体験会レポート(ソフト編) 『ドラゴンクエストソード』

この中で、特に失望したのは「剣の振りのいい加減さ」横切り、縦切りの感覚が相当いい加減だったんですよね。最近はWiinRemoteでWiiリモコンで得られる情報の認識の難しさが分かってきているため、剣撃は動きの中でもかなり詳細な区別がしにくい操作だとは感じています。ただ、それでもあまりに自分の動きと画面の剣筋が一致しないと、興ざめしそうなんですよね。

こうした操作性について、堀井雄二氏は二つの結論を出したようです。1つは「ゲームが認識する動きを覚えることも、1つのテクニックである」ということ。そして、もう一つは「ポインティングモードで確実な狙いも出来るようにする」ということです。
1つ目はまさに、逆転の発想ですよね。結局、剣を振るときの振りかぶる操作、手首を微妙にひねる操作などが、誤認識につながっているわけです。Wiiリモコンはあくまでリモコンにかかる加速度を測るだけで、腕が今どの位置にいるかという空間的把握は難しいですからね、こうした微妙な予備動作がどうしても認識難につながってしまうのでしょう。解決法としては、1つは「パーソナライズ」で、その人の癖を繰り返し学習モードで入力させることで、その微妙な部分もひっくるめて認識させてしまおうというものです。Wii用開発ツール「LiveMove」などが、そのアプローチを助けるものですね。

わぱのつれづれ日記 - Wiiのジェスチャ認識実装を助けるミドルウェア「LiveMove」

しかし、こうしたツールを使ったとしても、そもそも「プレーヤーに一度学習させる」という時点で、ゲームのハードルは多少上がってしまいます。もっと英語づけではこうした学習機能がありましたが、やはり結構面倒ですし、その割にあまり認識高価が上がった印象もありませんでした。なんだかんだ言って人の癖もふまえた認識というのはなかなか難しい問題であり、まだ研究の余地があるところだと思いますね。

それに対して、堀井雄二氏の出した回答、「プレーヤー側が合わせる」というのも、まあ1つの方法だとは思いますね。特に、このDQSの場合は、そうした「ゲームの想定する振り方」で狙ったところを攻撃できるというメリットはあるようですしね。一応モチベーションの1つにはなるように思います。また、より精度を増すことのできるポインティングを同じレベルで取り込んでいるのもうまいですよね。慣れない内はポインティングで確実な攻撃を行い、ゲーム特有の「認識グセ」を把握すればポインティングなしに攻撃できるという訳ですね。(ただ、ポインティングなしでどうやって画面の左右、上段下段を区別するのは非常に謎ですが。せいぜい縦横斜めぐらいを正確に出せるぐらいしか出来ないと思うんですけどね。)

街だけは自由に移動可能〜ヌンチャク動作に未練も

DQSを体験したときに萎えたもう一つの点は「Aボタン押しでの自動移動」でしたね。要するに一本道で、途中で多少分岐がある程度。ゲーセンのガンシューティングみたいな感じですよね。せっかくグラフィックが凝っていてもなんかレールの上を歩いているような印象を受けました。

そうした印象を堀井氏も持っていたためか、どうやら自由に動き回るモードも追加された模様。ただし、それは街の中だけのようです。戦闘も含めて自由な方向を向いて歩くには、ゲームデザインの根底から狂うため難しかったんでしょうね。

ちなみに、この移動の様子も動画で紹介されているようですが、Aボタンで前進中に十字キーで方向を変える、という感じですね。リモコン一本での操作が可能で、敷居が低いのは分かるのですが、結構違和感ありそうな操作です。堀井氏も、「ヌンチャクでもよかったかも」と言っているように、ちょっと後悔は残るところみたいですね。下手すると、なまじ自由に動かなければいけない分、街での操作が苦痛になっている感じも受けます。

バイオハザード4Wiiをやっていると、ヌンチャク操作で移動し、リモコンをそこで振っても特にあまり影響はないんですよね。よっぽど大きく振ると別ですが。そうしたヌンチャクでの操作性も用意しておいてもよかったかもしれませんね。

誰でもクリアできる難易度

堀井氏といえば絶妙な難易度設定、といえるほどゲームバランスに気を遣う人な訳ですが、アクションゲームとなったDQSでもそうした「誰もが楽しめる難易度」設定に相当注力した模様です。その解決法として用意したのが「武器のランクアップ」と「レベルによるHP増加」というもの。ようするに、ドラクエRPG要素をそのまま持ってきた感じですね。下手でも、多少大目に戦闘し、お金や経験値をためれば難易度が下がっていくという、仮想的な上達感をアクションゲームにも持ってきた訳です。このあたり、毎回何百万とソフトを売ってきた堀井氏のポリシーが出ている感じですね。こうしたレベル要素がある以上、おそらく最初は多少手応えがある難易度に設定されているんじゃないですかね。

果たして、トータルの出来はいかに

個人的には、ドラクエ自体そこまで今は思い入れがありませんし、Wii体験会でのがっかり感が未だに強いので、特に購入する意志はありません。まあ、バイオハザード4のように評価がやたら高かったら話は別かもしれませんが。

とはいえ、DQSはとりあえずWiiでサードの有力タイトルがどの程度売れるのか、その指標にナルタイトルだとは思います。そして、堀井雄二氏が任天堂の提唱する新しい操作性にどの程度順応する力があるのかを見る機会でもあるでしょう。それは、DSで発売されるドラクエ9への評価にもつながってくるのではないかと思います。果たして、その出来やいかに。