苦境に立たされるPS3 〜 ますますサードは日和見モード

苦戦の続くPS3株主総会で今年度ソフトを大量に出すなどと景気のいい発言は出ていたものの、「ただしソースはソニー」ということもあり、市場での反響はそれほど大きな物ではありませんでした。そこに来て、今日日経新聞朝刊で報じられた以下のネタが、市場にも影響を及ぼしたようです。

ゲーム大手のSCE離れ進む・任天堂向けソフト逆転へ - NIKKEI NET:主要ニュース

上記ネット版では要約された内容ですが、以下の2ch転載サイトで日経朝刊のスキャン画像が載っていますね。

痛いニュース(ノ∀`):スクエニ 「PS3のソフトはしばらく出さない」 コナミのMGS4はXbox360でも発売か

マルチ化の可能性について大手マスコミでもコメント

まあ、特にインパクトがあったのは上記記事タイトルにあるとおり、スクエニが「今年度PS3にソフトは出さない」というのと、コナミが「PS3用タイトルをMSに対応させることも検討中」というものですね。元々ソフト不足なPS3で、続々とタイトルがXbox360とのマルチ化などがされる中、最後の砦と思われていたのがFF13MGS4でした。ファミ通浜村通信も「FF13MGS4が出れば一気にPS3は売れる!」と決め文句のように繰り返していましたよね。

それが、今回日経という大手マスコミで、紙面でも結構なスペースを割かれた状態でマルチ化を匂わす発言をしたわけですから、さすがにインパクトはありますよね。他のマルチ化の状況、PS3の苦境、海外でのXbox360の売れ行き、HDゲームの開発費の高騰などの要因を考えると、こうしたマルチ化の流れは至極分かりやすいながれのため、噂としてはそこら中でされていましたが、日本国内ではXbox360は爆死状態だけに、噂だけではどうしても説得力に欠けるところがありました。ただ、こうしてマスコミに堂々と出てしまうと、それなりに説得力が出てきますよね。(まあ、日経自体、この手の株価を左右するネタを「飛ばし」で書いて、後で間違ってましたとかやらかすことが度々ある、人騒がせなメディアではありますが。)

時価総額で一時的にソニーを上回った任天堂

こうした状況と合わせて、もう一つ大きなネタとしてあったのは「任天堂ソニー時価総額を一時的に抜く」というところですね。1つのゲーム機メーカーが総合電機メーカーを軒並み時価総額で上回っているというのは、なんともすごいことです。

このネタに、ブルームバーグなんかはかなり辛辣なコメントを記事にしてますね。

任天堂の時価総額がソニーを逆転、ゲームの明暗背景−アジアへ期待も - Bloomberg.co.jp: 海外トップニュース

PS3ボトルネック」というのはかなり過激な表現です。あと、ソニーお得意の生産出荷についても、わざわざ「工場出荷」と別の言葉で言い換えたりしています。個人的にはむしろ「生産」と言い換えてしまった方が分かりやすい気もしますが。あと、言い換えるなら任天堂の「販売」もちゃんと店頭出荷(セルイン)だと分かる書き方をした方がいいかと。PS3の方は「実売はさらに少ない」とまで表現しているのですから。まあ、結局「経済アナリスト」なんてのはファミ通と同レベルという感じは否めませんけどね。むしろより「煽る」ことで売買を加速させ、手数料などを多く得ようという魂胆があるようにも見えますけど。(まあ、それもビジネスかもしれませんが。)

悪循環に陥ったPS3

しかし、今回のようなサードの様子見発言、タイトル数減少などの報道を見ると、PS3は完全に負の連鎖に陥ってしまっている印象ですね。「ハードが売れないからソフトを出さない→ソフトが出ないからハードが売れない→ハードが(ry」という感じです。HD化してゲーム開発費は高騰しているのに、前世代のPS2よりも多くの数を売らないといけないんですから、そりゃ厳しいですよね。しかも続編が中心で伸び幅があまり見られませんし。それよりはWiiで仕切り直しして新規タイトルで新規顧客獲得を狙う、Xbox360でより市場が広い海外へ打って出る、という戦略になるのは、無理もない気がします。

とはいえ、こうしたロンチ当時に抱えるソフト不足というのは、どうしてもゲームハードでは生じがちです。サードが無償でこうしたロンチを手伝ってくれる訳でもないですし、結局のところ任天堂が繰り返し主張していたように「ロンチは自社で引っ張る」ということが重要なんだと思います。このあたりは、ロンチが貧弱で苦しんだゲームキューブの教訓を、岩田社長が生かしている感じですね。失敗、苦境から学んだことが多いからこそ、Wiiのような目線を変えた戦略が取れたんでしょうね。

ソニーも、あまりにPS3ソニー全体の戦略製品としてとらえすぎた感があります。ゲームで成功するのは当たり前で、あとはいかにエレクトロニクス部門への波及効果を得るか、そうした「ゲーム成功前提」というビジネスモデルに、ちょっと油断があった感じは否めませんよね。DVDアプコン機能など、AV機能は非常に魅力的ではありますが、ゲーム機に比べたらAVマニア市場などニッチなものです。高級AVとゲームという、本来クロスしない顧客層に対して、PS3で両方の層が混ざり合うことを想定していたのだとは思いますが、現状ではまだ分かれたまま、どっちつかずな印象もします。

ファーストの力で浮上なるか?

とにかく、サードが様子見に入ってしまった以上、「サードが集まるPS」というこれまでの最大の強みが生かしにくい展開となってきました。こうなると、とにかく自社タイトルで支えていかないとダメですよね。時間はあまり残されていないと思うので、PS3の高い処理能力を活用し、しかも短期間で開発でき、なおかつ誰が見てもはっきり違いの分かるもの、それをSCEは開発しなければいけません。
上記のコメントは一見無理難題に見えますが、これと同様の課題を任天堂前社長・山内氏は退任の際に岩田氏に課し、それを実際にクリアすることでどん底の状態からはい上がってきた訳です(参考)。ハードができあがってしまっている分、さらに難しい問題とは思いますが、SCEにも底力を見せて頂きたいところですね。自分もWiiの画質にはあまり満足していないので、そのうちHDゲーム機を欲しいとは思っているのですが、そのとき選択肢がPS3になるのか、Xbox360なのか、はたまたWiiの次の機種なのか。引き続き動向をチェックしていきたいと思います。