昨年度ゲーム市場分析あれこれ

4月に入り早2週間。年度が替わったと言うこともあり、昨年度のゲーム市場についていろいろなところで分析記事が出ています。基本的にはどれもWiiPS3の倍以上売れているという状態をまず客観的に述べてから、それぞれのメディアがいろいろ主観を交えて分析している感じですね。今回はそれらをいくつか紹介し、コメントしてみたいと思います。

論調の根底でミスをしたフジサンケイ

まずは一部で一騒動起こしたFujiSankeiBussinessの記事から。

FujiSankei Business i. 総合/Wii、PS3に圧勝 エンターブレイン06年度末国内販売集計

最初記事で「ガンダム無双の出た週はPS3Wiiの本体台数売り上げを上回った」ととれる記述がされており、その後の論調も「ソフトさえ出ればPS3が巻き返す、Wiiはソフトが2本だけ」という感じが強すぎる記述となっており、任天堂ファンから一斉にバッシングされていましたね。なまじITmediaやCNET、Yahooニュースなどにすぐに配信されて転載された分、影響がそこそこ大きかった感じもします。

現在は該当の箇所が「その週のソフト販売数がPS3>>Wiiだった」という内容に微修正されていますが、全体の論調がそもそも「PS3でもいいソフトが出れば売れる」という根拠に基づいた記事だっただけに、この修正のせいでなんだか記事全体で一体何がいいたいのかよく分からない記事になってしまっています。

DSの流れと絡めて冷静に分析する毎日新聞

続いては毎日新聞に掲載されている分析です。
新型ゲーム機:Wii圧勝で任天堂“王座”奪還 「FF13」PS3巻き返しのカギに−ゲーム:MSN毎日インタラクティブ

同じ毎日新聞でも、まんたんWebなんかはかなりPSよりの、いかにもなゲーム記事がなることが多いのですが、上記の分析は結構冷静に分析しています。中心にDSでのユーザ拡大があり、Wiiはその流れにうまく乗れたこと、PS3は初期出荷の数量不足に加え、ハイビジョンテレビが無いと十分映像を楽しめないことなどに触れていますね。このあたりの感覚は自分の感覚とも近い感じで、冷静な分析だと思います。ただ、Wii側の懸念点はあまり上げておらず、PS3の巻き返しはいつ出るか分からないFF13次第と述べており、ちょっとPS3に絶望的な分析になってしまっているきらいはありますけど。

PS3の台数予想を外した言い訳に終始するファミ通

次は、今回の各所の分析でも情報元となっているエンターブレインの分析です。これは浜村通信自らがしゃべっている内容となっていますね。

エンターブレイン、浜村弘一社長が"ゲーム産業の現状と展望"を語る! / ファミ通.com

とにかく、この記事ではいい点、悪い点共にPS3に関する話題が多いですね。半分近くPS3がらみじゃないでしょうか?浜村氏は昨年、PS3について「一年後にWiiを追い抜く」など、かなり景気のいい予測をしていただけに、昨年度についてのPS3予想について大幅にはずれた点についての言い訳に終始している感じがあります。
ただ、その言い訳の一番の理由が「出荷数が少なかったこと」に集約してしまっているのが、なんだかなぁ、という感じはしますね。たしかに、初回にもっと台数をそろえておけば、PS3に夢を抱いていたそうにとにかくイメージだけで大量に売りさばくことはできたとは思いますが、すでに年末年始あたりから供給は需要を上回っていたわけで、「昨年度」の予想に対する言い訳としてはあまり適切に思えません。
結局現状の劣勢を招いている理由の一番はソフト不足でしょう。そして、開発の難しさなどがさらにそれに拍車を掛けている感じなわけです。その割に、浜村氏はあいかわらず「PS3の発売予定ソフトラインナップは充実しているから大丈夫!」と、これまでの論調を崩していないんですよね。もっとも、さすがに弱気になっていたのか、「Xbox360とのマルチばかりになるときびしい」という感想は述べていますが。

結局のところ、ファミ通は浜村氏の感情的なもの、これまでの人間関係にその論調まで大きく左右されている印象がしてしまいます。なんだかんだ言ってPS中心なんですよね。まあ、PS陣営のサードメーカーがファミ通の大手広告主であることを考えればしょうがないところはあるのですが、なまじエンターブレインは各種マスコミなどに、普遍的な位置づけのゲームマスコミとして扱われているだけに、あまり会社としての主観や付き合いを表に出さない情報提供を願いたいものです。

グラフ付きで分かりやすいGpara

最後はGparaの記事。こちらはグラフ付きで見やすい記事になっています。
ほんとにWiiは好調か?PS3とWiiの本体販売台数を比較した!/ゲーム情報ポータル:ジーパラドットコム

論調としては、PS3に対しては強い駄目出し、Wiiもソフトの売り上げに偏りがあることを触れて苦言を述べるなど、双方に辛口なコメントを入れていますね。結論的には両方ともソフト次第、という感じでしょうか。実際の週間売り上げ台数の変遷や、ソフト売り上げ一覧表などの数値に基づいて話をしているだけに、説得力がある内容です。

ただ、ちょっと極論を言いすぎているきらいはありますね。特に、PS3Wii双方が持っているオンラインコンテンツについての考察が抜けているように思います。PS3はトロステや各種体験版でネタは提供していましたし、Wiiもソフト不足な中でも、継続的にチャンネルを追加したりして、ネットにつないでいるユーザは熱が冷め切るというほどではないように思いますので。

とりあえず夏商戦までの流れに注目

以上、各社の分析記事を見てきましたが、各々の裏に見え隠れする本音、偏見などが分析記事に現れており、それぞれの立ち位置が知ることができてなかなか楽しいですね。同じ数字を用いてもいろいろな物の見方があるんだなぁ、と。

現状はWiiが圧勝、PS3苦戦というのは確かでしょうが、今後の展開はまだ読めないところがあります。最近になって続々と夏発売ぐらいまでのソフトの発売日が決まってきていますので、これらタイトルがどういった売り上げを記録していくのかで、ある程度この先の流れを予測できるかも知れませんね。