任天堂独走時代のゲームマスコミの方向性について

年末年始のゲーム商戦はDSが圧勝、次世代機戦争はWii優位に終わったわけですが、これを受けてかマスコミの報道もだいぶ雰囲気が変わっています。今回は、ゲーム総合誌であるファミ通と専門誌であるニンテンドードリームで、面白い傾向が見られたのでちょっと取り上げてみたいと思います。

Wiiへのすり寄りを見せるファミ通

DSの圧勝ゲームマスコミ最大手のファミ通も、一時期は明らかに過剰にPS陣営を持ち上げていたのですが、ここのところ大きく任天堂の特集を組むなど、任天堂側へのすりよりとも見える傾向が見て取れます。元々、ファミ通はサードの広告費、攻略記事・攻略本をメインに稼いでいただけに、多くのサードがDSにシフトした現状では、任天堂の方を向かずに商売はできないのでしょうね。もっとも、これまで総合誌なのにDSが爆発的ヒットして移行も一向に任天堂側の情報をあまり取り上げていなかった方が編なのですけど。

先週のファミ通でも、今頃になってWiiの大特集。本体の解説から必要なもの、さらにロンチソフトの詳細記事などを大々的に組んでいました。年末年始の商戦が終わった今頃、なんで?と思えるような気持ち悪いぐらいのもちあげっぷりですね。

これまで、ランキングのコメントでちょくちょくPSPを過剰に持ち上げたり、グラフを豪快に省略したり、それまで30位まででのハードシェアのグラフを任天堂が独占的になったら急に総数率に変えたり、さらには浜村通信の数々の問題発言と、いろいろやってきた過去を知っているだけに、最近のこうした姿勢は見ていて非常に気持ち悪いものがありますね。

ちなみに、この手の裏の話は以下のところが詳しいので、ご参考までに。
ファミ通捏造まとめ

Wiiに対して苦言を述べるニンドリ

一方、20日に発売された、任天堂の苦しいときもずっと専門誌としてやってきたニンドリことNintendoDREAM。こっちはWii関連の特集をするのは当然なのですが、一方でいくつか鋭い指摘もしていたりします。

1つは、毎回鋭い指摘や解説、毒舌を吐いている『デス仙人の教えてあげるR』(P122)。このコーナーの以下の質疑応答がなかなか辛辣です。

Q うちにはパソコンがないのでWiiでネットデビューしたいのですが、パソコンと比べても遜色なくネット生活を楽しむことができますか?
A 試用版のブラウザを使ってみたが、日常的には使いたくない感じじゃったのう…。試用版だから、というのもあるじゃろうが、ちゃんと表示できないサイトも多かった。何より、パソコンに慣れきった身からすると、操作法には我慢できないところが多いな。ホームページを作ったり、マルチメディアを楽しんだりと、本格的にネットを楽しみたいなら、パソコンのほうがええよ。初めてのネット体験や、「答えはWebで」の答えをチラッと見るような使い方には、悪くないツールだとは思うがの。

なかなか厳しいコメントですが、質問文が「PCの代わりに遜色なく」とか言っているので、実に正直ベースなコメントで好感持てます。自分もいろいろレビューはしましたが、正直「常用」するには無理がありましたからね。パソコンとリビングが離れており、リビングでネットをチェックしたいとかには便利だとは思いますが、メインで使うものでは無いと思うので。でも、雑誌でここまで言い切れるのは流石デス仙人かと。


また、そのほかにも『ニンドリスクランブル』(P150)の「記者の目」でも、苦言というか懸念が書かれています。

Wiiはどうなったのか?現状では、70万本を突破した『WiiSports』がけん引役となっているが、それ目的でハードを購入した人たちをさらに満足させる「次の一手」が現状のところ見えてこないのが気になるところだ。ゲームの枠を越えて「社会的ブーム」となりつつあるWiiだけに、早く次の一手が欲しい。

これは、自分が以前からよく言っている視点と非常によく似ていますね。こうした、現状に満足せずさらなる施策を求めて苦言を述べるのが、本当の熱心なファンでしょうね。年末年始の売り上げだけ見て「Wiiを選んだ自分は勝ち組」とか思っている人がいるなら、それはちょっとファン像からはずれているかな、と思います。
まあ、もっともこの記事はその後ヘルスパックに触れ、自分の考えを「岩田さん、宮本さんが考えているから、杞憂にすぎないんだろうけど」としており、この辺も自分がよく使う論調で思わず苦笑してしまったのですがw。

ちなみに、今月のニンドリはデス仙人のコーナーでは加速度センサの分かりやすい図解付き説明が、またWiiリモコンを使ったPC応用も、Bluetoothでの接続からWiinRemoteを使っての利用まで説明したりしてます。自分も以前のエントリ(Wiiリモコンを用いたPC操作 〜 WiinRemoteレビュー)で紹介しましたが、こちらは雑誌形式で見やすいのでおすすめです。

任天堂独走の現在、今後のゲーム雑誌の行方やいかに

以上、自分が普段見ているファミ通ニンドリに限って紹介しましたが、雑誌ごとのポリシーの違いが見えて面白いですね。ファミ通の場合、総合誌であるが故に、下手に何かを批判すると、「敵対勢力からの圧力があったのでは?!」と叩かれてしまうため、どうしても八方美人敵になってしまうのは分かります。その結果、どうしても中身が薄っぺらのカタログ的なものばかりになってしまったり、無理にどこかの情報を重視しようとすると、情報量の偏りなどの歪みが目に見えて分かってしまい、みっともないことになってしまうのでしょう。
一方専門誌の場合、決定的なこととして、他の機種の情報がほぼ無く、閉鎖的なイメージがあります。読者コーナーの充実なども、ずっと愛読している人にはいいのですが、他機種ユーザとかから見ると排他的なイメージを持ってしまったり、引かれたりすることも、おそらくあるのではないでしょうか。これは専門誌の宿命だとは思いますが。

ただ、任天堂がDSだけでなくWiiでも優勢になってしまった現在、こうした総合誌と専門誌の立場もなかなか微妙になってくるかもしれません。任天堂の専門誌でも、ソフトの売り上げ支配率を見れば十分な影響力があるんですよね。そうなったとき、八方美人でカタログ的総合誌と、コアでべったりな専門誌、どっちが選ばれるのか、興味深いものがあります。ゲーム業界の行く末だけでなく、ゲームマスコミ関連の動きも注目して見ていきたいですね。