DSとPSPの現状を直視できない人たち

世の中的には値下げしたPS3と漠然としたイメージのWii、そしてソフトがそろってきたXbox360のどれが次世代の覇権を握るかで盛り上がっており、ちょっと前まで話題の中心だった携帯ゲームがちょっと忘れられた感じなっています。とはいえ、現状ゲーム界の王者はDS。PSPに圧倒的な差をつけ、PSPの存在はPS3の陰にすっかり隠れてしまった印象です。
しかし、アメリカのSCEでは、ずいぶんと認識が違うようで、engadgetで面白い記事が挙げられています。
ソニー「任天堂はユーザを失っている。ゲーム人口を拡大するのはPSP」 - Engadget Japanese
「DSはGBAと同じ客層。新規に客層をとりこめていない」、「PSPは据置でPSがしたのと同じで、客層を大いに拡大している」と、まるで2年前にタイムスリップしたかのような発言。これがSCEAのコーポレートエグゼクティブというお偉いさん、ジャック・トレットン氏のコメントらしいというのですから、あきれますね。まあ、SCEA社長があの「リィィィィジレィスァァァ」で有名な平井氏ですからね。おめでたい会社なんでしょう。これに対してengadgetでは相変わらず徹底した褒め殺しw。見た目は一応ほめているので、つっこむ方もつっこみづらく、うまい批判の仕方ですよねw。
とはいえ、今回の発言はPSPが比較的好調でDSといい勝負しているアメリカだったら、まだ自ら陣営を鼓舞するという意味で分からないでもありません。ところが、日本でもなぜかほとんど同じような論調を口にする日本人クリエーターがいたりするから驚きです。
【東京ゲームショウ2006】今回の「次世代機W杯」開催地は北米,日本メーカーはAwayで勝てるか?---現役プロデューサがディスカッション:ITpro
この記事で持論を語っているカプコンの竹内潤氏の以下のコメント。

任天堂の『DS』でライト・ユーザーが流入したから日本市場は縮小していない,といった主張を聞くことがある。サード・パーティの現状を見ていない主張だ。DS用ゲームは,ファースト・パーティである任天堂のタイトルしか売れていない。100万本出たサード・パーティ製DS用ゲームは『たまごっち』だけ。DSでサード・パーティのヒットは出ていない」(竹内氏)。

鬼武者3、バイオハザード5、そしてロストプラネットのプロデューサーだからか知りませんが、DSに対する現状認識が非常に偏見に満ちた、2chの信者レベルなのがすごいですね。一体、竹内氏のヒットの基準はいくつなのか。まさかミリオンが基準とか言ってませんよね?以下のサイトを見ても、15万本を越えているソフトだけで6本のサードソフトが存在してます。
データで見ミるDSとPSP
そもそも、自社カプコン逆転裁判1リメイクでも10万本です。これらはヒットじゃないってことですかね。いやー、ハードルが高いものです。是非ともロストプラネットでは逆転裁判を10万本をはるかに越える売り上げでカプコン的「ヒット」を実現してほしいものですね。


それ以外の発言も、やたらと「舶来嗜好」が目につきますよね。全般的に、「日本でなくて北米で認められなくてはだめ!」という主張。これは、発熱地帯さんのところで主張されていた「日本人はもっと自分の感覚に自信を持っていい」というものとは、真っ向から対立するものです。
たしかに、北米はゲーム市場として巨大ですし、アメリカの影響力は強大ではあります。ただ、個人的に世界のニュースが好きでいろいろ見ていて思うことには、「アメリカが世界標準」なんではなく「アメリカが特殊」ってことなんですよね。戦争関連でもそうですが、明らかに世界的に見てアメリカって浮いてます。国民の感性も、かなり大味で特殊です。世界最強国であり、日本はとくに強く影響を受けている国ですから米国至上主義に走りがちですけど、実はアメリカが何でも最高という訳ではないんですよね。欧州なんかは微妙なわびさびなどが分かるなど、結構日本人に近い感覚持っていたりしますし。そこに目がいかず、「アメリカが世界だ」と叫んでいるのを見るのは、ちょっと滑稽な感じがしますね。

基本的に、世の中の常識として「感情的、攻撃的な発言をしている人は実は追いつめられているから」というのがあります。不利な立場にいる、理屈だけでは巻き返せない状況に陥ると、人間はそれを補うために攻撃的になってしまうんですよね。今回のSCEAのお偉いさんの発言と言い、ロストプラネットの竹内氏と言い、どうも似たような雰囲気を感じます。自らの注力するものが不利な状況だからと焦って攻撃的で過激な発言に出たのでは、聞いている側に反感を抱かせてしまい、耳を傾けてもらえないでしょう。自分たちの考えを広く聞いて欲しいのならば、テンぱらずに理路整然と繰り返し説明することが、なんだかんだ言って正攻法に感じますね。