ぶつ森的広がりのある「似顔絵チャンネル」

東京ゲームショーの価格値下げ以来PS3の話題が大勢を占めていましたが、ちょうどWiiインタビューが更新されたので、Wiiの話題に触れてみたいと思います。

WiiPreview以降、Wiiチャンネルについての連載がつづいており、今回から各チャンネルの説明となっています。第4回のテーマは「似顔絵チャンネル」。
第4回 「世界中のMiiが交流するという野望を持っています。」 - 社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.3 Wii チャンネル編
似顔絵チャンネルは、Wiiの中の特徴的な要素「Mii」の中心を占める機能です。このチャンネル、このインタビューによれば実はニンテンドーDS用の企画として動いていたものをWiiに持ってきたようです。ちなみに、Wii側のディレクターは、おいでよ どうぶつの森のインタビューでもよく見かけた野上恒氏です。
この、DSで動いていた企画をWiiに移した経緯がまた面白いですね。

岩田
似顔絵チャンネル」みたいなことをしたいんだという話を、私は宮本さんからずっと聞かされていましたからね。
そんなときにニンテンドーDSの試作品としてキャラクターの顔をエディットするソフトを知って、ひょっとしたら宮本さんが求めているのはこういうものなんじゃないか? と思ったんです。
それで、宮本さんのところに持っていって見せてみたら、いい反応だったものですから、じゃあ作ってみようと。
それで、DSでそれを作っていたチームのスタッフを、野上さんのところに送り込む形でスタートしたんですよね。

岩田社長が宮本氏の理想とするものを常に聞いており、このDS用似顔絵ソフトを社長が宮本氏より先に見て、「宮本さんが求めているのはこれかな?」と思って宮本氏に持って行く。そして、好評と見るや社長権限でチームをDSからWiiに移行。自らがパイプ役になりながら、最後はトップダウンという、大きな会社では珍しいほど柔軟な立ち回りをしていますよね。社長業でありながら、こうした現場に近い場所での細かいマネージメントができるのは、やはり岩田氏自身が優秀な開発者であったことも大きいでしょう。クリエーターとして優秀な宮本氏と岩田氏が、相互に補完し合いながら全体を見て開発している、だからWiiには一本筋がとおった息づかいが感じられるんでしょうね。どこぞの、5年後、10年後の構想ですらない妄想を未だに垂れ流しているところとは大きく違うところです。この似顔絵チャンネルも、2ヶ月あまりでDSからWiiへ移行したということですから、発売時期などを意識した現実的な開発だったことも伺えます。E3ではすでにWiiSports内にMiiは登場してましたから、実際に開発したのは今年に入ってから、というところなんでしょうかね?


似顔チャンネルの操作性などは、WiiPreview後に公開されたWiiチャンネルのページで確認することができます。
Wii.com JP - 似顔絵チャンネル
今回のインタビューで面白かったのは、この似顔チャンネルとWiiConnect24の機能を連動させた「似顔絵パレード」という遊びですね。

野上
簡単にいうと、「似顔絵パレード」は、いろんな人の作ったMiiがネットを介して行き交う仕組みです。
まず、作ったMiiを並べておくことができる、「似顔絵広場」というものがあるんですが、はじめは、自分の作ったMiiしかいないんですね。
でも、時間が経つと、「WiiConect24」の仕組みを使って、「誰かのMii」がそこに遊びに来るんです。
同じように「自分のMii」も誰かのWiiに登場する可能性がありますが、ユーザーの許可なく勝手にそうなってしまうことはありません。
Miiを作ったときに、それをネット上で行き来させるかどうか選択することができますので、そこでユーザーが許可したMiiだけが誰かのWiiに登場することになります。


岩田
世界のどこかからMiiがやってくることもあるんですよね。


野上
はい。まったくのランダムで行き来します。あ、行き来といっても、自分のWiiからいなくなるわけではありません。

いやー、面白そうですね。この機能を見てふとおもいうかんだのが、おいでよ どうぶつの森Wi-Fi通信を使った時に生じる、服のデザインや星座、みしらぬネコの伝搬です。あれも、単にWi-Fiでつないだだけで、直接訪問した村以外?からも、いろいろな人がデザインした服、星座、ネコの顔が流れてきます。それらのデザインなどは、村人の会話などでもとりあげられ、何もしていないのにMMO的な世界の広がり、他人の存在の暖かさを感じることができるんですよね。
似顔絵パレードは、それの拡張版のように感じます。ぶつ森のディレクターである野上氏がディレクターをしていると言うところにも関連があるんでしょうね。しかも今回は1つのゲームでなくWiiの標準機能。伝搬するデザインの有無を選択できるだけでなく、なんと世界中の人が作ったMiiが交流するというのだからわくわくしますね。これがあるから、WiiPreviewの講演で岩田社長が紹介したときにも、非常にたくさんのMiiが広場に存在し、ピクミン風に整列させたりして遊ぶことができたんですね。WiiPreviewの質疑応答では、「WiiミクシィみたいなMiiを使ったコミュニケーションを提供したい」と言った返答もありましたので、似顔絵パレードで集まったMiiを使ったもっとたくさんの企画もおそらく考えられているんでしょうね。サードメーカーもソフト側で対応すれば使えると言うことですから、これだけでもまた一つの新しいゲームの可能性の模索が可能になったように思えます。
Wii版『ゼルダ』のリンクは右利き!岩田・宮本氏一問一答/ゲーム情報ポータル:ジーパラドットコム


画質、値下げというセンセーションな話題でインパクトの強いPS3ですが、Wiiの場合はこうしたインタビューで発表される一つ一つの内容に、読んでいてにやりとさせられる、細かくそして斬新な工夫がちりばめられていて、非常に面白いですね。それに、それぞれに目的が明確にされており、アプローチも実際に現実的に、目に見える形でアプローチしています。イノベーションやらサーバーセントリックやら、横文字使ったアピールにはたしかに一見すごそうには聞こえるのですが、具体論がなければ実際には何も言っていないのに等しい状態。消費者も、そんなキーワード的な言葉だけで3万も5万もぽんとだせるほどバカじゃないと思います。Wiiにしても、こうしたインタビュー記事は楽しいですが、やはり感覚的、フィーリング的な要素が大きいだけに、消費者に実体験として理解してもらう努力は重要でしょう。(Wiiチャンネルの動画なんかはうまくやっている印象ですが。)できるだけ多くWiiを体感できる機会とサプライズ要素を見せて欲しいところです。
ロンチまであと2ヶ月。両陣営共、具体性を持った消費者へのアピールが非常に重要になってくると思いますね。