Elebits開発者インタビューから見る、Wiiの明と暗

任天堂のソフトと海外パブリッシャーのRed Steelぐらいしか注目されるものの無かったWiiのソフト群の中で、国内サード作品では一番気概を感じる注目作が、コナミElebits。そのインタビュー記事が、各種メディアで一斉に出てきました。

コナミ、Wii用ソフト「Elebits」プレイリポート&開発者インタビュー - GAMEWatch
Elebits(仮題) - / ファミ通.com
ITmedia +D Games:Wiiがなければ生まれなかった、人間と妖精の不思議な共生――「Elebits(仮)」 (1/2)

おそらく、コナミの方から取材受付の日を設定したのでしょうね。このうち、ファミ通の記事はすでに誌上に載っていたので読んだ人も多いでしょう。個人的にはGAMEWatchの記事が一番Wiiそのものにまで掘り下げて質問していて、よいインタビューになっていると思います。以下に、これらの記事から読み取れるポジティブな要素とネガティブな要素をあげてコメントしてみたいと思います。


○ポジティブ要素
インタビューの中から読み取れるポジティブな要素は、以下のような点でしょうか。

  • 開発チーム全体のモチベーションが高い。
  • 任天堂のサポートもよく開発しやすい
  • Wiiでなければ出来ないゲームが作れる
  • 膝に手を置いた楽な姿勢でプレイ可能.。
  • ハードな動きにもソフトな動きにもどっちでもいけるコントローラ。
  • 重力や加速度を検知をしてどっちが地面かということも認識可能
  • 物理演算を組み込んでいる。

とくにインタビューから「作っていて楽しい」と感じるポジティブなオーラがいいですね。動きの認識が手探りながらも、開発していくうちにいろいろ遊び要素が生まれているのもおもしろいです。開発陣が、鍋ににんじんやジャガイモなんかを放り込んでカレーつくったりしているのが、非常に楽しそうです。開発機器も安く、任天堂の支援もあるようで、単純な技術的な難易度が低いのもいいですね。Wiiリモコンを使った動作の認識は難しそうですが、それをどう解決するかを考えるそのプロセスも楽しんでいるように思えます。クリエイティブな作業ですからね。こうした取り組みの中、Wiiでしかできないゲームが多く生まれてくるようだと、Wiiの強みになるかもしれません。現状では、向峠の話にあるように単にこれまでのゲームをWiiコントローラで操作しているだけ、と言うものが多いようですし。(個人的にはゼルダもその一つなんだと思っていますが。)

また、実際にポインティングを主体とし、大きな動きが無くても楽しめる具体的なソフト、ということでも大きいですね。宮本氏も言ってましたが、大きく動かすのは「その方が楽しいから」動かすのであって、別に小さな動きで操作することも可能でしょうしね。両手で持つホールド感、安定感はないかもしれませんが、逆に右手、左手を膝の上などにだらっとおいて遊べるのも、結構楽かも知れません。今後体験会では、座って試遊出来る機会も設けてほしいですね。その他にも、地面の方向を認知するとか、Wiiリモコンから得られる情報からいろいろなことが推定できるというのも面白いところです。

そのほかでは、処理性能が一番低いWiiが、いち早く物理演算を組み込んで来たのも、ある意味ではポジティブな要素です。性能的に厳しいところもあるようですが、やってやれないことはない、ということをまず初期のソフトが示せるのは大きいでしょう。逆にせっかく性能のあるPS3などが物理演算のないゲームばかり出たりすると、本体の性能差よりも結局はソフトの作り込み次第なんだ、という認識が生まれるかも知れませんし。


○ネガティブ要素
一方で、記事を読んでいたりスナップショットの絵を見ていると、ネガティブな要素もいくつかあります。

  • 物理演算をやるとCPUパワーが不足気味。60fpsできるかどうかギリギリ。
  • HDTVなのに画面が4:3
  • グラフィックにジャギが目立つ
  • ジェスチャ認識の調整が大変

まず、物理演算を組み込んだところ、フレームレートを60fpsにするのが大変だ、と言うコメント。これは、すでに現時点でWiiの性能限界を感じてしまっている、ということで、ネガティブ要素ともなります。物理演算自体がそれほどゲーム性に大きく影響はしない、というのが岩田社長などの主張っぽいですが、そうはいってもすでにPCや他のPS3などではCPUパワーもあるため物理演算をガンガンつかってくるわけです。すると、クリエーターの方でも物理演算を当たり前のように使ってくる人が出てくるでしょう。そうしたときに、Wiiだけ物理演算が容易に使えないようだと、開発のしやすさという点ではデメリットになるかもしれません。もっとも、物理演算が本当にそこまでクリティカルになるかは疑問ですが。(個人的にはPS3やPCゲームで物理演算をしているものですら、まだ不自然さを感じてしまいますね。リアルにすればリアルにするほど、微妙な「本物」との違いが気になってくるものです。)

また、プレイ中の画面が、わざわざ16:9のHDTVを使いながら画面は4:3だというのが印象よくないです。自分もすでにHDTVを持っているだけに、解像度はSDでもいいから16:9だけは絶対対応してほしいところですね。画面比率が変わるとゲームバランスも変わってきて大変かもしれませんが、SDTVからHDTVへの過渡期である今だからこそ、すべてのゲームで両対応してほしいものです。(E3での展示では16:9だったので、おそらく大丈夫だとは思いますが…)

あと、やっぱり画面は正直ジャギジャギでたいしたことない印象。照明関係は多少リアルさがましている感じではありますが、とにかく画面が大きくなるとジャギが気になります。PS2でも、このジャギがどうしても自分は気になる方なので、なんとかしてほしいですね。インタビューでは、まだグラフィックに余裕がある、と言っていますので、なんとかアンチエイリアス処理をかけていただきたいものです。ジャギジャギの状態でグラフィックの質をあげるなら、のっぺりしていてもいいのでジャギを消してほしい、というのが自分の好みです。

そして、最後はジェスチャの認識ですね。この点は、やはり現時点で任天堂とのノウハウの差を大きく感じているようです。とくに、プレイする人によって異なる動きの大きさや方法を吸収するのに苦労しているようですね。現在は、動きの大きさなどをヒューリスティックにパラメータ調整している、という感じみたいですが、本質的にはこうした動きの認識はもっとモデル化し、ライブラリとして構築していくべきでしょう。また、個人差の吸収のためにも、学習アルゴリズムを利用して、パーソナライズをはかる方がより好ましいと思います(このあたりは以前の「任天堂が挑むべき課題」でも一度述べています。)。ゲームが3D化した際には、大学でCGを研究していた学生がゲーム会社で力を発揮しましたが、これからは大学でこうした高度なヒューマンインタフェースの知識を学んだ人が、Wiiでの開発の中核として活躍する日が来るのかも知れません。3DゲームにおけるUnrealEngineのように、ジェスチャ認識だけを高度に構築し、ライブラリとして外販するベンチャー企業が出てくる可能性も大いにあると、自分は思います。


○まとめ
ポジティブ要素、ネガティブ要素を両方あげてみましたが、現状ではたしかに両方の視点から見て取れると思います。あとは、このネガティブ要素をどの程度デモや体験会などで払拭していけるか、ですね。Elebits自体は、自分的には「塊魂的なピクミン」という感じですが、悪い印象はあまりしません。ロンチでそろってきたら、ゲーマーには注目されるタイトルな気もしますね。やりこみ要素も作ってくるということですし。
最近あまりにぐだぐだなサードが目立つ中、珍しくクリエイティブな作品だけに、是非とも消費者の満足する作品に仕上げていただきたいモノです。