「Wiiはね、次世代機じゃないんです」〜宮本茂氏が語る、Wiiの魅力〜 - ファミ通インタビュー

今週のファミ通で、宮本茂氏のインタビューが載っており、Wiiについていろいろコメントしています。Wiiについての哲学や、興味深いコメントも出ているので、ざっと要約してみたいと思います。

  • 「ちょっと見がおもしろそう」、「遊んでいる人が楽しそうに見える」、ということはすごく大事。遊んでいる人がマヌケに見えたらイヤだなという不安があったが、E3では楽しそうに見えてよかった。
  • Wiiについては経営者も素直にふれてくれるケースが多い。「おもしろいから作ろうよ!」という単純な理由から企画が生まれた方が健全。「飽きられないか」というのはあとで考えればいいこと。まず”おもしろい”から始まらないと。
  • Wiiは「DSと同コンセプトの"据え置き型"」。しかし、それだと「DSでいいじゃないか」、ということになり、『据え置き型ハードの意義』を激しく議論した。その結果が、「”みんなで囲める”ということが最大の魅力」だということ。みんなで使えるのがDSとの最大の違い。
  • 「毎日電源を入れてもらえるハード」がテーマ。DSと違って持ち運んでもらえないから、TVと同じように毎日使われるものにしたかった。そのためにはソフトが重要で、その一つがWiiSports。ゼルダのようなゲームももちろん作るけど、このコンセプトとは違うもの。
  • DSにピクトチャットを入れたように、Wiiでもハードを買ったときからみんなが同じ条件の環境を持っていることは非常に重要。
  • Wiiにはフラッシュメモリを搭載しているから後からバージョンアップもできる。しかし、なるべき全部最初に入れてしまおう、ということになった。
  • 我々は次世代機競争はしていない。本来競争しているのは、お客さんの興味。
  • 新世代機、って言ってもいいけど、なんか古くさくない(笑)?
  • アンケートで好評なのはありがたいが、そのアンケートには”どれもいらない”という選択肢がなかった。自分たちはこの"どれもいらない"と戦っている。
  • 本体価格が高いと、一般人も手を出しづらいものがある。ものすごい表現能力もいいが、今行き詰まっているのは表現能力の問題じゃないから。
  • Wiiのコントローラは苦労ばかり。ボタン数は、未だに議論しているぐらい。
  • Wiiの成功点は、家族の全員に触ってもらうこと。家族みんなが毎日見たり触ったりすることが楽しくて仕方ない機械になったらいいなと思う。ファミコンのときみたいに。


こうしてみると、やはりアプローチの仕方が論理的だし、それにたいするビジョンも明確だな、と感じますね。「かもしれない」「みんなこう思っている」「Appleみたいなもの」とか、たとえと空想ばかりのあの人とは大違いですね。
とくに、宮本氏の発言でよかったのは、「競争しているのは、お客さんの興味」というところと、「”どれもいらない”と戦っている」というところ。これは、自分が先日述べた「任天堂が挑むべき課題」の中の「移ろいやすい浮動層」に対する明確な危機意識ですよね。自分たちが対象とし、DSで取り込んだユーザーがどういった性質を持っているのか、非常によく分析できており、それに対しての努力を怠っていない、ということでしょう。その結果は、Wiiの売れ行きで判断することになると思いますが、少なくともアプローチの仕方に明確な意志があることは非常に好感が持てます。


そのほかは、Wiiそのものの機能について。とくに引っかかるのは、ピクトチャットを例に挙げて、「ハードを買ったときからみんなが同じ環境であることが重要」というところ。ピクトチャットというコミュニケーションツールとWiiConnect24などの特性を考えると、どうしても思いつくのは「IP電話」になってしまいますね。これまでもWiiリモコンにマイクがつくのでは、と何度も噂になっていますが、この宮本氏の発言を読んでしまうとよりいっそう勘ぐりたくなってしまいます。まあ、IP電話でなくても、Wi-Fi対応ピクトチャットみたいな、何らかの共通コミュニケーションツールはありそうですね。この辺のキーとなるサービスを、最初に全部入れてしまおうという意志が、これまたどこぞの会社とは意気込みの違うところです。
他にも、Wiiコントローラのボタン数が未だに確定じゃないというのもちょっと驚き。これが決定しないと、いつまでたってもクラブニンテンドーのプラチナ特典、Wiiリモコン型TVリモコンがもらえないんですけどw。ボタン数を増やすのか、減らすのか。先日情報が出た数々の意匠登録にもヒントが隠されているんでしょうかね?(参考:Wiiコントローラのプロトタイプ画像?


そのほかにも、「プレイしているところがマヌケに見えてほしくない」とか、「家族全員に毎日触ってもらえるのが夢」とかいうコメントは、非常に健全な感じがしますよね。自分なんかが想像するとWiiコントローラの操作は結構マヌケに思えてはしまうのですが、考えてみれば一人プレイならまわりを気にしなくてもいいし、多人数プレイならわいわいやれるので問題がないのでしょう。(でも、ミヤホン自身気になっていたのはたしかみたいですが。)

他にも、細かい引っかかる表現はありますけどね。「ゼルダWiiのコンセプトとは違っている」、という発言も、Wiiのためにのばしにのばしておいてこの発言はGCユーザがちょっとむっと来そうかな、と思いました。「だったらGCでさっさと出しておけよ!」とつっこまれそう。あと、「長持ちしないんじゃない?」という質問の答えが「まずおもしろいと思えることが重要」というものだけで、長持ちさせかたは後から考える、みたいな感じなのもちょっと気になるところです。それじゃ、やっぱ飽きやすいってことなんじゃ?と。まあ、ここでは「まずおもしろい」を言いたかっただけで、ちゃんと長持ちの方もいろいろ考えているとは思いますけど。できればちゃんと語ってほしかったかな。あと、「新世代機」と言う言葉も、前にミヤホンが言ったために任天堂ファンは好んで使っていたのですが、今更「古くさくない?」と照れ隠しを言われても困りますw。照れずに堂々と新世代機と言い続けてもらわないとw。


ともかく、インタビュー全体から伝わってくるのは、「以下に客を楽しませるか」ということに全力を注いでいる点。その結果として、実はネットワークとかの利用法はPS3とかよりずっと先を走っていきそうな感じがします。まず本体がありきで、それからソフトを考えたのがPS3。先に使い方ありきで、それからマシンを設計したのがWii。それが如実に表れている感じですね。Wiiは、PS3よりもずっと豊かで具体的な「デジタルエンタテインメント」を提供してくれそうな予感がします。
それに、ゲーム対する愛情があふれているのも、ゲームを主体としてみている自分たちとしては非常に好印象です。以下のコラムで、「任天堂手塚治虫的」と書かれていましたけど、本当にそんな感じがしますね。TVゲームのパイオニアであり、ゲームを愛していて努力を惜しまないところなんかがとくに。
ポップ・コラム [No.0347] GC『メイドインワリオ』レビュー

Wiiについては、今回のインタビューでもあるように、まだ秘密はいろいろ隠されているようなので、こうやって小出しにされる情報を日々楽しみに待ちたいと思います。