任天堂岩田社長の語る、Wii・DSの今後の展望

任天堂の経営方針説明会について。こちらは、すでに岩田社長がことあるごとにビジョンを論理的に語ってくれているので、自分が特別補足する内容はあまりないですね。E3での内容と加えて、最近のDSの好調、ポケモンの展開、Wiiの展開について語った感じです。全体を要約したものは以下のinsideの記事で書かれています。
任天堂が経営方針説明会を本日開催、WiiとDSがポケモンで連動(4) - Nintendo iNSIDE
また、説明会の動画+スライドも、HP上で公開されています。1時間30分もありますので、自分も全部を見たわけではありませんが、時間のある方はこちらもご覧になってみてください。
任天堂株式会社 経営方針説明会
特に、この動画では岩田社長の言葉が直接確認できます。以下の夕刊フジBLOGでは岩田社長の言葉として刺激的な言葉が並んでいますが、これらの言葉だけがすべてではありません。講演の中では「もちろん、この考えが正しいかどうかを判断するのはお客様です」など、フォローする発言を実際にはしていますので。
任天堂経営方針説明会、「ゲームのことだけ考えている人なんて、世の中にはほとんどいない」 - 夕刊フジBLOG
特に、誤解を招きやすそうな「ゲーム機は邪魔なもの」 という言葉について。この部分を、実際の講演ではどう話していたかを、以下に書き下しておきます(講演1:05:28〜1:08:10あたり)。

ここ(スライド)に、「邪魔にならない」と書きましたが、邪魔って言う表現を、ゲーム機を作っている社長の発言としてするのはふさわしくないかもしれませんが、現実に、今のゲーム機を邪魔だと感じてる方がたくさんいらっしゃると、私は認識しています。
また、それを前提に考えないとゲーム人口は広がっていかないと思います。
今のゲーム人口というのは、「ゲーム機は邪魔無い」、「自分はこれで受け入れる」という方だけがお客様なんです。ゲーム機が邪魔だと感じてらっしゃるかもしれない方にも、「こんな形ならいかがですか」ということで、認めていただけないと。
もう、大きくてうるさくてケーブルがぐちゃぐちゃしているだけで、もう一台もこんなものはいらない、というふうに考えてらっしゃる、とくに家庭のお母さんって、たくさんいらっしゃると思うんですね。

このように、実際の言葉の方がより意図が伝わってくるように思います。とかく夕刊フジBLOGなど大衆マスコミ関連は、刺激的な発言にコメントをまとめる癖がついていますので、こうしたところの情報を参考にするときは十分注意が必要でしょう。ちなみにこれ以外の箇所も、岩田社長が手元の原稿を見ず語っているところは、どれも印象的で感覚的にわかりやすいコメントが多いです。


Wiiについて
さて、本題の説明会の内容について。まずはWiiについてから。E3ではあくまで海外での展示会だったわけで、これが初の国内披露会に当たるわけですね。
Wiiの発売日、価格の発表は9月。WiiとDSの連動は『ポケモン』から / ファミ通.com
基本的にはこれまでの主張通りですが、個人的にいいなとおもった台詞が以下のもの。

 「私だって技術者の端くれ。キレイな画面は非常に魅力に感じます。でもそれを実現しようとすると、ハードのサイズが大きくなり、ファンはうるさくまわり、ソフトの開発費は高騰し、すべての商品が大作化していく。Wii Connect24のようなサービスも展開できない。要はバランスが大事だと思っています。最新技術をどこに投入するか、ここが重要」(同)

そうなんですよね、何も「性能」と言ってもそれはCPUやGPUだけじゃないわけで。低消費電力で瞬時起動とか、リモコンの使いやすさとか、そういった使い勝手、快適さにテクノロジーを投入するのは、すでにデジタル家電やノートPCの世界では以前から行われていたことで。PCではCPUだけパワーアップするのは昔の話。今やワットあたりの処理能力などが指標となっているというのは以前自分も述べていましたが、やっと岩田社長の口から語ってくれた、と言う感じですかね。PS3の価格が出るまでは単なる逃げのように見られていましたが、こうして価格差がはっきり出てくると多くの人が納得できるようなっていると思います。


あと、新たに発表されたものとしては、WiiとDSの連動でしょうか。以前に宮本茂氏がインタビューではそのビジョンを語っていましたが、今回は具体的なタイトルまで示しているところが大きく違います。しかもそのタイトルは『ポケットモンスター バトルレボリューション』。これについては、上記の動画で実際のゲームのデモムービーが公開されています。そこでの岩田社長のコメントによれば、DSをコントローラとして、自分のポケモンを3D化して対戦させられる、いわばポケモンスタジアムの発展版のようなもののようです。もちろん、Wi-Fi対戦を使った対戦もできるようです。Wiiの発売とDS版ポケモンの発売が近いことで、ポケモンによってWiiの話題性がかき消される、いわば同士討ちの可能性も危惧していましたが、さすがにそんな愚作はとらなかったようです。個人的にはこのゲームのタイトルで「レボリューション」という言葉が使われていることにニヤッとしましたねw。
そのほか、既存のDSソフトを拡張する、ということについても語っていました。例としてあげられていたのはバンブラの演奏をWiiを通じてTVに伝え、TVから大音量で演奏されるとか、nintendogsの犬がTVに現れる、という用途です。これらも、安価に楽しめるならなかなか魅力的ですね。


そのほか、WiiConnect24についても語っています。これも、実際の岩田社長のコメントを映像で見ていただいた方がいいですね。おもしろかったのはやはり、そのものの見方。
まず、「なぜ人はゲームをやめるのか、なぜ開発者はボリュームを増やすという脅迫概念に駆られるのか」というのがWiiConnect24発端というのがおもしろい。岩田社長の考えでは以下の用のものです。

  • ユーザはやることがなくなる、新鮮味がなくなるとやめる。
  • 開発者は、飽きられたくない、中古にすぐに売られたくないからボリュームを増やす。
  • しかし、それはすでにユーザにはゲームの仕組みがばれてしまっている。ボリュームがあることが逆に障害にすらなる。忙しい人が遊べない、それがゲーム離れにもつながる。
  • しかし開発者はボリュームの束縛から逃れられない…。

上記の流れは、もう何年も前からゲームファンの中では感想として語られていたことではあります。しかし、そういった末端のユーザの声をちゃんと拾い上げ、それの解決法を新世代ゲーム機の核となる機能とすると言うところが、ただ者ではない印象ですね。どんだけ市場調査できてるんだよ、とおそれすら抱きます。
さらに、「ネットワークを対戦だけに使うのは狭い。対戦では必ず勝者と敗者が生まれてしまうし。友達と協力する、情報をシェアすると言うことも重要。その一つの解としてWiiConnect24がある」という発想もおもしろい。どうぶつの森でいう、服のデザインや星座などがWi-Fi通信を通じていろいろな人に広がっていくのと同じようなものを、WiiConnect24でも考えているんでしょうね。
バーチャルコンソールも、このボリューム偏重主義に対する一つの解ですよね。まあ、VC自体はXbox360や携帯電話のゲームなどでもすでに行われているアイデアなんですけど。


あとは、E3で「だれでもすぐ分かるゲーム、というが、実際にはWiiSportsぐらいしかないじゃないか」という批判を各方面から受けたらしく、それに対するコメントもしていましたね。DSでヒットしたものをただ持ってきただけではおもしろくない。Wiiの方がおもしろいもの、というものを考えていて、Wii発売と同時期に提供するとのこと。ちなみに、具体的内容はまだ公表せず。DSで脳トレのフォロワーだらけになってきた状況を見て、安易にアイデアを先に公開するのは、競争上好ましくないから、だそうですw。
まあ、それだけ任天堂が企画力、アイデアという面で抜けている、ということなんでしょうね。試行錯誤する体力がある、とも言えますが。個人的には、この岩田社長の講演すらサービスよすぎる印象すらあります。他の会社が参考になるノウハウ満載ですから。久夛良木氏みたいに煙に巻く発言ばかりならいいですが、岩田社長の言葉は理論的でわかりやすいですからね。ちょっとした経営コンサルタントなみな気がします。他の業種の人でも、岩田社長の講演はためになる点が多いと思いますね。


Wiiの価格や発売日の発表は9月頃機会をもうけるとのこと。宮本氏が言っていたように、東京ゲームショー前あたり、と言うことでしょうね。東京ゲームショーでの講演、それから今年はニンテンドースペースワールドもまず間違いなくあるでしょう。非常に楽しみです。


○DSについて
Wiiについて長々書きすぎたので、DSの方は多少簡潔に。
ニンテンドーDSのワンセグサービスは秋にスタート / ファミ通.com
DS本体は840万台。1000万台は順調に達成しそう。夏頃には増産予定だとか。というか、まだ増産していなかったのかよ、というのが素直な感想ですが。週10〜20万台売れていたので、てっきり増産していたのかと思いましたが。DSLite発売した時点で増産計画たてておけよ、ってところです。
asahi.com:DS、品薄解消のため増産へ 任天堂-ビジネス
脳トレを買った層の多くがどうぶつの森マリオカートテトリスなども買っている結果をしめし、「普通のゲームもプレイしてくれている」と言っていますが、この辺ってそんなに普通のゲームかなぁ?

6月発売予定のOperaは7月に延期。まあ、現状なんのアナウンスも無かった時点で延期な予感はしていましたが。また、ワンセグチューナーは秋頃、DSLiteの半額ぐらいということで9000円前後か。まあ、コストを考えると妥当な値段でしょうね。ただ、そんなに安い値段ではないので、どの程度売れるかは未知数です。

あとはポケモンですね。Wi-Fi対応、ボイスチャット対応。Wiiとも連携するとあって、本当に何台売れるか想像もできない化け物ソフトです。FF12が初週ダブルミリオンでしたが、ポケモンは数だけそろえられれば初週トリプルミリオンぐらい行ってしまいそうです。


以上、相変わらず絶好調ぶりを見せつけるDS。死角という死角は夏までの数ヶ月でしょうが、まあ安泰かなぁ、という感じですね。