浜村弘一氏セミナー、"ゲーム産業の現状と展望"詳細リポート! / ファミ通.com

ファミ通の浜村編集長が、関係者向けにセミナーを開催、現在のゲーム業界についての分析と展望について語った模様。セミナーと言うぐらいだから、おそらく有料なんでしょうね。値段がいくらか知らないですけど、この手の業界向けセミナーは万単位のことが多いですから。
そんな、ある意味業界人が、信頼あるソースとして、勉強目的もかねて参加するセミナー、責任を持って語らないといけないセミナーなはずなのですが、なんか微妙に真実と妄想が入り交じっているような気がしてなりません。

まず、売り上げについての分析。売上本数は昨年の10%贈、しかし市場規模は昨年と同レベル、という情報は正しいでしょう。その理由が、一番ヒットしたニンテンドーDSの単価が安かったから、と言うこと自体も間違っていません。問題は、利益に関するコメントです。任天堂スクエニに対して倍以上の売り上げ数をあげていることを取り上げて、以下のように分析。

浜村氏は「ソフト単価が安いので、本数に比べ利益は薄い。また海外ではPSPとの決着がついていない」とコメント。

…制作費、開発費は?利益の話をしているのに、なぜ単価の話だけ?脳トレは一桁の開発陣で4ヶ月程度で開発、対するFFはおそらく100人以上で何年開発しているのでしょう。たしかに単価は2.5倍ぐらいしており、今期だけでみればFFの利益は多いとは思いますが、それは開発費も含めてトータルで見てどうだったか、という視点で話をしなければならないのではないでしょうか?
そして、なぜここでPSPの話が出てくるのかも分からない。たしかに、海外ではまだ勝負はついていないでしょう。でも国内では完敗しているわけです。今回のセミナーは主に国内の業界、マスコミに向けたもののはず。そういう対象に対して、「海外では負けてない」と、直接は国内に関係しない事項を述べるというは、2chとかで通称「GK」と呼ばれる信者がやっている印象操作とレベルが変わらないのですけど。「海外ではPSPが強いから、国内もそのうちPSPが来る」、そういった印象を与えたいのかも知れませんが、それが通用するなら、メガドライブは日本でもっと成功したはずです。元メガドライバーとしては受け入れられない意見ですよね。
PSPに関しては、これ以外にも分析しています。

「発売が早かった。ソフトメーカーがいつ発売されるかわからなかった時期に、急に発表し発売してしまった。そのため、ロンチ(立ち上げ)は移植ものが多く、それもすぐに途切れてしまった。負のスパイラルに陥った」

最近はPSPが失敗している、という状況をようやくファミ通も認めざる得なかったようで、コメントはしてますね。しかし、発売時期が早かっただけが失敗の原因なんでしょうかね?ローンチは、移植ではありますけどみんなのゴルフ、三国無双、リッジレーサーPS2の有力タイトル揃いで、特にひどいものではありません。対して、新作の売り上げはどうでしょう?PSP独自のタイトルも昨年はいろいろ出ているとは思いますが、どれも爆死のものばかり。開発時期の問題よりも、「PSPならでは」のソフトが作れない、そもそもPSPに「ならでは」のところが特に見あたらないところが、根本的に問題な気がするのですが。
今後の展開についての分析も、ちょっと的はずれです。

「しかし、ここにきて『モンスターハンター ポータブル』が急激な伸びを見せた。PSPの特徴であるネットワークを楽しみに買った人が多く、好例になった」とコメント。今後はかつてプレイステーションが示した販売台数の推移と同じような曲線をたどるという。

たしかに、モンスターハンターポータブルがヒットしたことは事実です。PSPでも、60万本売る土台はあるのだと証明している形です。しかし、問題は「このソフトだけ」ということだと思います。PSPとしては数字的に根拠のある好材料なので、何かとファミ通MHPを取り上げますが、「MHPが成功した=ぞくぞくとMHPクラスの成功が生まれる」と短絡的に結びつけてしまうところが、いい加減な分析だなぁと感じてしまうわけです。MHPの成功から見えるのは、PSPのユーザがコアであり、一極集中になりやすい、ということだと思うのですよね。森川氏風に言えば、「釣り堀が狭い」わけです。そんな非常に限られた要素を拡大解釈して、「PSと同じ販売台数の推移を今後描く」と吹いてしまうのは、笑止千万。こんなものを聞かされたセミナー参加者がかわいそうです。PSのときとはあらゆる意味で状況が違うのにね。


そのほかの分析としては、ライトユーザとコアユーザの二極化がすすむというのがありますが、これはそうかなとは思います。で、コアは据え置き、ライトは携帯としていますが、その理論だと据え置きはどれも成功しない、もしくは限られたコアなジャンルだけ出るディープな市場になるということになるのですが。レボは眼中にないんでしょうね。
任天堂についての分析は、正直岩田社長のプレゼンの方がわかりやすいし説得力もあります。レボ「経営者にも人気が出てきた」というのはうれしい情報ですが、DSでは安易な脳ゲーム、知育ゲームが出てきているようで、だめだめ。PS風なゲームもDSの性能、ユーザには会っていませんし、苦戦は必死でしょうね。DSもサードにとっては先行きは明るい物ではありません。レボも、本当にクリエイター側がどの程度質が高いかが問題ですよね。PS2時代はとにかく人をかけて作業的に作ることが多かったでしょうから、アイデア勝負できるクリエイターがどの程度いるか。
Xbox360については、酷評しまくりですね。まあ、事実を述べているようではありますが、PSについては気前のよい妄想を聞かせてくれているのに、態度の差が激しいことで。ブルードラゴンがミリオンになるかが勝負になると言いますが、現状ではまず無理でしょう。いい加減なコメントですよね。


以上、講演でふれられている数字などは、すでに2chとかでも明らかになっているものも多いのに、よくもまあこれほど分析の仕方が異なるものだと、あきれる部分がありますね。これが業界通の意見として各種マスコミがお金を出して参考にするわけですか。こんな調子では、自社でしっかりと顧客ニーズをしぼって開発ところ以外は、どんどん勘違いゲームが出てきてユーザとの薄利が進み、ゲーム業界が衰退していきそうな気がするんですけどね。ゲーム関係各社、『業界通』の分析を鵜呑みにせず、しっかりと自分の目で、頭で考えていってほしいものです。