任天堂、「Nintendo DS Conference! 2005.秋」を開催(3) - Nintendo iNSIDE

昨日、RistrettoさんのところのRambling Man 独り言で、今日の任天堂関連の動きが触れられていましたが、想像以上にボリューム満載の発表がやってきました。発表の大きな目玉としては「Wi-Fiコネクションの概要」と「136タイトルのラインナップ」でしょう。どちらも、この年末の展開が宣言されていた内容ですが、あらためて実際に聞いてみるとすさまじいものがあります。
上記二つの点には、また別記事で述べることとして、ここでは任天堂の戦略、ソニーとの対比などについて触れてみたいと思います。


今回の発表会は、基本的に販売店などに向けて、年末の商品展開を説明する、という位置づけのようです。しかし、その内容は非常にメッセージ性にとんだものになっています。
なぜそれが分かるのかというと、その発表内容が公式HPで公開されているからです。
ニンテンドーDS Conference! 2005.秋
前回の東京ゲームショー講演でもそうでしたが、こうした社長自らの発言を、スライド付きで分かりやすく消費者に見せることに努力を惜しまない姿勢は、非常に印象のいいものです。会社が、ユーザの側まで降りてきて話している印象を受けます。
また、その発表内容も、非常に理論的です。問題提起、目標設定、そのためのアプローチ、目標に対する現在のアプローチの状況分析、それを受けた今後のアプローチ、そうした方法論を分かりやすくスライドを提示しながら発表しています。そのアプローチが今後も成功するのかどうか分かりませんが、少なくとも、現在取っている戦略と、その背景にある考え方は伝わってきます。「何を考えているか分からない」とサードに言わせることはないでしょう。
ハードの普及台数についてのコメントは、ちょっと皮肉が効いてますね。

日本の市場で新しいゲーム機が発売されると、最初の100〜150万台くらいまでは、比較的順調に売れることが少なくありません。しかし、200万台、300万台というハードルを短期間にスムーズに超えることができてこそ、本格的な普及が可能になります。

これは、明らかにPSPを意識した発言でしょうね。たしかに、PSPも既に200万台ぐらい「生産出荷」していますが、それでもDSには週間販売数で及びません。この状態では、300万台まで売るには相当時間がかかるでしょう。ハードが売れなければ、パイの小さいジャンルのゲームなどはますます売れません。そうすると、ソフトもない、ハードも売れないという負のスパイラルになるわけです。
今回のサードのゲーム発表を見ても思いますが、この300万台という数字を、サードの支持を得られない段階で、自社だけの力で、サードが開発中のソフトを発売前に達成できたことは非常に立派と言えるでしょう。しかし、「任天堂ハードは任天堂だけがいい思いする、任天堂しか儲からない」という批判があったのは事実です。それについても、今回の発表で触れています。

 ニンテンドーDSでは、ハードそのもので斬新な提案をしたこともあり、任天堂自身がその価値を証明するようなソフトを出さねばならないという決意で行動してきました。そして、実際に完成したソフトをお見せするまで、DSの真価やユニークな機能の使い道をご理解戴くことが難しい面があったかも知れません。このため、これまでのDSのビジネスは、少数の例外を除き、どうしても任天堂の自社ソフト中心のビジネスとなってきたことも否定できません。

企業として、自社の利益を追求することはある意味当然のことなので、自分だけが儲かっていることを自ら非難するというのは、なかなかできるものではありません。しかし、任天堂だけしかなく、サードが弱くてGCが負けたのは事実です。それに対して、現在好調であっても、サードを集める努力をおしまかったことが、今回のサード大量収集につながったのでしょう。
Wi-Fiへの取り組みにしても、3つのキーワードに絞って徹底して戦略を展開しているところがわかりやすいですね。正直、やれることはPSPと対して違わないのですけど、それを包むトータルソリューション、アプローチが任天堂の方が明快ですね。


一方、ソニーPSPについては、こうした明確なビジョンが全然見えてきません。ようするに戦略がまるで無いのです。単に、ゲーム機能付きの、大量生産可能な廉価メディアプレーヤにしかなってません。要するに、PSXとなんら変わらないんですよね。PSのアーキテクチャを使い回して、AV関連を売りたいと。本当に久多良木社長の言うとおり、「ゲームはトリガーにすぎない」って感じです。これでは、消費者もPSPというハードの位置づけがよく分かりませんし、サードもついて行けないでしょう。PS2のときであればソニーブランドは絶大でしたし、PSでも圧勝していたのでその流れでAV機能付きのゲーム機も売れましたが、今はそういった投げっぱなしが通じる状態ではないと言うことでしょう。


DSとPSPの勝負はあらかたついた印象はありますが、任天堂には現在なような謙虚な姿勢をずっと続けていって欲しいですね。SFC時代は暗黒だったので。盛者必衰、おごれる平家ひさしからず、ってね。