ハウルの動く城

今日は銀座へ行く用事があったので、これまで行こう行こうとは思ってスルーしていた「ハウルの動く城」を見てきた。見た場所は東宝日比谷スカラ座。デジタル上映DLPを行っているところだ。
会場には開始20分ほど前に到着。真ん中後ろのよさげな座席はすでに埋まっていた。全体の入りとしては7割程度というところか。千と千尋の神隠し猫の恩返しのときは、子供連れの家族が大勢いたのに対して、今回はちょっと違う印象。女性の姿が多い。女性だけの組、というのも結構見受けられた。それは、ハウル自体を見て納得したところもある。
映画の感想として、正直想像していた以上におもしろかったと言うこと。公開当初、世間では木村拓哉の声がしょぼいとか、メッセージ性がよく分からない、とかそういったネガティブな意見があって、見る気をだいぶ失わされていたのだが、見てみたら、そういったところ以外での面白さがかなりあった。以下、映画の詳細な感想。
※以下、ネタばれあり!

ストーリー

まず、全体の印象。話の中に戦争が結構入っていて、多少メッセージ製のあるところもあるけど、本筋は驚くほど素直なラブストーリーだ。主人公ソフィーのハウルに対する愛情が前面に押し出されている。
呪いが各キャラクターの特徴になっていて、ハウルカルシファーには契約、カブとソフィーには姿を変えられているという呪い。このうち、ハウルカルシファー、カブについては作中で解説がなされていますが、ソフィーの呪いは特にふれられていません。しかし、逆にソフィーの容姿はその時々に応じて若くなったり年老いたりします。このあたりから、観客に推理させようという意図なんでしょう。
まあ、ネットではすでに様々な正しい解釈が出ているんだろうけど、とりあえず自分なりの解釈を。たぶん、この容姿はソフィーの内面を表していたものなんだろう。パンフレットでもふれられていたが、ソフィーは若さ、容姿についてコンプレックスを持っていた模様。若いのに帽子屋を継いでいる自分を悲観的に見ていたり。それが、最初の老婆の姿になっていたのだろう。そして、ハウルに恋をしてアクティブになっていくにつれて、だんだんと若返っていく。感情を爆発させるときは完全に若返っているし。最後の方はずっと若いまま。結局髪の色は白髪になったままですが、まあ、とくにメッセージはないでしょう。
次に、テーマの一つは戦争。しかし、これはあまり比重は重くない。まず、戦争の背景がほとんど書かれていない。どことどこが戦っているのか、何のために?そもそもこの舞台となっている国は何?という感じで、舞台背景の説明がほとんど無い。でも、これは意図的なものなのだろう。戦争を主題にすると、話が重くなってしまう。適度な戦争批判をこめ、作中における「負」の部分の味付けとして、戦争を利用しているのだと思う。たしかに、メッセージ性には欠け、何が言いたいか分からないという指摘は分かる気も知れないが、個人的には全然OKだ。正直自分は、もののけ姫以降、なんか変にメッセージ性を持たせすぎてうっとうしく感じていた。世界的にはそのメッセージ性に高い評価を受けていたのだけど、自分が宮崎アニメに望むのは、天空の城ラピュタのような、単純爽快な冒険劇、ラブストーリー。娯楽アニメなのだ。そう言う意味では、今回のハウルではラピュタ未来少年コナン的な印象で、非常にさっぱりと楽しめた。
ただ、説明不足な感があるところもちらほら。上記の戦争についてもですが、マルクルがなぜ弟子なのか、とか、動く城の経緯とか、サリマンの部下がみなハウルそっくりなのは何か意味があるのか?とか。後で、ネットで各自の解釈を見てみることにしよう。
あとは、やはり最後のオチだろうか?パンフレットでクミコさんも指摘していたが、いきなり無理矢理ハッピーエンドになったような感じ。これは、千と千尋でも受けた印象だ。あと、「耳をすませば」のいきなりプロポーズにも近い印象。宮崎アニメなので、バッドエンドはないとは思ったが、相変わらず持って行き方が強引だ。長い映画なのだから、最後はもうちょっと丁寧に、余韻を持ってハッピーエンドにしてほしかったところ。

キャラクター

次にキャラクターについて。ヒロインは、おばあちゃん、ということで心配していたが、途中から若くなったり年老いたりを繰り返し、最後の方はずっと若い状態。ビジュアル的にもかわいらしく、まさしく宮崎駿アニメのヒロイン、という感じだ。千と千尋は、ヒロインがかわいくなかったのが個人的に大きなマイナスだったからなぁw。シータ、ナウシカ、ラナと、どれもヒロインは魅力的(みんな同じという話もあるが)。今回のソフィーも、個人的にはそれに加えたいと感じました。声優が倍賞千恵子というおばさんの人が全年齢声を使い分けて対応していましたが、これも悪くなかった。若いバージョンは、ナウシカ島本須美とよく似た印象を受けましたし。
一方で、ヒーローのハウルは、非常にシンプルな2枚目キャラです。行動が刹那主義の快楽主義的なところがあったり、そのくせ戦争には嫌悪感を持っていて、一人でじゃましにいったりと、そういったところでは不思議なところがある男性ですが、ソフィーに対する態度や髪の色が変わって落ち込んでしまうところなどは、まさに優男、という感じ。声優がキムタクな訳ですが、ある意味あっていたのかも知れない。特に違和感は感じませんでした。ただ、全体的に高い声でしゃべっていたので、ほとんどキムタクであることを意識することもありませんでした。やっぱ、キムタクはしゃべり方に特徴があるのだな、と実感。
そのほか、炎の悪魔カルシファーも良い感じでした。ひねくれているんだけど、根はいいやつ、と言う感じで。とくに、結構へたれであるところもほほえましい。マルクルはこれもベタな子供キャラでかわいらしい。荒れ地の魔女は、結構意外性があった。悪役かと思ったら、結構早い段階で魔力消失。最後の方は、介護必要なおばあちゃん、という風になってしまったし。サリマンが今回の一応悪役、ということなのだが、特に悪役っぽくなかったなぁ。最後もあっさりしていたし。この点からも、今回の話がラブストーリーであることが分かる。
全体的に、まさしく宮崎アニメ、というキャラクターだったように思います。

まとめ

良作。自分が好きなラピュタナウシカ、コナンといった、初期の宮崎アニメに近い印象で楽しめました。ヒロインも魅力的。途中の展開も、ラストの急展開以外はよかったように思います。個人的に、もののけ姫以降、商売的に成功しすぎて、宮崎駿も変に凝ったアニメを、仕方なく作っているような印象がありましたが、今回は原点復帰という感じ。この調子で、まだまだおもしろい映画を生み出していって欲しいです。