Wiiやりすぎによる身体への影響について

Wiiと言えばWiiSportsというほど、代名詞となっているリモコンを振った体感操作。Wiiには他にもポインティング操作とかWiiConnect24など特徴もあるのですが、やはり体感操作が主役になっている感があります。そんなWiiリモコンではすでに一度ストラップ回収騒動が起きているようですが、ここに来てまたちょっとしたニュースが話題になっているようです。

ITmedia News:「テニスひじ」ならぬ「Wiiひじ」にご用心
「急性Wii炎」…ゲームで肩痛のスペイン医師、自ら命名 : 科学 : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

今回は上記のことについて、先に生じた問題と併せて自分が以前から思っている考えを述べてみたいと思います。

回収・交換騒動に発展した「Wiiリモコンすっぽ抜け問題」

そんなWiiSportsで特に発売直後大きな問題になったのが「Wiiリモコンすっぽ抜け問題」でした。リモコンを振るという操作のため、すっぽ抜けると勢いよく飛んでいってテレビなどを破壊するおそれがありました。このことはモーションセンシングの話が出たときから分かっていた話で、自分もWii発売前に取り上げています(「任天堂が挑むべき課題」について)。

ストラップをつけていない状態ならまだ注意不足という言い逃れもできましたが、問題となったのはストラップをつけてもすっぽ抜けた勢いでストラップがちぎれてしまったこと。いわば安全装置で任天堂側の保障の要とも言うべきものが十分に機能を果たしていなかったということで問題となったわけです。

任天堂も、リモコンすっぽ抜け動画などに最初は「おもしろおかしく投稿されたもの」などとコメントし、あくまで使い方の問題という形にしようとしていました(公式にコメントしだした「Wiiリモコンすっぽ抜け問題」)。

しかし、その後も物損や人的被害の報告が連続、ストラップが細いものと太いものの両方が存在することが判明してからは、さらにその安全性に疑問を呈す声が強くなりました(2種類の太さがある「Wiiリモコンのストラップ」)。

そして、結局任天堂はこの細い方のストラップを自己回収して交換すると発表しました(任天堂、Wiiの一部ストラップを自主回収)。その後もCMを使い方を啓蒙するものに差し替えたり、動きが大きなCMを控える、店頭でのDSステーションでも交換告知を流すなど、Wiiの広告戦略にも大きな影響が出ていました。

「手首だけ動かす」動作への疑問

上記騒動を受けて、任天堂が主張しているのは「Wiiリモコンは手首で軽く振っただけでも操作できます」というもの。腕全体で振ると周辺の物を破壊したり人を殴ったりする危険が生じますし、リモコンがすっぽ抜ける率も高くなります。それにくらべれば、手首で操作することをアナウンスしておけば、そうした危険を回避して訴訟リスクが減ると考えたのでしょう。

ただ、自分はこの「手首だけ動かす」ことへは以前から疑問を持っていました。それは身体への影響についてです。この辺は『Wiiの抱える訴訟リスク』、『シュールな「Wiiの遊び方」CM 〜 手首だけの動作には疑問も』といったエントリで触れています。

正直、手首だけを使った動作は手首へかかる負担は結構なものです。とくに実際のスポーツと違って、リモコンを振った時に物に当たった感触は振動程度で大きなフィードバックがないため、思いっきり手首を振り抜いてしまうことがあります。しかも、Wiiリモコンも軽いとは言ってもそこそこの重量。振り抜いた際にはその遠心力も手首にピンポイントでかかってしまいます。また、普段こうした「単に振るだけ」という行為に慣れていない分、加減の仕方も難しいんですよね。Wiiテニスなんかは手首で思いっきり速く振ると高速でリターンできたりしますし、バイオのナイフなんかはそこそこの加速度で振らないと反応してくれませんし。なんだかんだでついつい強く振ってしまうことがあると思います。

「モーション操作」に今後ずっとついて回る問題

実は自分も、実際にWiiSportsのやりすぎで一度腱鞘炎になりかけたことがあります。2日ほど、キーボードを叩く動作に支障を来す程度ですみましたが、それ以降Wiiでの全力プレイに慎重になった感じですね。その割には、今日バイオハザード4のムービーアクションで手首を使ってリモコンを振りすぎて、ちょっと手首が痛い状態です。手首によくないと分かっていても、ついゲームに熱中してしまうと力が入ってしまうんですよね。

これまでも、「Wii肉痛」とか言われてネットや漫画のネタなどで登場していましたが、今回、医者が実際に「急性Wii炎(Acute Wiiitis)」と命名し、実際に医学雑誌に投稿しているようです。
NEJM -- Acute Wiiitis

正直、ネタとしてとらえてしまう人も多いかとは思いますが、仮にも医者が医学雑誌に投稿までしているわけで、やはり単なる冗談のレベルではないんですよね。医者の場合は手首ではなく、肩の痛みだったようですが、自分も手首に痛みを感じるたび、危険を感じてしまいますので。腱鞘炎で非常に苦しい思いをしている人など、よく聞きますしね。

「使う人の問題」、「痛めるほどやるほうが馬鹿」という意見もあるとは思いますが、特にWiiは老若男女広い年齢層にもアピールされているゲーム機。健康で手首や腕を十分鍛えている若者ならともかく、老人とか普段あまり運動していない人でも触れる機会は多いでしょうから、全員が全員、節度を持ってプレイしトラブルを起こさずプレイできるとは思えません。

これは、啓蒙活動したからと言って完全になくなるものではなく、Wiiという操作系では今後一生付いてまわる問題だと思いますね。Wiiでの怪我などをなくすには、最終的にはWiiの発売中止ということしかないでしょうが、それは任天堂にとっても無理な話ですし、すでにWiiを普通に楽しめている人からも受け入れられることないでしょう。

『爆弾』が破裂しない運営を

とりあえず、任天堂には「手首を痛める可能性」も考慮した啓蒙活動を行って欲しいですね。後遺症が残ったり、全治何ヶ月もかかるようなより深刻なアクシデントが生じたら、集団訴訟などでそれこそWiiが発売停止、多額の賠償金支払いという経営に大打撃を与えるような事態にならないとも限りませんので。仮に任天堂が訴訟に勝ったとしても、むしろ怪我をした人々にとっては泣きっ面に蜂状態で、消費者にとっては最悪の事態と言えるわけですし、ともかく重大な事故が起きないことが何より重要な訳です。

Wii潜在的にそうしたリスクを抱えた製品である以上、任天堂はなんとかそうした爆弾が破裂しないよう、慎重にWiiのライフサイクルを全うすることに努める必要があるでしょう。かといって、身体への影響を過度に気にしてWiiのモーション操作の面白さを制限してしまうと、純粋にWiiそのものの魅力を低下させてしまう可能性もあります。すでにWiiSportsのような大きな動きをするゲームが作りにくくなってますしね。CMでもアピールできませんし。こうした両方の課題に任天堂が、そしてサードがどう対処していくのか。
業績好調で株価も絶好調、バラ色の未来が待っていると皆に思われている任天堂ですが、おそらく岩田社長などはこうした問題に非常にシビアな感覚で取り組んでいるはずです。むしろこうした問題にどういった解法を見せてくれるのか、楽しみなところでもありますね。


P.S.
当初「健康被害」という言葉を使用していましたが、意味合いが異なる部分があることから別の表現に変更しました。