後藤氏の岩田聡社長インタビュー

自分が日々チェックしているサイトとして、インプレスのPCWatch、AVWatch、GAMEWatchなどがあるのですが、とくにPCWatchではいくつかの記者による連載記事があります。その中でも、ゲーム関連の記事で注目を集めることが多いのが、本田雅一氏と後藤弘茂氏です。

本田雅一の「週刊モバイル通信」バックナンバー
後藤弘茂のWeekly海外ニュース バックナンバー

ただ、この二人は結構「ソニー大好き」なオーラが出ており、各々モバイル、海外ニュースという枠を飛び越えてソニーのお話をしてしまうことがしばしばあります。(そもそもPS3などは注目度が高いので、インプレス側から依頼が出ている可能性もありますけど。)
後藤氏の方がスペック大好きなところはあるとはいえ若干客観的に見ますが、本田氏はソニー好きが表に出てちょっと偏向気味な記事もありますね。本田氏はITmediaでもいろいろ記事を書いていますが、その文章には結構本田氏の思想が混ざってしまっているときがあります。
ITmedia AnchorDesk:本田雅一 執筆記事一覧
とはいえ、両方とも知識と文章量は抜群なので、毎回読み応えはあるのですけどね。

珍しい岩田社長へのインタビュー記事

今回、そのどっちかというとソニー好きな後藤氏が、めずらしく任天堂の岩田社長へのインタビューを行っています。今のところ、第2回まで公開されてますね。

任天堂 岩田聡社長インタビュー(1) マンマシンインターフェイスを直感的にすることがカギ - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
任天堂 岩田聡社長インタビュー(2) DSとは異なるアプローチでゲーム人口拡大を目指すWii - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース

E3後の久夛良木氏へのインタビュー(その1その2その3その4)では「インタビュー解説」なる久夛良木氏の言葉の翻訳が毎回行われていましたが、さすがに岩田社長だとその作業はいらないようですねw。もちろん、最後の記事では総括するんでしょうけど。

第一回の方は、単にいろいろな講演で話している内容の繰り返しみたいな印象ですね。ただ、これだけ繰り返し長期間にわたって話しているのに、未だに言っていることのぶれがないのはすごいところです。

第二回は、結構新鮮味のある記事です。まず、なぜぶれがないのか、ということについて色々岩田社長が語られていますね。2002年に岩田氏が社長になったときは、ゲームキューブは発売済み、かつ非常に逆風という状況だったんですよね。本当、地獄を味わっている方ですよね。HAL研の倒産からの立て直しと言い、逆境でも負けずにマネージングできる方なんでしょうね。

岩田社長の「技術屋」としての側面

第2回も、途中まではどこかで聞いたような話ばかりなのですが、最後に「シンクライアント」という話になってくると、俄然面白くなってきます。後藤氏はもうばりばりのアーキテクチャオタクですので、専門的な言葉がいろいろ出てきます。ちなみにシンクライアントとは以下のような意味です。

 企業の情報システムにおいて、社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシステムの総称。また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格のクライアント用コンピュータ。

シンクライアントとは 【thin client】 - 意味・解説 : IT用語辞典 e-Words

このあたりの話を後藤氏が振るのはよく分かるのですが、それに結構岩田社長が載ってきているのがちょっと新鮮でした。最近、岩田社長は公式HPを通じてや一般マスコミを通じてしか発言してなかったですからね。こうしたマニアックな議題があまりでてこなったわけです。とはいえ、岩田社長はもともとゲームプログラマー。自身プログラムも組むだけでなく、Mac好きだったりコンピュータの世界に相当に詳しい方でもあります。ですので、こうした話題でも実に自然に会話が成り立っているんですよね。久夛良木氏だと、こういうときにすぐに夢の世界に話が飛んでいってしまうのですが、岩田氏の場合は実に理論的で地に足がついた議論をしているように見えます。

岩田社長のネットワークソリューション感

個人的には、HDDを載せなかった理由についてのコメントが面白いですね。

【Q】 Wiiのチャンネルのコンセプトは、まさにシンクライアントですね。そのために、クライアント側に持つストレージも、512MBのフラッシュと小容量に留めたわけですか。

【岩田氏】 ローカルに大容量(ストレージ)を持つと何が怖いかというと、客の手元でデータが壊れることです。これ(HDD搭載)にはものすごく議論があって、同じ容量なら安いという意味でHDDは優れているんですけど、HDDは必ず壊れる。じゃあ、「俺たちのお客さんに(データを)バックアップして下さいと言うのか。HDDをこうやって換装しますって言うのか。それはないよな」って話になったわけです。私も、自分のPCのHDDは自分で換装しますが、そういうお客さんばかりではないですからね。

これは、HDDを積んでいるPS3への批判も含まれていますよね。また、PS3自身は、サーバーもCell、クライアントもCellで連動することで強力なネットワークコンピューティングを築くというものなのですが、これもサーバーがリッチという点では同じです(クライアントもサーバー状態になりますが)。しかし、クライアント側の設計について、岩田社長はPS3のアプローチを遠回しに否定している形ですよね。ゲーム以外の部分でも、これからの時代だとシンクライアントのような形の方が理にかなっている、という思考を持っているようです。

たしかに、現状でもPCなどではCPUパワーを使うのは動画エンコードやゲームなど一部アプリに限ってしまっていますからね。クライアント側がリッチであるというは、消費電力などの問題もあり、あまり主流な流れではありません。Web2.0関連も、どれもクライアントは特に大きな処理能力はいりませんからね。ですので、こういった視点も理にかなっているようには思います。Wiiはさらにシンクライアントで有りながら、WiiConnect24によりサーバーでもあるというところがまた斬新な感じですね。

もっとも、データの壊れにくさを言うのであれば、Wiiそのものが壊れたときにダウンロードしたデータが使えなくなるような自体は避けて欲しいところですね。今だと、同一本体でないとだめですからね。


ともかく、Wii発売後多少余裕が出てきたからこそ、いろいろ岩田社長も発言できているのでしょう。公式HPでない、第3者のフィルタも通った記事として、第3回以降の記事も注目です。