PS3販売の秘策?!「クーポン券」発行

発売までいよいよあと2週間あまりとなったPS3。ここに来てネットワークサービスの概要やPLAYSTATION TVなど具体的な内容も出てきました。これはこれで語りたいところがあるのですが、それよりも驚愕の展開を見せたのが以下の記事。

年末商戦でPS3は品薄に陥る可能性が高い。大根田CFOは会見で、商機を逃さないよう対策としてPS3と交換できるクーポンを販売することを明らかにした。
ソニー:PS3、年度内600万台出荷「難しくない」−企業:MSN毎日インタラクティブ

クーポン券とな!?


訳が分かりません。なんか、自分はとんでもないものを見ている気がしますね。まさか、天下のソニーがこんな訳の分からない施策をとるとは…。12月に売るものが十分用意できないからって、クーポンだなんて、いったい消費者にとってなんのメリットがあるのでしょう?

ただこのクーポン券については、別に日経にも記事が出ています。

――PS3の今期の生産出荷台数目標として600万台という数字を期初段階から変更していないが、論理的には説明できない。市場をミスリードするのではないか。

 600万台は12月までに出せる数字ではないかもしれないが、ソニー・コンピュータエンタテインメントSCE)ではクーポンを配るなどで1月に売ることを考えている。例年正月以降でもゲームが売れることもあり、タフな状況ではあるが、600万台という目標は無理な数字ではない。

液晶テレビもPS3も「タフな戦いになる」・ソニー決算会見ビジネス-最新ニュース:IT-PLUS

もう一個はimpressの記事。

また、PLAYSTATION 3の年度内600万台という出荷目標の達成を疑問視する声には、「最大の商戦となる12月までに出せる数は確かに少ない。マーケティングの一つのやりかたとして、1月以降にクーポンを配るなど、1〜2月にもモノを売れるような施策をSCEでは考えている。ゲームはもともと、1月以降も売れる製品。タフな状況ながら600万は達成できない数字ではないと考えている」とした。
ソニー、第2四半期決算は営業損失208億円

これら下の二つの記事では、「クーポンを配る」という表現をしていますね。こうしてみれば、毎日新聞の記事の方が誤植である可能性がいでしょう。もっとも、どれも同じ発言であるはずなのに、微妙に記事の内容が違うのが気になるところですね。先日もPS3のワイヤレスコントーラの認証の件でBroadBandWatchが誤報を載せたことになっていましたが、正直ソニー側の発言内容、説明内容が明確でなかったような気がしてなりません。

メリットが不明なクーポン券

しかし、無料でも有料でも、どちらにしても「クーポン券」というのが意味不明なことには変わりませんね。

もし無料で引換券を配るのだとしたら、それはゲームショップなどが行う予約と何が違うのでしょう?SCEがクーポン配る意味が分かりません。それを持っていることで本体が手に入りやすくなる、というのなら話は別ですが、品薄だと言っているんですしね。

ありそうなのは、ホットペッパーみたく無料の割引券だとか、ソフトのおまけとかでしょうか?もしくは、他のソニー商品にPS3割引クーポンが付いてくるとか?もしこういった戦略を1月からとるとするなら、「1月以降は出荷も増えるので、値下げして販売数増加」という意味になるのでしょうか?でもそれって、発売日に苦労して購入する人たちはどう思うのでしょう。すでに予約済みの人も。まるでわずか1、2ヶ月で値下げ宣言されているようなものではないでしょうか?また、ただでさえ直前の大幅値下げで決算が厳しくなったのに、さらに発売してすぐにクーポン割引したらさらに収益が悪くなり、投資家に冷たい目で見られそうな気がします。それとも、そこまでしないと年末商戦以降は厳しい、ということでしょうか?

かといって、実はMSN毎日が正しく、PS3引換券有料、というのも消費者のメリット無し。前金ありの店頭予約と変わりません。SCE自身がやる意味が訳分かりませんよね。というか、前金有りでの予約なんて、個人的には使いたくないですし。SCE自身が前金制度をやってしまうのでは、ゲームショップもそれにならうのが当然でしょうし、悪い流れになりそうです。


まあ、上記のいずれの想定にしても、クーポン券発行でのメリットがいまいち不明ですよね。2chで「高級レストランなのに食券制」というのがありましたが、実にうまい表現だな、と思いました。割引券なら「高級レストランなのに客寄せクーポン」ってところでしょうか。

とりあえず、今回の件は、2006年9月中間期の連結決算の記者会見における質疑応答で出た発言のようですが、すでに2chで騒がれていますし、おそらくこのクーポン券は実現しないと予想します。(一方的に消費者にメリットしかない大幅割引クーポンなら歓迎ですけどね。その場合は発売日の前にお願いします。)

来期コストダウンバージョン販売が公認

上記のクーポンの件も衝撃的でしたが、日経の記事ではもう一つ気になる発言もあります。

PS3の立ち上げの生みの苦しみだ。来期はコストダウンバージョンのPS3が出ることもあり、それほど大きな赤字を見込んでいない。

これまで、ファミ通の浜村氏がしきりにPS3値下げの可能性を断定的に発言していましたが、結構世間では「発売前に値引きしたのに、そんなに簡単に値下がりするはずがない」と思われていました。しかし、今回の会見で公式なコメントとして「コストダウンバージョンが出ること」が認められたわけです。コストダウンしたものを同じ価格で売って利益が改善するのか、本体価格自体が安くなるのかは分かりませんが。

たしかに、パソコンなどではよく、「時間がたてば安くなるのが当たり前。欲しいときが買い時」という言葉が使われます。そういった意味では、「ゲーム機ではなくスーパーコンピュータ」であるPS3でも同じ話なのかも知れませんね。気にしない人は全く気にしないでしょう。ただ、中にはすぐ安くなると発売前に言われてちょっと嫌になる予約購入者がいても、不思議ではない気がします。たとえコストダウンバージョンの話が当然の流れであっても、発売日に買う消費者の心情を考えたらこういうのは公言しないものじゃないんですかね?


とりあえず、以前のエントリー(トップのコメントが安定しないSCE)と併せて言いたいこと。

「お偉いさん方、もうちょっと考えて発言しましょうよ」

中途半端な発言、詭弁で消費者を振り回すのは、本当に勘弁して欲しいです。今回は、マスコミの記事すら安定感を欠きます。日本を代表する大企業なんですから、公の場ではもう少しきちんとした発言をして頂けるよう願いたいものです。


P.S.
ITmediaでも記事が出てますね。
ITmedia News:PS3は「タフな状況」 ソニー2Q、エレキ復調も営業赤字

まずはクーポン券について。

同社の大根田伸行最高財務責任者CFO)は「確かに12月までに出せる数量は少ない」と認めつつ、マーケティングでカバーしていくと語る。「年末商戦は重要だが、ゲームは正月以降も売れる商品。クーポンを配るなどして1、2月までモノを出せるような工夫を、ソニー・コンピュータエンタテインメントSCE)が考えている。タフな状況だが、600万台が無理とは思っていない」

これを見る限りではやはり、「年末商戦を逃すので、その分1月以降は割引クーポンを配る」というように見えます。収益よりも売り上げ台数必達ということでしょうか。

一方、コストダウンバージョンについても記述が。

来期以降は量産効果が出て大幅なコストダウンできる見込み。大根田CFOは「PS2並みの計画で投資回収できると考えている。オンラインを活用し、パッケージゲームから一歩抜け出したビジネスモデルを作っていく」と語った。

この文脈を見る限りでは、価格が下がると言うよりは、本体価格そのままでコストだけがさがり、収益がよくなる、ということでしょうか。だとすれば発売日に買うユーザでも一安心ですね。(でもそうなると、浜村氏の「すぐ値下げするからWiiより売れる!」という論調の説得力がなくなりますけど。割引クーポン+コストダウンの合わせ技ということ?)