精一杯邪魔にならない努力をしたセンサーバー 〜Wiiインタビュー最終回

Wii発表会前の最後の更新となったWii開発者インタビュー。その最後は、昨日の記事で自分が「Wiiの弱点」と語ったセンサーバーについてです。

第3回 「新しいスタンダードになっていく」 - 社長が訊く Wii プロジェクト - Vol.2 Wii リモコン編

○弱点を解消するための精一杯の努力

インタビューでは、思った以上に正直ベースで会話がされています。やはり、任天堂側としても、わざわざテレビ側に設置しなければならないセンサーバーの存在は、Wiiの中でかなりのネガティブ要素だととらえているようですね。実際、これを詳しく説明せずにしておく、という案も検討された模様。実際、最初に東京ゲームショーWiiリモコンが紹介されたときは、センサーバーの存在はコメントとして漏れ聞こえる程度で、その姿は分かりませんでしたからね。まあ、そのころはまだ形状検討段階だったのかもしれませんが。

それでも、最終的には正直に紹介しようということになったようです。最近は、企業側で隠している事柄もすぐにネットでばらされてしまい、バッシングにつながることもしばしばですから、今回のようにネックはネックと認めて情報公開した方が、結果的にはいいとは思いますね。不利な点を隠しても、問題の解決にはならないわけですから。(CPU周波数も不利だから隠しているといえば隠していますが、ゲーム機は周波数でプレイするものではないですし、こっちはさほど問題ないでしょう。PS3も今はCellの周波数を伏せちゃっているわけですし、「ユーザーにとって周波数は関係ない」ですのでw。)

そのセンサーバーですが、実際には弱点であることをカバーするために精一杯の努力はされたようです。まず、具体的な大きさについてはこのインタビューでは触れられていませんが、約20cmと言われています。これだったら一人暮らしで所有者の多い14型ブラウン管TVなどでも収まりそうな大きさ。また、検討段階では電池での電源供給も考えたようですが、結果的には電池交換の手間を考えて有線にしています。有線にした分、そのケーブルが邪魔にならない配慮はしてあるようで、ケーブルをセンサーバーの左右、真ん中どこでも密着して出すことができるようにしているようです。個人的には、見た目を気にするなら電池式という解があってもよかったように思うのですが、確かに電池交換はうざいでしょうね。Wiiリモコンが電池式なのもうざいですが、これはまだ、手元に置いているだけに交換の手間も最低限です。しかし、センサーバーは基本的にテレビ側に置いて使うものですので、こっちを交換しなければならないとなると、いちいちテレビ側に近づかないといけないので、かなりうっとうしくなりますし。また、電池が切れたタイミングを近くするのも難しいでしょう。突然Wiiリモコンポインティング動作がうまく動かなくなったときに、ユーザがセンサーバーの電池切れに原因があるのは相当困難でしょうから。そうした意味で、有線にする必然性はあったと思いますね。

○センサーバーがあることのメリットとポインティング原理

一方、ネガティブな面ばかり説明したセンサーバーですが、これがあることの強みもあるわけです。それは、センサーバーの必然性を主張する池田氏のコメントに現れています。

池田
『私は過去に加速度センサーを使った商品を手がけていましたので、その特性、あるいは限界というものを、ある程度は把握していました。その経験からいうと、操作の信頼性を高めるうえで、テレビ側からの絶対軸というものがどうしても必要だったんです。
テレビとコントローラをつなぐ光の軸をきちんと計って絶対的な方向の軸を確立しておかないと、誤差がたまってポインターがどこを指しているのかがわからなくなってしまうんですね。
ユーザーがいま何をしているのかをわからせるために、方向というのはやはりきちんと定めなければならない。逆にいうと、加速度を計る軸と、方向を計る軸のふたつがあればコントローラの可能性がすごく広がるんです。そのために、センサーバーは必要不可欠でした。』

この発言の通り、加速度センサーだけでも相対的な移動は検出できるのですが、どうしても誤差は出てしまい、複雑な動きとなるとぶれが大きくなってしまうのでしょう。それに対して、光線上の軸をセンサーバーで確率できることで、相対的な移動と絶対的な方向性の両方から動きを認識できるわけです。これにより、WiiではPS3とは違ってポインティングという入力ができるようになったわけですね。
この仕組みは、たとえばカーナビなんかを想定してもらうといいと思います。車に搭載されているカーナビは、GPS情報だけで車の位置を認識していると思われがちですが、車のオプションとして内蔵しているものは、実際にはタイヤの稼働量などの情報などもカーナビに反映されています。GPSだけだと道を一本間違えたりとずれが生じることもあるのですが、タイヤの動きと絡めて解釈させることで、そうしたGPSのずれを補正することができるわけです。歩行者用ナビや、カーナビでも単にGPSセンサだけの後付のものなんかだと、内蔵のものと違って精度が落ちることがあるのはこのためですね。そうしたわけでは、このセンサーバーは、ポインティング動作の精度を高める上で、非常に強力なアイテムとなっているのでしょう。

また、前々から問題になっていた「センサーバーは入力なのか、出力なのか」という疑問も、今回のインタビューを読むと何となく分かってきます。センサーバーを電池式にしよう、というコメントが出たことを考えても、おそらくセンサーバーは受信機ではなく送信機なんだと思います。センサーバーには、過去に撮影された写真から、両端に4つずつ赤外線の光源があることが分かっています。この4つの並んだ光源が、ある特殊な点滅を繰り返しているのでしょう。もちろん、赤外線ですので人間の目では分かりませんが。この、4つに並んだ光源+点滅パターンによって、「センサーバーの位置」を誤認識せずWiiリモコン側で感知できるようになっているのだと想像します。一時期噂になっていた『夕日を回りにおくと誤認識』という危険性も、おそらくこの仕組みで回避しているのだと思われます。

しかし、センサーバーがLED点灯のみだとすると、Wiiリモコン側についているのは赤外線受光器となるわけですよね。前にWiiの構成パーツとしてCMOSセンサーがあるとプレス発表されていましたが、どうもそれはWiiリモコン側についているっぽい感じ。こうなると、ますますWiiリモコンのコスト高となる要素が増えてくる印象ですね。

もっとも、上記はまだ予想の範囲を出ないことは確かです。センサーバーという名称自体、受信機を思わせる内容なので、もしかすると送受信両方やっている可能性もあります。特許などを完璧に取得している状態なら、どこかの機会でその技術的な内容についても語って欲しいところですね。

○常に変化しづける勇気

センサーバー以外の話は、E3での手応えや、クリエーターの反応などですね。不安だらけのスタートだったようですが、現在はしかかりとした手応えをつかんでいるようです。E3で他人が既存の延長しかやっていないことを見て、自分たちが新しいことをやっていると確信を持った宮本氏のコメントも印象的です。
あと、プロデューサーとクリエーターの反応の違い、というのも面白いですね。

岩田
『どちらかというと、プロデューサー系の開発者の人はWiiのコントローラに触ったあと、「あれができなくなる」「これができなくなる」というふうに考えがちなんですけど、現場寄りのクリエーターの方というのは「じゃあ、こんなことできますか」「あれはどうですか」と、どんどん質問してきて、ニコニコしながら帰っていくんですよね。

現状のPS2なんかだと、明らかにプロデューサーの力が強くなっている気がします。こうした人たちは、基本的に過去の成功経験に従って行動しているわけですよね。だからこそ、それが応用しづらいWiiには渋い反応を持つのでしょう。で、そういった人がサードメーカーの上の方に多かったからこそ、DSといいWiiといい、大手がなかなか乗り気にならなかったという背景があったように思われます。上の地位に上がっても常に変化し続けられる人間なんて、そうそういるもんじゃないですからね。成功している人なら、なお一層そうでしょうし。任天堂は、社風もあるとは思いますが、スーファミ以降失敗の数も多い分、いろいろ変化をすることができているように思います。

○いよいよ、発表会せまる

さて、インタビューは想像通りハードとリモコンで終わり。ソフト、サービスについては発表会で追加の情報が出てくるのでしょう。WiiSportsにもフェンシングやダンベルのようなものも追加されているという噂がありますし、それ以外に宮本氏が作っている隠し球があることも前々からニンドリインタビューなどでにおわせています。また、ファミ通フラゲ情報で、サードからも多数のタイトルがリストアップされていたりします。
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その発表会についてですが、Ristrettoさんの情報によれば、WiiPreviewと言う名前で午後から幕張で行われる模様。
Rambling Man 明日はお祭り

価格や発売日も、まず間違いなく発表されるでしょう。PSPのときのDS見たく、発表会前に突然「PS3緊急値下げで4万円!」とかされたら分かりませんがw。とりあえず、最後なんで自分の予測を載せておきましょう。
「11/3発売、Wiiリモコン+ヌンチャク×1同梱で23000円」
11/3は文化の日で行列ができても問題が少ないこと(ジェットブラックが休日だったし)、PS3の一週間前の発売で、PS3が品薄で翌週買えなかった人が店頭で衝動買いしてしまう需要が認めることから設定。同梱物は、Wiiリモコンがセンサ内蔵の可能性が高まってコストかかりそうなので2個つくことはないと予想。クラコンも、個人的にもいらないという願望はありますが、VC向けのプリペイドカードなどとセットで売るんじゃないでしょうか?本体価格はWiiリモコンが高いことから2万円以下の線はのぞき、25000円以下と公言した以上、25000円と上限値を設定すると印象があまりよくないのでちょっと下げた価格にするんじゃないかと予想。ソフトが7000円程度なら、本体+ソフトでちょうど3万ぐらいですので、あり得る設定かな、と思っています。まあ、どうせもうすぐ分かることなので、当たっても当たらなくても大差ないですけどね。

ともかく、わくわくした気持ちが止まりませんが、是非ともグッドニュースのみを発表会では聞かせて頂きたいところです。