明暗分かれた第1四半期決算結果

今月は各企業の第一四半期決算内容発表が連続して行われています。そんな中、ゲーム業界でしのぎを削る任天堂が24日、ソニーが今日業績結果の発表が行われました。各々の会社のIRページに、その資料が公開されています。
IR情報(投資家向け情報) :: 会社情報/IR情報・採用情報 - Nintendo
Sony Japan|ソニーグループ 業績発表文・決算短信

○投資家の予測を上回る好調の任天堂

まずは任天堂の業績。こちらはDSの絶好調ぶりを反映して、上方予測ばかりとなっていますね。とくに、国内だけでなく欧州でも好調になってきたのが大きいのでしょう。こうした好調は、たいてい業績発表前に株価に織り込まれていることが多いのにもかかわらず、その予想すら上回る好業績だったことから、株価も一気に年初来高値を更新して急上昇したりしていました。
ITmedia News:ニンテンドーDS、4〜6月期に454万台販売 通期予想は1700万台に
任天堂が4月〜6月の決算を発表 たった3ヵ月でニンテンドーDS Liteの販売数は358万台 / ファミ通.com
DS効果で業績好調、任天堂の第1四半期決算 - Nintendo iNSIDE

○ゲーム部門で苦戦のソニー

一方、今日発表されたソニーの第一四半期決算。好調だった液晶テレビの売り上げを受け、全体では増収ですが、ゲーム部門だけを見ると売上高が1225億円と前年同期比29.1%減、営業損失は268億円と前年同期の59億円から約4.5倍となり、大幅に赤字がふくらんでいる形となっています。
ソニー:PSP伸びず、ゲーム部門大幅赤字−ゲーム:MSN毎日インタラクティブ

このゲーム部門に注目して各種報道がされていますね。とくに、ソニーからはっきりと「DSに苦戦」という発言が出たのが意外で話題になっているようです。
PSP販売「DSに苦戦」認める・ソニー決算会見 デジタル家電&エンタメ-最新ニュース:IT-PLUS
ITmedia News:PSP失速 「DSに苦戦している」とソニー

○歪みの出てきた「生産出荷」

ゲーム部門の業績に関する詳しい情報は、上記ソニーのHPにあるプレゼンテーション資料7ページ目、スライド13を見ると詳しく見ることが出来ます。(PDF版の方が文字は読みやすいです。)また、詳細な数字は、連結業績のお知らせで確認することができます。
Sony Japan|2006年度 第1四半期 業績説明会

これら数字で注目なのは、やはり棚卸資産でしょうか。棚卸資産とは、まだお金になっていないものの資産価値、まあばくっと言ってしまえば「在庫」ですね。
棚卸資産 - 野村證券
ソニーは世界でもまれに見る「生産出荷台数」という、工場で作っただけでまだ小売りにも売れたわけでない「在庫」の数を堂々と「出荷台数」のごとく発表する企業。それだけに、無茶な生産出荷台数を発表した場合のしわ寄せは棚卸し資産に計上されるわけです(もちろん、粉飾決済していないこと前提)。
すでに2chのゲハ板ではいろいろ考察されていますが、案の定このPSP不調を受けて棚卸し資産が前年同期に比べて45%増加しています。PS3の棚卸し資産はエレクトロニクス部門に計上されていますので、主にこの数字はPSPによるものとなっています。一応理由としてはPSPの全世界展開ということになっていますが、結局それが棚卸し資産になっているということは、生産した分を捌き切れていないということですよね。実際、上記のITmediaの記事でも以下のような発言がありますし。

PSPは年末が最大の商戦期で、大根田CFOは「年末に向け、在庫は吸収できる」との考えを示した。

在庫、という言葉を見ても、この分析は大きくはずれていないと言うことでしょう。年末はさらに日本ではポケモンによるDS旋風が吹き荒れますし、10月以降は据置機直接対決で完全に話題を持って行かれることは容易に想像できるだけに、果たしてこの読み通りに推移するかどうか。この在庫状態では、いつまでたってもPSPで新色は出ないでしょうね。

PSPがこうした状況だからなのか、今年度PS2がまだ伸びると予想しています。しかし、これもちょっと無理がある予想ですよね。何より、今期の売上高減少の要因はPS2が担っているわけですし。本来はPS3で稼ぐ、とコメントするのが流れ的には正しいのでしょうけど、苦戦は想定しているということでしょうか。

○激動のゲーム業界の行く末やいかに

ソニー的にはゲーム部門はここ2,3年が勝負でしょうね。PS3でソフトがそろってくるまでは、何とか損失を抑えて乗り切る必要がありますし。理想としては、PS2にもSCEが優秀なタイトルを自ら提供し、市場を引っ張っていくことだとは思うのですが、こればっかりはお金をかけたからといってもうまくいくとも限りませんしね。ロコロコも、今回の決算を見る限りでは相当覚悟を決めた必死の戦略だったようにも思えます。
任天堂のDSの好調も、ある意味ポケモンが出る今年がピークな気がしますし、Wiiも売り上げ的には未知数と、まだまだ予断を許しません。MSも、Xbox360が米国市場を支配したり、Zuneが相乗効果を起こしたりすると、日本国内でも風が吹かないとも限りません。森川氏のコラムによれば、すでに、国内でもPS3からXbox360にプラットホームを移したというサードも出ているようですしね。
#1068 アメリカで売る - Dr.森川の人間風車
こうした傾向が他のサードでも雪崩式に起こってしまうようだと、サードはみんなXbox360Wii任天堂単独で盛り上げ、とかいう今のPS2GCのような状況もないこともないかも。

いずれにしろ、ゲーム業界激動の時代が続きます。一体どこが発展し、生き残るか。