こだわりつまったNewスーパーマリオ 〜 N.O.Mインタビュー 〜

未だに販売量が10万台以上と衰えを見せないNewスーパーマリオブラザーズですが、その開発スタッフへのインタビューが今月のニンテンドーオンラインマガジン(N.O.M)で掲載されています。

『New スーパーマリオブラザーズ』開発スタッフインタビュー
Nintendo Online Magazine7月号公開―『マリオ』の隠しコマンドも - Nintendo iNSIDE
開発者の細かい秘話だけでなく、insideの紹介にもあるようにこれまで明らかにされていなかった隠しコマンドまで紹介されているところがすごいですね。冊子と違って、ネットでの自社による公開であれば皆が同時に知ることができるという驚きがありますし、それも、従来のマリオと同じく逆戻り禁止、というネタが実に『にくい』演出です。


開発秘話については、本当に細かな配慮や調整事項などを語っていますね。一つ一つの演出、アクションなどすべてに理由があり、検討重ねた結果があるところが、さすが任天堂というか感じですね。もちろん、他のサードでもこうした細かい試行錯誤は当然行っているんでしょうけど、今回のインタビューにおける試行錯誤のボリュームは圧巻なものがあります。「方向転換のとき、軽快にかつなめらかに振り返られるよう、一瞬だけ中間のフレームを表示している」とか、「宮本氏の意見でビッグマリオをどこでも使えるようにした。はまらないように随所に配慮してある」とか、へぇー、とうならされるものがあります。


今回のNewスーパーマリオは、3やワールドにくらべると動きは多少もっさりしており、ゲーマーにはぬるめの難易度だったことからも、酷評されるパターンもちょくちょく見受けられます。しかし、現在の好調に維持しているNewスーマリの販売数を見ると、インタビューにも見られる任天堂のそうした調整は、DSで獲得した大量の新規顧客に対しては、非常にうまく作用していることが分かります。DS向けソフトを作っている開発者にも、いい参考になるんじゃないでしょうか。


自分的には、このNewスーパーマリオは、初めてクリアできたマリオシリーズだったのでそこそこ楽しめた感じです。ただ、たしかに難易度は低い感じはしましたね。セーブが細かくできないことも、看板でセーブできることが分かればさほど苦労しませんでしたし、ラストのクッパは一発で楽に橋を崩して倒してしまったので、ちょっと拍子抜けのところもありました。ただ、その前の動く床に乗っていくところがめちゃくちゃ苦労しましたけど。2回ゲームオーバーになり、50機ぐらい使った記憶があります。あと、クリアして以降のやりこみを全くやっていないので、まだ楽しめる余地はあると思ってますが。


昨今、DS、Wiiと出される任天堂の変化球とそれに対する市場の好感具合に、開発者の人のとまどいも多いかと思います。自分達は時代に取り残されているんじゃないか、ずれているのでは、とかいう無力感を味わっているのかもしれません。しかし、このNewスーパーマリオのインタビューから読み取れることは、どれも天才的な発想ではありません。細かい、一つ一つのケーススタディ、論理的分析、検討、そういったものが積み重なったものです。もちろん、マリオという偉大なブランド力はありましたけど、この売り上げには、そういった徹底した顧客志向の丁寧な検討が貢献しているのは確かです。天才じゃなければできないことではないのです。

一方で、今のゲーム業界には、「自分はクリエーター」、「自分が面白いと思うものはユーザーも面白いはず」、「昔はこれで売れた」という思いこみを、間違った方向で発揮する開発者も多いように思います。また、経営者も単に続編出しておけば安定して稼げると、安易に続編ばかりを計画しているようにも。しかし、このNewスーマリのように、本当にたくさん売りたいのであれば、単なる自分の嗜好の押しつけでは駄目だし、続編を作るにしても工夫しなければ多数あるはずです。単に愚痴ったり、任天堂寡占に文句言ったり、安易に知育ゲームで後追いするのでなく、まずは丁寧な検討・ゲーム作りを心がけることが重要ではないでしょうか。
もちろん、実際には「人が足りない」、「予算がない」、「納期がきつい」など、様々な苦しい要因はあるかと思います。また、頑張っても、市場に必ず市場に受け入れられるとも限りません。しかし、たとえすぐに売り上げにつながらなかったとしても、長い目で見れば、そうした一つ一つのゲーム作りノウハウの積み重ねが、ゲーム業界を明るい方向へと導いていくのではないのでしょうか?過去の手法、個人の嗜好にとらわれるのではなく、マンネリを打破した顧客志向の着実なゲーム作りで、業界を盛り上げていってほしいものです。