任天堂、DSでのウェブ閲覧向けに有料フィルタリングサービス提供

7/24にニンテンドーDSOperaブラウザ「ニンテンドーDSブラウザー」を販売開始する予定の任天堂。その任天堂が、なんとそのOperaでのウェブ閲覧について、閲覧制限を施すことが出来る有料サービスを始めるようです。
任天堂、「DS」に有害サイトの閲覧制限サービス - NIKKEI NET:企業 ニュース

上記のニュースは情報が少なく、そのうちinternetWatchやITmediaで詳しい情報が出てくるとは思いますが、とりあえず手元でいくつか検索して調べてみました。

まず、フィルタリング機能については、以下のサイトを参照してもらうといいでしょう。
フィルタリングソフト無しのネットは無法地帯!? 有害サイトから子供を守る! - [子供のためのPC・ネット学習]All About

今回フィルタリング提携する相手はデジタルアーツという会社。この会社の紹介は公式サイト(URL)でされています。こちらでは、個人向け・企業向けのフィルタリングソフト「i-Filter」というソフトを提供しているようです。基本的にはソフトがインストールされた側でフィルタリング処理を実施、フィルタリングデータは、随時ネットからアップデートされるという、いわばウィルス対策ソフトと似たような仕組みのようですね。ということは、ニンテンドーDSブラウザー内にこのソフトが最初から組み込まれており、その機能を有効にした場合だけ月額300円が必要になるということでしょう。定期的アップデートも同時に可能となるのでしょう。(←サーバー型サービスで、専用プロキシに搭載するサービスのようです。)

ちなみに、こちらのPC版ソフトの価格は以下の通り。
動作環境・価格 有害サイト遮断ソフト i-フィルター 4 デジタルアーツ株式会社
こちらを見ると、パッケージ版が6090円で1年間のアップデートライセンス付き、さらにライセンスの更新は年間3600円となっています。これは月額にするとずばり300円。この任天堂が提供するものと同じですね。つまり、このサービスは、最初のパッケージ自体はOpera側に内包、そのパッケージの価格は請求しない代わりに、使いたい人は最初から月額でお金を払う、というビジネスモデルを取っているようです。サービス料はそのままデジタルアーツのものになるんじゃないでしょうか。
最初、有料というアナウンスを見たときは、「え、こんな機能でお金とるの?」という印象でしたが、上記のようにすでにフィルタリングサービスとして成り立たせている会社のビジネスモデルを持ってきている、というのであれば納得できるように思います。もちろん、無料にこしたことはないのですが、実際にデジタルアーツがこういったビジネスでやっていけているようですし、需要はあると言うことでしょう。ちなみに、このソフトは「日本PTA全国協議会推薦」とのこと。要するに、現時点では国内における業界標準的なソフトのようです。


任天堂は、上記のフィルタリングサービスのように、ゲーム以外のジャンルのサービスについては、積極的に業界トップの企業と提携していきますよね。以下に、DSで主に提携している会社をリストアップしてみましょう。

無線LANであればBuffalo、NECと提携して簡易セットアップを実現し、外での利用のためFREESPOTと提携しています。また、プレイやんでは、動画変換ソフトとしてPanasonicと提携。脳トレなどで使っている音声認識ソフトや文字認識ソフトも松下と協力しています。そしてこの「ニンテンドーDSブラウザー」では、ブラウザ本体は携帯電話用フルブラウザでは定評あるOpera、日本語入力では業界トップの性能を誇るATOK、そして今度はフィルタリングサービスをデジタルアーツと提携と言う感じです。上に上げた以外でも、細かい部分ではいろいろな企業と提携している気もしますね。

任天堂ソニーやMSのように、自社で有力なパーツや技術を多数持っているわけではありません。しかし、その分、その時々、提供するサービスに併せて業界トップレベルの企業と提携してソフト・ハードを提供してきています。こうした小回りのきくところは、逆に任天堂のメリットなのかも知れません。自社に固執してしまうと、ソニー音楽配信サービスのように、世の中ではiPodがダントツなのにそのサービスは提供できない、というジレンマに陥ってしまうので。PSPで普及率が高いSDカードが使えないのも、消費者にとってはメリットないですしね。

まあその分、個々のサービスの価格は、提携会社との交渉によるため、任天堂の独断でロープライスで提供とかはできないのでしょう。ニンテンドーDSブラウザの3980円という価格も、OperaATOKなどに払う価格も含まれているでしょうから。しかし、たとえ自社開発したソフトであっても本来はただではないので、これは健全な経済モデルな気もします。ベンチャー企業としても、ソニーやMSといった強力な企業が参戦できないだけに、実力勝負の魅力的なプラットホームに見えることでしょう。


今回のフィルタリングサービスも、いったいどの程度の消費者が申し込むものなのかは分かりません。月額300円というのは、それなりの額ではあります。しかし、家庭内で子供を持ち、インターネットもやらせたいけど、PCを使わせるのはいろいろ不安、という親にはいい選択肢な気もします。PCだと、どうしてもウィルスなどの問題がありますし、子供がPCに詳しくなってくると親がちょっと小細工したぐらいでは対処できなくなってしまいます。その点、DSブラウザーなら、機能が限定的なだけに、子供がいくら不用意に扱おうと、逆に徹底的にいじろうと、閉じたプラットホームなだけに安心感が高いです。とりあえず子供にネットをさせる、というだけならこのブラウザの方が親の安心度が高いかも知れませんね。


ニンテンドーDSといい、Wiiといい、任天堂のプラットホーム戦略は非常に堅実で、したたかなものがあります。ソニーを初めとする家電メーカーとMSやインテルがエゴ丸出しでやり合っている間に、いつの間にか任天堂が他のベンチャーを寄せ集めて家庭内のメディアサービスを牛耳ってしまっている、という事態もへたしたらあり得るかもしれません。なにしろ岩田社長も「すべての娯楽が競争相手」と公言していますしね。基本的には家庭内でのゲームの地位を高めるために、それ以外の付加機能を充実させているわけですが、その究極の姿は「任天堂の製品ですべての娯楽が可能になる」というすごい世界ですから。
まあ、そう簡単にできるものではないとは思いますが、PS2業界標準DVDプレーヤとなったように、ゲーム機という普及力はなかなか強力なものがあります。他業種の人も、気をつけておかないと任天堂にすべてさらわれてしまうかも知れませんので油断禁物ですね。逆に、ベンチャーにとっては大きなビジネスチャンスかも。



P.S.
いろいろなところで詳しい発表が出ていますね。
デジタルアーツ、ニンテンドーDSブラウザー向けフィルタリングサービス - BroadbandWatch
ITmedia +D Games:「ニンテンドーDSブラウザー」7月24日に発売――「i-フィルター」によるフィルタリングサービスも (1/2)
「ニンテンドーDSブラウザー」公式サイトオープン - Nintendo iNSIDE


さらに、フィルタリングについての詳しい情報がデジタルアーツのページに掲載されています。
デジタルアーツ プレスリリース ニンテンドーDSソフトにデジタルアーツのサービス採用「i-フィルター for ニンテンドーDSブラウザー」7月24日 製品発売と同時にサービス開始
i-フィルター for ニンテンドーDSブラウザー デジタルアーツ株式会社
これを見ると、フィルタリングサービスはプロキシを通じて行っていることが分かります。皆さんのお使いのプロバイダによっては、すでに同様のサービスをプロバイダが提供しているかも知れませんね。
しかし、このプロキシタイプのフィルタリングですが、子供が簡単にオフできたりしないんですかね?オプション画面自体にパスワードをもうけられるようにしないと、フィルタリングの意味がない気もするのですが。まあ、そのあたりは何らかの対策が施されているんでしょう、きっと。
ちなみに、このニンテンドーDSブラウザーへのフィルタリング機能の搭載で、デジタルアーツの株価が結構上がったみたいです。やはり、ベンチャーにとってはこうしたゲーム機との提携は心強いですよね。
Yahoo!ニュース - フィスコ - 「株式」 Dアーツ(2326)−個別銘柄ショートコメント


一方、ニンテンドーDSブラウザーの公式サイトも出来ていますね。
ニンテンドーDSブラウザー

こちらを見ると、実際の使用想定シーンも書かれているわけですが、その例の一つにこんなものが。

ベッドの上からブログの更新やニュースのチェック、リビングでテレビを見ながら皆で掲示板に実況書き込み、外出先でお店の情報検索など、どんなスタイルでもインターネットを楽しめます。
特長

ちょwwwwww実況板推奨かよwwwwwwwww。
まあ、たしかに普通のPCのウェブブラウザとくらべて、DSブラウザでネットをすることのメリットは、PCがないところで、手軽に閲覧&書き込みが出来ると言うことですからね。PSPだと、どうしても文字入力がネックでしたし、実況掲示板はDSブラウザーの強みを生かすには格好の素材です。しかし、実況掲示板と言えば、当然メジャーなのは2ch任天堂2chの利用を推奨してくるとは、時代も変わったものですw。
FAQのページでは、いろいろ制限事項がかかれていますね。やはりDSのスペックからして、必要最低限の機能しかない印象です。画像がたくさんあると遅くなる危険性も書かれていますね。パフォーマンスがどの程度か気になるところです。
また、フィルタリングサービスについての記述も「パスワードによる起動ロックか、有害サイトブロック」という感じ。フィルタリング機能を子供がオンオフできるのかどうかはよく分かりませんね。仕組みが気になるところです。

とりあえず、ある程度具体的にブラウザの姿が見えてきたことで、ちょっとわくわくはしてきますね。デジモノとしてとりあえず評価する意味で購入してみるのも面白いかもしれません。