PS3のネット構想

後藤氏による久夛良木氏へのインタビュー第3弾。今度はネット戦略についてです。
PS3は「e-Distribution」のためのプラットフォーム〜久夛良木健氏インタビュー(3) - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
こっちについては、第2弾の時のような強烈な電波はないものの、特に目新しく面白い内容もないので簡単に。

まずはe-Distribution。「7年越しの思いを実現」と言っているが、その分すでに久夛良木氏自身もあげているようにネット配信など世の中にいろいろあるもので、後追い。ゲーム機ですら、WiiのVCで同様のことをされるため、インパクトはない。
PS3はHDDがあるので、PS3ゲームそのものをネット配信可能としているが、DVDやBDの容量を転送しようとすると、ギガバイト単位データをダウンロードしないといけないわけで。これを気軽に使うには、光ファイバー前提のブロードバンドが必要となります。ADSLレベルの場合、ダウンロード時間が長いため、長時間のダウンロードでつけっぱなしすることを考えると、Wiiのような低消費電力、静音性が望ましいし、HDD容量も数百GBクラスがほしいところ。ようするに、現状ではまだまだ現実的ではありませんし、たとえこれらが現実的になったとしても、初期のPS3では実現不可。ようするに、数年はどうでもいい話なんですよね。
そもそも、ネット配信を前提としてしまうと、後藤氏がうまく誘導尋問しちゃいましたが、BDもいらないんですよね。セキュリティという意味でも、ネット配信であればBDをキーディスクとしてつかうわけにも行かないですし。ゲームのためのBDという建前が意味をなさないわけです。自己矛盾ですね。
それ以外のCellの連携コンピューティングとかも、結局単に「できる」と言うだけの話で、何かあたらしいことを言っているわけではありません。「サイバーワールドを造る」とかの話も、おきまりの「なげっぱなし」理論。それだけ化け物な処理をする世界を造るには、その分開発も大変なわけです。それに、たくさんのサーバを使えば、その分のコストもかかります。そういったソフト会社側の負担も考慮せず、「Cell1000台以上つかって」とか語るのは、顧客を無視した無責任な発言にしか見えませんね。そのくせ、前回の「俺Appleだから」発言につづく「俺Googleだから」発言。やる前からすでに成功しているところと同一視だけする、不遜としか言いようがないですね。

結局久夛良木氏の語るビジョンは全然ビジョンと呼べるモノでなく、妄想レベルの願望なんですよね。人的、物的コストの算数が出来ていない、技術者の自慰行為というか。こういった誇大な発想が出来る研究者がいてもかまわないとは思うのですけど、経営を任せるべきではありません。こうした事態になるまえに、それを見抜くことのできなかったソニー上層部のミスなんでしょうね。

まあ、ともかくこれだけ投資もしてしまった以上、この久夛良木ビジョンにつきあって突き進むしかないわけで。現状で勇気ある撤退が出来る上層部はいなそうですし。後藤氏も最後に結んでいるように、ハードルが高いことはたしか。つきあわされる多数の開発者、社員はかわいそうですけれど、仕事である以上、たとえハードルが高かろうともなんとかプライドを持ってがんばってほしいものです。悪いのは経営者側で、社員には罪はないので。