Engadget&Joystiq 宮本茂インタビュー(第2回!) - Engadget Japanese

Wiiについて、宮本茂氏のロングインタビューがEngdgetに載っています。なお、このインタビューの映像が以下のところで公開されています。
Joystiq Video: Shigeru Miyamoto Interview - Joystiq
25分、555MBのQuickTime動画であり、かなりボリュームのある内容です。インタビューでは宮本氏は日本語で応答されており、Engadgetの記事はその日本語を忠実に書き起こしている感じです。(ちなみに、このインタビューでは、通訳を通じてやりとりされていたのですが、この通訳、宮本氏が長々としゃべった内容を、ほとんど同じ文章構成で、ジェスチャー混じりにして英語に翻訳されていました。こんなに長い文章をよくそのまま覚えておいて訳せるものだな、さすがプロ、と非常に感心してしまいました。)宮本氏も、ヒアリングはだいたい英語の段階で内容理解しており、通訳がフォローする程度。ただ、しゃべりの方は日本人にはどうしても難しいため通訳に頼んでいる形です。ゴルフの丸山茂樹選手なども、同じようなことを言っていましたね。


さて、そのインタビューの内容ですが、まずは宮本茂のゲーム作成への取り組みについて質問がされています。興味深い内容としては、宮本氏の監督としての姿勢。すでに宮本氏の元で多数のディレクターが仕事をしているようですが、そうした人たちの育成も重要な仕事な用です。ここでは新作ゼルダでの弓の動作を例に挙げ、宮本氏なりのポリシーについて述べています。

宮本:
そうですねえ。例えばね、ちょっとそのケースとは違うんですけど、ゼルダを作ってるとき、弓で狙って撃つんですね。こう撃つ瞬間に指を放すと、カーソルの位置がちょっとずれるんですよ。

で、非常に当たりにくいと。じゃあ当たりにくいから、ちょっとくらいずれてても当たるようにしてやろうとか、いろいろソフトでこうサポートしてやろうとかするんですね。僕は逆で、それは銃を撃つゲームなんかはそうかも分かんないですけど、弓のソフトなんかは逆に、弓っていうのは放すときのタッチがすごく難しくて、それによって当たるか当たらないかが決まるってすごくリアリティがあるものなんですね。そのリアリティとおなじようなことがここで起こっているのに、それを機械的に直してしまおうとする。それは明らかな間違いですね。せっかくそんな魅力的なアイデア、要素が出てきているのに、それをいままでの銃のシューティングとおなじように直していこうとする。過去の習慣に囚われて、やらなくていい処理を作ってしまうとか、新しい要素が見つかっているのにそれを潰してしまうということはよくありますね。みんな。

この考えは、たしかに普通の人だと感じないようなものですよね。自分だと逆に危険な考えのように感じます。弓とWiiリモコンは違うものなので、そこでリアリティ追求してプレイヤーを不快にさせてもしかたないんじゃないかと。
ただ、自分が親と「大人のDSゴルフ」をやっていたときに、この弓と同じような現象に遭遇したことがあります。DSゴルフはタッチペンで勢いよく画面をなぞることでボールを飛ばすわけですが、遠くにとばそうと力んだりすると、たまにからぶったりするんですよね。それが、ゴルフをプレイしている人からするとすごいリアルな訳です。親もそのリアルさに喜んでいたりします。そうしたことを考えると、この弓のように「やりづらいことのリアルさ」というのも、ある意味楽しさにつながっているのかもしれませんね。思えば、スーパーマリオがスピード出すと急に止まれなかったり、バルーンファイトも慣性力の影響が強かったりと、宮本氏の中では昔から首尾一貫しているものなのかもしれません。


そのほかは、おもにWiiにおけるゲーム性など、細かいゲーマーの疑問とその応答が中心となっています。誰もが思っていた、「Wiiリモコンだと疲れそう」ということについても、宮本氏が答えています。基本的に、Wiiリモコンでも小さな動きで肘をついてプレイはできるし、クラシックコントローラにも当然ゲームを対応させていく、としています。そして、ここからがおもしろかったのですが、「ユーザが大きな動作の方が大きいからそういった動作をしている」という指摘です。つまり、いやいや大きな動作をさせられているのではなく、自らの意志で楽しいと思うことをやろうとして大きく動かしていると。
やらされるのとやるのとでは、これは大きな違いがある気がします。ようするに、大きな動きというものが没入感につながっている訳ですから。結果として疲れるのは確かでしょうけど、その疲れるという結果だけでWiiリモコンを否定するのはナンセンス、ということです。もっとも、ゼルダで剣を振るのをボタンにしたのは疲れることも一因、というコメントもあっただけに、物事には何事にも限度があるということでしょうけど。このあたりは、ゲームデザイナーの腕の見せ所でしょうね。ゲームの楽しさ<<疲労感とユーザが感じてしまうとしたら、それはそのソフト設計者の失敗と言えるのではないでしょうか。


あとは、Wiiが他のゲーム機とちがって追加機能が充実していないのでは、という指摘についてです。これについても、宮本氏は、任天堂としてはゲームを楽しくすることをメインに新技術を使う、としています。他の機能はそぎおとすことで、安価に提供すると。PS2のときなどは、DVDが見えることをライトユーザーへ売り込む大きな軸としておいていましたが、任天堂的にはあくまでそういったライト層へのうりのためには価格を安くすると言う、ごく一般的な市場原理に基づいて行動しているようです。(ちなみに、最近のPS3Xbox360だと、ライト層へ売るため、というより、ゲーマー層にマルチメディア機能を売るために使っている、という逆転現象が起きているように見えますね。)
HDについても、やはり宮本氏は別にHDTVへの流れは全く否定していません。しかし、単にHDにすることで価格が上がり、ソフト制作が大変になるぐらいならば、もっと別に先にやることがあるだろう、という意見のようです。現状はHD化への過渡期ですからね。ライト層へ売りたいとおもっている任天堂としては、最重要課題ではなかったということでしょう。


そして最後、E3で他社について見に行ったかという質問について。

宮本:
見に行けてないのでねえ(苦笑)。どうか分かんないんですよ。まあソニーのあの……ね? コレが(傾ける)どんな風に動いてるのかはちょっと見てみたいですけど(全員笑う)。

ははは。まあ、そうでしょうねぇ。自分たちが3年も年月をかけて開発してきたコントローラ。それを、急にまねされたような形ですから、それは気になるでしょう。気持ちとしては、試行錯誤を繰り返していいものを作った自信はあるでしょうけど、もしPS3のコントローラが自分らと同等のエクスペリエンスを生んでしまうようだとがっかりするでしょうから。でも、発言を見る限りは余裕を感じますね。
ちなみに、このコメントは先に挙げた動画には入っていません。いきなり次の質問に飛んでいます。ということは、この発言は実はオフレコの部分ででた会話なのかもしれません。記事にする際、おもしろかったから入れたということでしょうかね。

以上、非常に読み応え・見応えのあるインタビューでした。