目に見えるもの、頭に浮かぶもの|忍之閻魔帳

E3を前にして、忍さんがWiiに対して語ってらっしゃいます。相変わらず、文章が上手で面白いですね。
画像についての考察は、たしかに「出せない」のではなく、「出さない」というのは自分もそのとおりだと思います。安易に他の次世代機よりも劣る性能の画面を公開してしまって、その劣化した印象が一人歩きするのは怖いと思っているでしょうし。(もっとも、先日のRed Steelの画像のように、「他の次世代機よりは劣るけど、想像以上に綺麗」だと、逆にポジティブな評価になったりするのですけど。)
ただ、自分がもう一つ感じている「出さない」理由は、ゲーム画面からWiiの秘密が一見してわかる可能性があるんじゃないか、ということです。つまり、Wii独自の機能を使った操作がゲームで使われていると、ゲーム画面からでもそれがわかってしまうのでは、ということです。実際、Red Steelでも、銃を持つ手のひねりが映っている画面で、(あわせてコントローラを持つ人の写真がはってあったにしろ)Wiiリモコンの機能を直感的に理解することができました。こうしたことから、「ゲーム画面=ゲームリモコンの魅力」という形でこそ、画面公開する意義があると任天堂が判断している、そう自分は想像するわけです。


忍さんの後半の以下のたとえはなかなか言いえて妙ですね。

徒歩から自転車へ、自転車から自家用車へ。
プレイステーション3Xbox360は、
既に自家用車を持ち、ほどほど満足のいく生活をしている者に、
「ベンツはどうですか」「BMWはどうですか」と
声をかけているに過ぎない。

これは、久多良木氏がたとえた、「任天堂のはファミリー車、PS3BMWフェラーリのエンジンを載せるようなもの」と言った発言とうまくマッチしてますよね。実際、ソニーなどのメーカー側としてはハイスペックにしていった方が差別化しやすいのでしょうけど、あるレベルまで達してしまうと一般消費者がついてきませんからね。普及期に入ってしまったHDD・DVDレコーダも、売れ筋は低画質、低容量の2万円程度のものだったりすることからも、最高の品質のものをはるかに高価格で買うのはニッチである、というのは確かです。
もちろん、そうしたニッチなコアユーザで評判を集め、徐々に一般層にまで評判が伝播していく例もあります。ただ、PS3の場合はそれも微妙なところ。4万では一般の人は当分PS2でいいや、と思うでしょうし、かといってBDプレーヤとしても、わざわざ4万円出してプレーヤを買う人がどの程度いるか。とくに、PS3のデザインは明らかにゲーム機。HD画質の映像を好むような、AVマニアな人たちが、わざわざ「安いから」という理由だけでPS3を選ぶでしょうか?なにか、PSXの時のような、一般から見てもマニアから見ても中途半端なデザイン、性能、値段ということになりそうな気すらしますし。
PS3としては、「BDフル機能、PS2を高解像度ポリゴン化、3万円台」ぐらい思い切った仕様にする必要もあるんじゃないでしょうかね。それで圧勝できなかったときには目も当てられませんが…。


最後のクリエーターの話も、現状では「会社としてはPS3」というところが多いとは思いますね。特に、大手はPS3Xbox360でマルチ展開できるよう内部ライブラリ・体制を整理しているところでしょうし、Wiiのように一つ特殊なプラットホームにのさばられると邪魔だと思うのではないでしょうか?UnRealエンジン関連の人も、露骨にWii批判してますしね。このあたり、他の機種でゲームを出す必要がない任天堂は、全勢力をWiiに向けられるわけで、ますますサードはWiiでは成功しづらくなります。Wiiがこけて欲しいと思う大手サードは結構いるんじゃないかと思いますね。
逆に、少人数、中規模のサードとしては、Wiiはやりがいがあるかもしれません。大手サードは主力級を投じてこず、任天堂は多数出してきますが苦手なジャンルもいろいろあります。しかし、任天堂ソフトのおかげでゲーム機はある程度売れてくれるわけです。任天堂が苦手なジャンルを少人数で作りこんで完成度のたかいものを出せれば、ある程度勝負になる気がします。DSの時のように、任天堂セカンド扱いで任天堂ブランドで出してもらえばより大きな販売も見込めますしね。
E3を機に、こうしたサードの方向性も見えてくるでしょう。そして、次世代機でどこが勝利するかによって、サードの選択に大きなジャッジが消費者から突きつけられることとなるのではないでしょうか?