公式にコメントしだした「Wiiリモコンすっぽ抜け問題」

日米併せてすでに100万台を売り上げ絶好調なWii。その一方で、Wiiリモコンを振りすぎてすっぽぬけ、TVなどを破損してしまう事件もいくつか取り上げられ、自分も何回も取り上げています。

当初、この問題に対して任天堂の広報は以下のようなコメントを新聞の取材に対してしていました。

これらの画像について、任天堂広報室は「そういう画像があるのは事実だが、米国でストラップがとれるなどのトラブルの情報は入ってきていない。品質管理についてはどこよりも徹底しており、通常の遊び方でとれたりすることはない。おもしろおかしく投稿されたものでは」と話す。ただ、遊び方はユーザー側に任されており、子供が想定外の使い方をする可能性もありそうだが、同室は「ゲームを始める際には必ずストラップを付けているかどうかの確認の画面が出るし、ゲーム途中でも出る」といい「Wiiは遊びの革命だと思っている。新しいことをすることは同時に遊び方の啓もうも必要。今回の事態を前向きにとらえて、啓もう活動を推進したい」としている。
みんなのニュース:Wii国内発売前に思わぬ騒動−今日の話題:MSN毎日インタラクティブ

しかし、その後もちょくちょくストラップ切断やすっぽ抜けの報告が出ているため、任天堂でも態度を変え、「やりすぎると危ない」という言う態度に変えてきたようです。すでに公式HPでも、「Wiiリモコンでプレイする上での注意点は? : Q&A - Wii」でその危険性に触れています。

大きく動かすことへ苦言を述べるレジー

そんな中、今日日米双方からこのすっぽ抜け問題についてのコメントが出てきたようです。まずは北米のレジーNOA社長のコメントから。

 任天堂米国法人の責任者レジー・フィザメイ氏は先週Reutersに、多くのプレイヤーは小さな動きで十分なのに大きく動いていると話していた。

 「ボウリングのボールを投げるように、文字通りリモコンを放ってしまう人がいる。それはやってはいけない」とフィザメイ氏は「Wii Sports」のボーリングゲームについて語った。

ジーはやはりアメリカの人間だけに、どうしても和訳するとストレートな言い方に見えてしまいますね。とくに「小さな動きで十分なのに大きく動いている」というのをユーザのせいにするのは変な感じです。そもそも、宮本茂からしてE3のインタビューの時に以下のように発言しているわけですから。

宮本:
遊んでる人がその気になるってことが大事やと思うんですね。Wiiのテニスでも実際はそんなに大きく振らなくても、軽くこう振っても遊べるんですけども、それをこうやって(大きく振る)遊ぶことが楽しいんだと思うんですよ。僕は。

それに遊んでる人を周りからみて楽しそうに見えるというのはものすごく大事な要素で、そういう楽しそうに見えるゲーム、みんなが積極的に楽しんで遊びたがるゲームというのはWiiにとって重要なテーマだと思ってます。飛行機のゲームでも、こう(小さく)もっても遊べるんですけど、こう(なりきって)もって遊んだほうが楽しいんですよ(笑い)。

Engadget&Joystiq 宮本茂インタビュー(第2回!) - Engadget Japanese

小さく動かしても遊べるけど、大きく動かすともっと楽しい、というゲームデザインをしておきながら、「大きく動かすのが悪い」というようなニュアンスの発言をしてしまうのは、なんだかなぁという気がします。ようするに、本当に大きく動かして楽しみたいのなら、そうやってプレイしても安全なぐらい広い場所を用意しろってことなんでしょうけどね。「大きく動かすこと」自体を禁じてしまうと、Wiiのおもしろさの何割かが制限されてしまう気がしますし。
ボーリングも、そもそもホールドしているBボタンを放すようなゲームデザインにしていることが、安全性を低下しているとも言えるわけです。このBボタンを放すタイミングによりリアルなボーリング体験ができるので非常に面白みが増しているのは確かなのですが、その瞬間グリップ力が若干落ちるのも事実。なりきって遊ぶのが面白いだけに、全く危険性を意識せずプレイしてしまうとすっぽ抜けてもおかしくはありません。後からこういった発言をするのでしたら、発売前にもっと大きく警告すべきだったと思いますね。

「A+B同時押しスタート」はホールド性の確認のため

もう一つ、日本でも今日有楽町で任天堂の会見があったらしく、Wiiの好調さなどをコメントしたようです。

「Wiiを毎日利用してもらうためのカギはヘルスケア」と任天堂の岩田氏 - デジタル家電 - Tech-On!

上記記事を全文読むには、無料で登録をする必要があるのですが、そちらの方でいろいろと面白いことが書かれています。特に、このエントリで取り上げているリモコンすっぽ抜け問題についても、岩田聡氏と宮本茂氏がコメントしているのが興味深いです。まずは岩田氏のコメントから。

岩田氏は記者からの質問に答えるかたちで,インターネット上で一部のユーザーが話題にしている,ゲームに熱中している間にWiiリモコンのストラップが切れて飛んでいってしまうという報告について言及した。同氏はその報告の真偽については触れず,「我々の想像を超えてエキサイトしたのかも知れない。詳しくは現在調査中だ。新しい道具をどう利用するかという啓蒙もしていきたい」と語った。

ストラップ切断については、まだ検証中、という判断のようです。ただ、すでにストラップの改良が行われているようなので、ある程度把握はしているとは思いますけどね。調査結果として、具体的な耐荷重などをしっかり報告していただきたいものです。Wiiで生じる事故・物損などは自己責任なのは確かだとは思いますけど、なにぶんWiiは世界ではじめて現れた全く新しいもの。ですので、最初は過剰なぐらいの啓蒙活動をしていただきたいところです。


また、宮本氏のコメントは実に興味深いです。

同じ質問に宮本氏は,「リモコンを正しく利用してもらうために検討を重ねた。AボタンとBボタンを同時に押さないとゲームが始まらないようにしたのも,リモコンをきちんと握っていることを確認するため」と説明した。

任天堂のゲームは、Wii体験会のころから「A+B」でなぜか開始をさせられ、何かリモコンの初期化にでも使っているのかと思っていたのですが、ホールド性を高めるためだったのですね。このあたりは、おそらく宮本氏のアイデアな感じがします。何気ないところで、自然にユーザへ道筋を示す、そのセンスの良さがこうしたところにも現れている感じですね。

実際、このA+Bを押すように指を添えていると、これによりリモコンを手のひらの中に納めるような形になるので、多少弱く握ってもすっぽ抜けることはありません。リモコン前方のへこみも、こうした持ち方でホールド感が増すのに実にいい感じでへこんでいますしね。かなり考えられたデザインだと思いますね。

皆の常識となるまで啓蒙活動を

Wiiすっぽ抜け問題については、自分は繰り返し触れており、すでにうざいと思われている方も多数いるでしょう。特に、アンチの方がネガティブキャンペーンのためにおもしろおかしく煽っている例も結構あるので、それと合わさると任天堂ファンの方にはかなり不快な思いをさせているかもしれません。
ただ、上記で触れたコメントのように、任天堂自体もこの問題を意識し、岩田社長自らリモコン使用法などの啓蒙活動をすすめて行きたいとおっしゃっているわけです。車の運転などでも「自分は事故らない」「危険性アピールしすぎ」とか思っている方が多数いますが、そうした油断が事故を招く一因になるわけです。まず、自身のコントローラの使い方を慎重に行う、一緒にプレイする人、とくに初めてプレイする人には、多少うっとうしがられてもしっかりと使い方のレクチャーを行うよう努められることをおすすめします。使い方を間違えなければ、基本的には大丈夫なのですから。もちろん、任天堂にもストラップの強度問題も含め、啓蒙活動よろしくお願いします。

後藤氏の岩田聡社長インタビュー

自分が日々チェックしているサイトとして、インプレスのPCWatch、AVWatch、GAMEWatchなどがあるのですが、とくにPCWatchではいくつかの記者による連載記事があります。その中でも、ゲーム関連の記事で注目を集めることが多いのが、本田雅一氏と後藤弘茂氏です。

本田雅一の「週刊モバイル通信」バックナンバー
後藤弘茂のWeekly海外ニュース バックナンバー

ただ、この二人は結構「ソニー大好き」なオーラが出ており、各々モバイル、海外ニュースという枠を飛び越えてソニーのお話をしてしまうことがしばしばあります。(そもそもPS3などは注目度が高いので、インプレス側から依頼が出ている可能性もありますけど。)
後藤氏の方がスペック大好きなところはあるとはいえ若干客観的に見ますが、本田氏はソニー好きが表に出てちょっと偏向気味な記事もありますね。本田氏はITmediaでもいろいろ記事を書いていますが、その文章には結構本田氏の思想が混ざってしまっているときがあります。
ITmedia AnchorDesk:本田雅一 執筆記事一覧
とはいえ、両方とも知識と文章量は抜群なので、毎回読み応えはあるのですけどね。

珍しい岩田社長へのインタビュー記事

今回、そのどっちかというとソニー好きな後藤氏が、めずらしく任天堂の岩田社長へのインタビューを行っています。今のところ、第2回まで公開されてますね。

任天堂 岩田聡社長インタビュー(1) マンマシンインターフェイスを直感的にすることがカギ - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース
任天堂 岩田聡社長インタビュー(2) DSとは異なるアプローチでゲーム人口拡大を目指すWii - 後藤弘茂のWeekly海外ニュース

E3後の久夛良木氏へのインタビュー(その1その2その3その4)では「インタビュー解説」なる久夛良木氏の言葉の翻訳が毎回行われていましたが、さすがに岩田社長だとその作業はいらないようですねw。もちろん、最後の記事では総括するんでしょうけど。

第一回の方は、単にいろいろな講演で話している内容の繰り返しみたいな印象ですね。ただ、これだけ繰り返し長期間にわたって話しているのに、未だに言っていることのぶれがないのはすごいところです。

第二回は、結構新鮮味のある記事です。まず、なぜぶれがないのか、ということについて色々岩田社長が語られていますね。2002年に岩田氏が社長になったときは、ゲームキューブは発売済み、かつ非常に逆風という状況だったんですよね。本当、地獄を味わっている方ですよね。HAL研の倒産からの立て直しと言い、逆境でも負けずにマネージングできる方なんでしょうね。

岩田社長の「技術屋」としての側面

第2回も、途中まではどこかで聞いたような話ばかりなのですが、最後に「シンクライアント」という話になってくると、俄然面白くなってきます。後藤氏はもうばりばりのアーキテクチャオタクですので、専門的な言葉がいろいろ出てきます。ちなみにシンクライアントとは以下のような意味です。

 企業の情報システムにおいて、社員が使うコンピュータ(クライアント)に最低限の機能しか持たせず、サーバ側でアプリケーションソフトやファイルなどの資源を管理するシステムの総称。また、そのようなシステムを実現するための、機能を絞った低価格のクライアント用コンピュータ。

シンクライアントとは 【thin client】 - 意味・解説 : IT用語辞典 e-Words

このあたりの話を後藤氏が振るのはよく分かるのですが、それに結構岩田社長が載ってきているのがちょっと新鮮でした。最近、岩田社長は公式HPを通じてや一般マスコミを通じてしか発言してなかったですからね。こうしたマニアックな議題があまりでてこなったわけです。とはいえ、岩田社長はもともとゲームプログラマー。自身プログラムも組むだけでなく、Mac好きだったりコンピュータの世界に相当に詳しい方でもあります。ですので、こうした話題でも実に自然に会話が成り立っているんですよね。久夛良木氏だと、こういうときにすぐに夢の世界に話が飛んでいってしまうのですが、岩田氏の場合は実に理論的で地に足がついた議論をしているように見えます。

岩田社長のネットワークソリューション感

個人的には、HDDを載せなかった理由についてのコメントが面白いですね。

【Q】 Wiiのチャンネルのコンセプトは、まさにシンクライアントですね。そのために、クライアント側に持つストレージも、512MBのフラッシュと小容量に留めたわけですか。

【岩田氏】 ローカルに大容量(ストレージ)を持つと何が怖いかというと、客の手元でデータが壊れることです。これ(HDD搭載)にはものすごく議論があって、同じ容量なら安いという意味でHDDは優れているんですけど、HDDは必ず壊れる。じゃあ、「俺たちのお客さんに(データを)バックアップして下さいと言うのか。HDDをこうやって換装しますって言うのか。それはないよな」って話になったわけです。私も、自分のPCのHDDは自分で換装しますが、そういうお客さんばかりではないですからね。

これは、HDDを積んでいるPS3への批判も含まれていますよね。また、PS3自身は、サーバーもCell、クライアントもCellで連動することで強力なネットワークコンピューティングを築くというものなのですが、これもサーバーがリッチという点では同じです(クライアントもサーバー状態になりますが)。しかし、クライアント側の設計について、岩田社長はPS3のアプローチを遠回しに否定している形ですよね。ゲーム以外の部分でも、これからの時代だとシンクライアントのような形の方が理にかなっている、という思考を持っているようです。

たしかに、現状でもPCなどではCPUパワーを使うのは動画エンコードやゲームなど一部アプリに限ってしまっていますからね。クライアント側がリッチであるというは、消費電力などの問題もあり、あまり主流な流れではありません。Web2.0関連も、どれもクライアントは特に大きな処理能力はいりませんからね。ですので、こういった視点も理にかなっているようには思います。Wiiはさらにシンクライアントで有りながら、WiiConnect24によりサーバーでもあるというところがまた斬新な感じですね。

もっとも、データの壊れにくさを言うのであれば、Wiiそのものが壊れたときにダウンロードしたデータが使えなくなるような自体は避けて欲しいところですね。今だと、同一本体でないとだめですからね。


ともかく、Wii発売後多少余裕が出てきたからこそ、いろいろ岩田社長も発言できているのでしょう。公式HPでない、第3者のフィルタも通った記事として、第3回以降の記事も注目です。